老年症候群患者に対する糖尿病治療
認知機能の評価とカテゴリー分類
・認知機能のスクリーニング検査として「DASC-8」を行う。
・「DASC-8」は「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」を設定するためのカテゴリー分類を行うのに有効
10点以下:カテゴリーⅠ
11~16点:カテゴリーⅡ
17点以上:カテゴリーⅢ
治療の単純化
・薬剤数や回数を減らし、1日1~2回(可能ならば1日1回)に留める
・服薬のタイミングを統一する
・可能な限りインスリン治療は避ける
インスリン注射の単純化
・どうしてもインスリンが不可欠な場合は、1日1回の基礎インスリン補充療法(持効型インスリン)を選択する
デグルデグ(トレシーバ®):作用持続時間42時間超
・DPP-4阻害薬などの経口薬を併用し、インスリン単位数を減らす
・インスリン量は、血糖が一番低くなっても低血糖にならない量を選択する
低血糖、フレイル対策
・認知機能が低下した高齢者で比較的安全に使用できるのはDPP-4阻害薬
・DPP- 4阻害薬の中では、リナグリプチン(トラゼンタ®)とシタグリプチン(ジャヌビア®、グラクティブ®)は心不全などの併存疾患を有する高齢者への有効性が検証されている
・週1回のGLP-1受容体作動薬(デュラグルチド:トルリシティ―®)も有効
高齢者で使える薬剤
① 第1選択→DPP4阻害薬
・高齢者ではDPP4だけの処方のことも多い
・トラゼンタ(リナグリプチン)は腎機能障害で投与量を調整することなく処方可能
① ジャヌビア®(シタグリプチン)
・腎代謝
・ジャヌビア®(50) 1~2T 1×朝食後
② トラゼンタ®(リナグリプチン)
・肝代謝(胆汁排泄型)
・腎機能障害に処方可能
(腎機能障害時でのfirst choice)
・心不全などの併存疾患を有する高齢者への有効性が検証されている
トラゼンタ®(5mg) 1T 1×朝食後
② 第2選択
インスリン
・DPP4阻害薬だけでは血糖が高すぎる時に併用(毎日でなくてもよい)
・持効型溶解インスリン(インスリンデグルデグ)
1日1回、または隔日など
・混合型1日2回など
少量メトホルミン
・基本的には「75歳以上の高齢者へのメトホルミンの新規導入は避ける」
・高齢者であっても禁忌ではないが、慎重、少量投与(250mg/日でも効果示す)
1錠~2錠程度
・インスリン抵抗性が問題になる症例
・eGFR<30では禁忌。中等度腎機能障害では、腎機能に応じた減量を要する。
少量SU剤
・肝機能障害や腎機能障害、特に高齢者では遷延性低血糖のリスクがあることから慎重に検討する(※ 基本的に高齢者ではSUの代わりにグリニドを使用する方がよい)。
・SU薬の中ではグリクラジド(グリミクロン®)は他のSU薬と比較して重症低血糖のリスクが少ないといわれている(高齢者にSU薬を投与する場合にはグリグラジドを選択)
例)
・グリクラジド(グリミクロン®:第2世代)
10㎎ 1日1回朝から開始(夜間低血糖を避けるため)、最大20㎎
1日1~2回(朝、夕食前または食後)
・グリメピリド(アマリール®)
0.5T 1×朝食後
グリニド(速効型インスリン分泌促進薬)
・イメージ的には「速効型インスリン製剤の内服版」
・作用発現は服用後30分以内で、約60分で効果最大となり、作用発現時間は3~4時間。
・ターゲットは「食後高血糖の改善」
・食後高血糖主体の2型糖尿病に良い適応がある。
処方例
・レパグリニド(シュアポスト®)
1日0.75mg~1.5mg(分3、毎食直前)
GLP-1受容体作動薬
・週1回注射
・デュラグルチド:トルリシティ―®
SGLT-2
・口渇訴え可能であれば
・カテゴリーⅢ、中等度以上の認知症や低栄養状態では控える
・フォシーガ5㎎、スーグラ50㎎
持効型インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤
インスリンのステップダウン
1.まずは「持効型溶解インスリン」1日1回打ちへの移行
・血中濃度のピークがないのは「トレシーバ」「ランタスXR」
2.週1回のDPP4阻害薬内服
↓
随時血糖が300㎎/dLを超えるなら、
GLP-1受容体作動薬「トルリシティ―(デュラグルチド)」
週1回注射
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