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高年齢労働者の労働災害の特徴とその予防(「高年齢者の労働災害防止のための指針」(令和8年4月1日施行)、エイジフレンドリー補助金など)

高年齢労働者に発生する労働災害の特徴

高年齢労働者に発生する労働災害の特徴:

・若年層と比較して高年齢労働者で、災害の 発生率(千人率)が高くなる傾向がみられる。

・60 歳以上の男女別の労働災害発生率(死傷年千人率)を 30 代と比較すると、男性は約2倍、女性は約4倍となっている。なお、千人率は女性では65~69 歳で最大となり、男性では75~79 歳で最大となっている

・事故の型別では、転倒災害、墜落・転落災害の発生率が若年者より高い傾向があり、特に女性でその傾向が顕著である。

・年齢別の休業見込期間では、それぞれの年齢層の災害発生件数を100 として、その休業見込期間を比較すると、年齢が高くなるほど休業見込期間が長くなる傾向がみられる。

・労働者千人当たりの熱中症の発生率を年齢別にみると、特に男性で年齢が上がるとともに発生率が高くなっている。

 

加齢に伴う身体・精神機能の状況

1 視力
加齢に伴う視力の低下として、近くのものが見えにくくなる近方視困難がある。この状態は40歳代以降からはじまるとされる。また、加齢によって、動体視力の低下、色視力・コンストラクト視力・夜間視力なども低下する。
また、高齢になるにしたがって、白内障、緑内障、黄斑部変性、網膜血管硬化症などの眼疾患により、さらに視力低下が進むことも多い。
2 聴力
40 歳代から高音域から聴力低下が徐々に始まり、50 歳代になると3 kHz 以上の周波数の低下が顕著になる。60 歳代以降さらに高齢になるにしたがって、高音域での聴力低下が顕著になるばかりでなく、低音域での聴力低下が起こる。
さらに、音の大きさの弁別や高さの弁別が困難となり、両耳効果の低下とマスキング効果の増大のため可聴閾値が増大する。

筋力低下の状況

加齢による筋力の低下は、骨格筋量の低下に伴うもので、近年「サルコペニア」という用語で呼ばれる。
一般に、成長に伴って増加する骨格筋の量は、20 歳台をピークとし、その後 45 歳ごろからわずかに減少を始め、60 歳を超えると減少率は大きくなる。突然死した 15 歳から 83 歳までの男性の骨格筋量を直接測定した横断的研究では、25 歳から 50 歳までの減少率はおよそ 10 %であるのに対し、80 歳までの減少率はおよそ 40 %、つまり 50 歳から 80 歳の 30 年間で、25 歳時の骨格筋量のおよそ 30 %が減少する
すなわち、筋力は 60 歳を過ぎると、急速に低下することが知られている。

中高年者の知能の加齢変化

・「結晶性知能」は、個人が長年にわたる経験、教育や学習から獲得していく知能であり、言語能力、理解力、洞察力などを含む。

・一方「流動性知能」は、新しい環境に適応するために、新しい情報を獲得し、それを処理し、操作していく知能であり、処理のスピード、直感力、法則を発見する能力を含んでいる。

・結晶性知能に当たる「語彙」は、60 歳頃まで上昇し、その後もほとんど低下しないこと、一方、流動性知能の指標となる「処理速度」「推論」や「記憶」は加齢に伴って直線的に低下することを示した。

・訓練によって得た知識・技能の維持は、近代において結晶性知能と呼ばれるものに含まれる。結晶性知能は 60 歳を超えると緩やかに低下するが、その低下は 80 歳代の前半まで非常に緩やかである。

高齢者の転倒災害防止

高齢者の転倒災害防止のためのチェック事項:

「高年齢労働者の安全と健康確保のためのチェックリスト」 (エイジアクション100)

・通路の十分な幅を確保し、整理・整頓により通路、階段、出入口には物を放置せず、足元の電気配線やケーブルはまとめている。

・床面の水たまり、氷、油、粉類等は放置せず、その都度取り除いている。

・階段・通路の移動が安全にできるように十分な明るさ(照度)を確保している。

・階段には手すりを設けるほか、通路の段差を解消し、滑りやすい箇所にはすべり止めを設ける等の設備改善を行っている。

・通路の段差を解消できない箇所や滑りやすい箇所が残る場合は、表示等により注意喚起を行っている。

・ヒヤリ・ハット情報を活用して、転倒しやすい箇所の危険マップ等を作成して周知している。

 

