作業環境測定結果が第三管理区分の事業場に対する措置の強化(令和6年4月以降)
作業環境測定結果が第三管理区分の事業場に対する措置の強化(省令の内容)
作業環境測定の結果、第三管理区分にあたる作業場がある事業場の皆さまへ(厚労省)
法令で作業環境測定が義務付けられている特別則(特化則・有機則・鉛則・粉じん則等)対象
物質を取り扱う作業場の作業環境測定結果が第3管理区分となった事業場に対する措置が令和6年4月より強化されました。
(1)作業環境測定の評価結果が第三管理区分に区分された場合の義務
① 当該場所の作業環境の改善の可否及び可能な場合の改善方策について、外部の作業環境管理専門家の意見を聴くこと。
② 当該場所の作業環境の改善が可能な場合、作業環境管理専門家の意見を勘案して必要な改善措置を講じ、当該改善措置の効果を確認するための濃度測定を行い、その結果を評価すること。
(2)上記①で作業環境管理専門家が改善困難と判断した場合、及び上記②の測定評価の結果なお第三管理区分に区分された場合の義務
① 個人サンプリング法等による化学物質の濃度測定を行い、その結果に応じて労働者に有
効な呼吸用保護具を使用させること。(告示事項)
② ①の呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認すること。(告示事項)
③ 保護具着用管理責任者を選任し、(2)及び(3)の管理、作業主任者等の職務に対す
る指導(いずれも呼吸用保護具に関する事項に限る。)等を担当させること。
④ (1)①の作業環境管理専門家の意見の概要及び(1)②の措置及び評価の結果を労働者に周
知すること。
⑤ 上記措置を講じたときは、遅滞なく当該措置の内容について所轄労働基準監督署に届け出ること。
(3)(2)の場所の評価結果が改善するまでの間の義務
①6月以内ごと(鉛の場合は1年以内ごと)に1回、定期に、個人サンプリング法等による化学物質の濃度測定を行い、その結果に応じて
労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。
②1年以内ごとに1回、定期に、呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認すること。
(4)その他
個人サンプリング法等による測定結果、測定結果の評価結果、呼吸用保護具の装着確認結果を3年間(粉じんに係る測定結果及び評価結果については7年間)保存すること。
個人サンプリング法(C測定、D測定)による作業環境測定
個人サンプリング法による作業環境測定の今後の在り方について(厚労省)
「個人サンプリング法」とは
個人サンプリング法とは:
・「個人サンプリング法」とは、労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う作業環境測定です。
・従前の作業環境測定は、「場所」による測定(A 測定:単位作業場内で原則 5 点以上、B測定:最も高濃度ばく露の作業者の位置)という手法のみでしたが、作業者が発散源とともに移動する場合や、気中への発散の変動が大きいときは適切な評価とならない場合があることから、従来の方法に加えて、労働者の身体に試料採取機器等を装着してサンプリングを行う「個人サンプリング法」が追加されました。
・個人サンプリング法による作業環境測定は、単位作業場所における測定対象物質の平均的な状態を把握する「C測定」と、対象物質の発散源に近接した場所における作業について測定する「D測定」からなります。
・測定の対象者数は、原則として単位作業場所のすべての労働者、またはばく露状態を代表する5人以上の労働者数とします。ただし、作業に従事する労働者が5人未満の場合、同一の作業日にその作業に従事する時間を均等に分割して、測定サンプル数を5個以上とする分割サンプリングが可能となります。
個人サンプリング法の対象物質
(2023年10月改訂)
① 個人サンプリング法対象特定化学物質及び鉛を取り扱う作業にかかる場所における測定
② 有機溶剤等(有機溶剤と特別有機溶剤)
「有機溶剤」の中には、第一種有機溶剤、第二種有機溶剤、及び特別有機溶剤が含まれます。
シンプルにすべての有機溶剤に個人サンプリング法が適用できることを覚えておきましょう。
③ 粉じん
C測定、D測定
C測定
・個人サンプリング法による作業環境測定のうち、単位作業場所における測定対象物質の平均的な状態を評価するための測定を「C測定」という。
※ 単位作業場所:作業場の区域のうち労働者の作業中の行動範囲、有害物の分布等の状況等に基づき定められる作業環境測定のために必要な区域
・C測定においては、対象となる作業に従事する時間中は継続してすべて測定することが基本ですが、同一の作業が2時間を超えて繰り返される場合は2時間の測定に短縮することが可能です。例えば、6時間の対象作業がある場合は、そのうちの2時間の測定とすることが可能です。
D測定
・個人サンプリング法による作業環境測定のうち、測定対象物質の発散源に近接した場所における作業について評価するための測定を「D測定」という。
・D測定は、 C測定の結果を評価するだけでは労働者が有害物質への大きなばく露を受ける可能性を見逃すおそれのある作業が存在する場合に、有害物質の発散源に近接する場所における作業についての測定である。
・D測定では、ばく露がもっとも高くなると思われる時間に、そのうち連続した15分間を測定します。この場合は、連続する作業時間が15分未満の場合、D測定は実施できませんので、C測定のみ
で評価します
※ 「個人サンプリング法」と「個人ばく露測定」の違い
・ともに測定器具に「パッシブサンプラー」や携帯式ポンプ等の「個人サンプラー(アクティブサンプラー)」を用いる点や、労働者の呼吸域(呼吸で化学物質を吸入する可能性のある高さや近さ)における測定を実施する点では同等といえます。
・一方で、異なる点としては、その目的が個人サンプラーを用いて測定を行う個人サンプリング法は「作業環境管理のための作業環境測定」であり、個人ばく露測定では「有害作業における個人のリスク評価」にあるという点があります。
・このため、個人サンプリング法による作業環境測定では評価値として「作業時間平均値」を用いて「管理濃度」と比較しますが、個人ばく露測定では 「8時間平均値」を用いて「ばく露限界値」と比較することになります。
・このように、もっとも大きな違いは、場の評価か、個人の評価かという点にあります。 個人サンプリング法による作業環境測定が、管理濃度を用いるために作業時間の長さが厳密には
考慮されていないのに対して、個人ばく露測定では8時間平均値を算出してばく露限界値と比較するため、作業時間を考慮した評価となり、実作業に近い評価をすることができるということになります。
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