「高年齢者の労働災害防止のための指針」

「高年齢者の労働災害防止のための指針」(令和8年2月10日指針公示、令和8年4月1日施行)

 

高年齢者の労働災害防止のための指針 概要

 

 

 

 

解説:

これまで推奨されてきたエイジフレンドリーガイドラインは2026年3月31日をもって廃止され、新たに労働安全衛生法に基づく「高年齢者の労働災害防止のための指針」に移行しました(2026年4月1日適用)。最大の変化は、高年齢者への労災防止措置が事業者の「努力義務」として法律に明記された点です。

新指針が示す取り組みは、旧ガイドラインと同様に「事業者が行うべき事項」と「労働者自身が取り組むべき事項」に分かれています。5つの柱の基本構造は継承されていますが、新指針ではいくつかの点が強化されました。

事業者が講ずべき措置

事業者は、次の1から5までに掲げる事項について、各事業場における高年齢者の就労状況や業務の内容等の実情に応じて、第4に規定する国、関係団体等による支援も活用して、実施可能な高年齢者労働災害防止対策に積極的に取り組むことが必要である。

「高年齢者の労働災害防止のための指針」において事業者が講ずべき措置:

1 安全衛生管理体制の確立

2 職場環境の改善

3 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握

4 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応

5 安全衛生教育の実施

 

1 安全衛生管理体制の確立

●経営トップによる方針表明及び体制整備

・経営トップが高年齢者の労働災害防止対策に取り組む方針を示し、対策の実施体制を明確化すること。

・高年齢者の労働災害防止について、安全衛生委員会等において調査審議するなど労使で話し合うこと。

● 高年齢者の労働災害防止のためのリスクアセスメントの実施

・高年齢者の身体機能等の低下等による労働災害の発生リスクについて、災害事例等からリスクを洗い出して対策の優先順位を検討し、その結果も踏まえ以下の2~5を参考に優先順位の高いものから取組事項を決めること。

・高年齢者の安全と健康の確保のための職場改善ツール(エイジアクション100など)を活用することも有効であること。

 

2 職場環境の改善

●身体機能の低下を補う設備・装置の導入

・高年齢者が安全に働き続けられるよう、施設、設備、装置等の改善を行うこと。

●高年齢者の特性を考慮した作業管理

・筋力、バランス能力、敏捷性、全身持久力、感覚機能、認知機能の低下等を考慮して作業内容等の見直しを行うこと。

 

 

3 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握

●健康状況の把握

・労働安全衛生法で定める雇入時及び定期の健康診断を確実に実施すること。 体力の状況の把握 ・高年齢者の体力の状況を客観的に把握し必要な対策を行うため、主に高年齢者を対象とした体力チェックを継続的に実施することが望ましいこと。事業場の実情に応じて青年、壮年期から実施することが望ましいこと。

●健康や体力の状況に関する情報の取扱い

・「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」を踏まえた対応を行うこと。

 

4 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応

●個々の高年齢者の健康や体力の状況を踏まえた措置

・健康や体力の状況を踏まえて必要に応じ就業上の措置を講じること。

●高年齢者の状況に応じた業務の提供

・高年齢者に適切な就労の場を提供するため、職場環境の改善を進めるとともに、働き方のルールを構築するよう努めること。

・高年齢者の業務内容の決定の際は、健康や体力の状況に応じて、 安全と健康の観点を踏まえた適合する業務とのマッチングに努め、継続した業務の提供に配慮すること。

・高年齢者の治療と就業の両立については「治療と就業の両立支援指針」に基づく取組に努めること。

●心身両面にわたる健康保持増進措置

・集団及び個々の高年齢者を対象として、身体機能等の維持向上のための取組を実施することが望ましいこと。

・「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP指針)」、「労働者の心の健康の保持増進のための指針 (メンタルヘルス指針)」 等に基づく取組に努めること。

 

5 安全衛生教育の実施

●高年齢者に対する教育

・法令に基づく教育等を確実に行うこと。また、作業内容とそのリスクについての理解を得やすくするため十分な時間をかけること。 中でも、高年齢者が再雇用や再就職等により経験のない業種や業務に従事する場合には、特に丁寧な教育訓練を行うこと。

●管理監督者等に対する教育

・管理監督者等に対し、高年齢者特有の特性と高年齢者の安全衛生対策について教育を行うこと。

 

労働者と協力して取り組む事項

高年齢者の労働災害を防止する観点から、事業者は、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずるように努める必要があり、個々の労働者は、自らの身体機能等の低下が労働災害リスクにつながり得ることを理解し、労使の協力の下で取組を進めることが必要である。

<労働者と協力して取り組む事項>

労使の協力のもと、労働者自身が以下の取組を実情に応じて進めることが必要

・高年齢者が自らの身体機能や健康状況を客観的に把握し、健康や体力の維持管理に努めること。高齢になってから始めるのではなく青年、壮年期から取り組むことが重要

・定期健康診断を必ず受けるとともに、短時間勤務などで当該健康診断の対象とならない場合には、地域保健や保険者が行う特定健康診査などを受けるよう努める

・事業者が体力チェックなどを行う場合には、参加し、自身の体力の水準について確認する

・日ごろから、基礎的な体力の維持と生活習慣の改善に取り組む

・職場体操には積極的に参加する。また、通勤時間や休憩時間にも、簡単な運動を小まめに実施したり、自ら効果的と考える運動などを積極的に取り入れたりする

・適正体重を維持する、栄養バランスのよい食事をとるなど、食習慣や食行動の改善に取り組む

・青年、壮年期から健康に関する情報に関心を持ち、ヘルスリテラシーの向上に努めること。

 

職場環境の改善

(1)身体機能の低下を補う設備・装置の導入(主としてハード面の対策)

身体機能が低下した高年齢労働者であっても安全に働き続けることができるよう、事業場の施設、設備、装置等の改善を検討し、必要な対策を講じること。
その際、以下に掲げる対策の例を参考に、高年齢労働者の特性やリスクの程度を勘案し、事業場実情に応じた優先順位をつけて施設、設備、装置等の改善に取り組むこと。
<共通的な事項>
・ 視力や明暗の差への対応力が低下することを前提に、通路を含めた作業場所の照度を確保するとともに、照度が極端に変化する場所や作業の解消を図ること。
・ 階段には手すりを設け、可能な限り通路の段差を解消すること。
・ 床や通路の滑りやすい箇所に防滑素材(床材や階段用シート)を採用すること。また、滑りやすい箇所で作業する労働者に防滑靴を利用させること。併せて、滑りの原因となる水分・油分を放置せずに、こまめに清掃すること。
・ 墜落制止用器具、保護具等の着用を徹底すること。
・ やむをえず、段差や滑りやすい箇所等の危険箇所を解消することができない場合には、安全標識等の掲示により注意喚起を行うこと。
(中略

高年齢者の労働災害防止のための指針<暑熱な環境への対応>

・ 一般に、高年齢者は暑さや水分不足に対する感覚機能が低下しており、暑さに対する身体の調節機能も低下しているので、涼しい休憩場所を整備し、利用を勧奨すること。

・ 保熱しやすい服装は避け、通気性の良い服装を準備すること。

・ 熱中症の初期症状を把握するのに有効なウェアラブルデバイス等のIoT機器を利用すること。

高年齢者の労働災害防止のための指針<重量物取扱いへの対応>

・ 補助機器等の導入により、人力取扱重量を抑制すること。

・ 不自然な作業姿勢を解消するために、作業台の高さや作業対象物の配置を改善すること。

・ 身体機能を補助する機器(アシストスーツ等)を導入すること

高年齢者の労働災害防止のための指針<介護作業等への対応>

・ リフト、スライディングシート等の導入により、抱え上げ作業を抑制すること。

・ 労働者の腰部負担を軽減するための移乗支援機器等を活用すること。

高年齢者の労働災害防止のための指針<情報機器作業への対応>

・ パソコン等を用いた情報機器作業では、照明、画面における文字サイズの調整、必要な眼鏡の使用等によって適切な視環境や作業方法を確保すること。

高年齢者の労働災害防止のための指針<危険を知らせるための視聴覚に関する対応>

・ 警報音等は、年齢によらず聞き取りやすい中低音域の音を採用する、音源の向きを適切に設定する、指向性スピーカーを用いる等の工夫をすること。

・ 作業場内で定常的に発生する騒音(背景騒音)の低減に努めること。

・ 有効視野を考慮した警告・注意機器(パトライト等)を採用すること。

 

(2)高年齢労働者の特性を考慮した作業管理(主としてソフト面の対策)

敏捷性や持久性、筋力といった体力の低下等の高年齢労働者の特性を考慮して、作業内容等の見直しを検討し、実施すること。
その際、以下に掲げる対策の例を参考に、高年齢労働者の特性やリスクの程度を勘案し、事業場の実情に応じた優先順位をつけて対策に取り組むこと。

<情報機器作業への対応>

・ 情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないようにし、作業休止時間を適切に設けること。
・ データ入力作業等相当程度拘束性がある作業においては、個々の労働者の特性に配慮した無理のない業務量とすること。

 

高年齢労働者の労働災害防止対策に関して、事業者が活用できる国や公的機関による支援策

高年齢労働者の安全衛生対策に関する各種事業

エイジフレンドリー補助金:

・「エイジフレンドリー補助金」は、中小企業事業者を対象とした補助金で、高年齢労働者(60歳以上)の労働災害防止を目的とした設備投資や専門家による指導に対して、国が費用の一部を補助する制度です。

・厚生労働省が主導し、一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会が事務局を務めています。

・エイジフレンドリー補助金には「総合対策コース」「職場環境改善コース」「転倒防止・腰痛予防のための運動指導コース」「コラボヘルスコース」の4つのコースが用意されています。

・申請は1つのコースのみ選択可能で、複数コースの併用申請はできません。各コースごとに補助内容や上限額、補助率が異なります。

 

 

 

「エイジフレンドリー補助金」コースの種類と概要:

総合対策コース:

・60歳以上の高年齢労働者が安全に働くことができる環境の整備のため、労働安全衛生に係る専門家による、高年齢労働者の特性を考慮したリスクアセスメントを受けるに当たって必要な経費と、その結果を踏まえ実施する優先順位の高いリスクの低減措置 (機器等の導入や工事の施工等) に要する経費を補助します。

・補助率:4/5、上限額:100万円。

 

職場環境改善コース:

・60歳以上の高年齢労働者が安全に働くことができる環境の整備のため、高年齢労働者の身体機能の低下を補う設備・装置の導入その他の労働災害防止対策に要する経費(機器等の導入や工事の施工等)を補助します。

補助率:1/2、上限額:100万円。

 

 

転倒防止・腰痛予防のための運動指導コース:

・労働者の身体機能低下による転倒災害や腰痛災害 (行動災害)を防止するため、専門家(理学療法士,健康運動指導士,等)による身体機能のチェック及び専門家による運動指導に要する経費を補助します

補助率:3/4、上限額:100万円。

 

 

コラボヘルスコース:

・コラボヘルスとは、医療保険者と事業者が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、労働者の健康づくり等を効果的・効率的に実行することです。

・健康スコアリングレポートや事業所カルテを利用した健康増進施策、事業者と健康保険組合の連携による健康づくり活動への補助。

補助率:3/4、上限額:30万円。

 

高年齢労働者安全衛生対策実証等事業

事業の目的・概要

高齢者の特性に配慮し、高年齢労働者が安心して安全に働くことのできる取組(以下、
「高年齢労働者安全衛生対策」という。)の普及が求められている中、民間企業では様々
な独創的・先進的な高年齢労働者安全衛生対策が提案されていますが、有用と思われる
ものであっても労働災害防止対策としての効果等についての客観的な評価が行われて
いないために、実際に高年齢労働者を雇用する事業者が使用の是非を判断することがで
きず、普及が進んでいない場合があります。
そこで本事業においては、普及が進んでいない高年齢労働者安全衛生対策について、
その効果等を厚生労働省が委託する実証機関が客観的に検証(実証)し、結果を公表す
ることにより、適切な安全衛生対策の選択・導入を後押しし、もって高年齢労働者安全
衛生対策の推進を図ることを目的とした事業です。
本事業では、有識者による実証検討会において、第三者の立場で安全衛生対策を検証
します。

 

高年齢労働者の労働災害防止対策を含む個別の相談支援策

産業保健総合支援センター

 

地域産業保健センター

 

中小規模事業場安全衛生サポート事業

・中小規模事業場安全衛生サポート事業とは、中央労働災害防止協会(JISHA)が安全衛生の専門家を無料で中小規模の事業場(主に従業員100人未満)へ派遣し、現場の安全衛生水準向上を支援する公的事業です。

 

・対象は原則として100人未満の製造業、第三次産業、鉱業などで、労災保険が適用される事業場が対象です。

・支援内容は、「個別支援:専門家が事業場へ訪問し、作業現場を確認して、安全状態や作業方法の改善に向けたアドバイス・報告書の提供」と「集団支援:協力会社・工業団地など複数事業場向けに、研修会や教育セミナーを開催(オンライン形式も可)」があります。

・費用は専門家の交通費なども含め、利用者に費用負担はありません(無料)。

 

有償のもの

・労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントによる安全衛生診断

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