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高年齢労働者の労働災害の特徴とその予防

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高年齢労働者に発生する労働災害の特徴

・災害の 発生率(千人率)では、若年層と高年齢労働者で高くなる傾向がみられる。

・60 歳以上の男女別の労働災害発生率(死傷年千人率)を 30 代と比較すると、男性は約2倍、女性は約4倍となっている。なお、千人率は女性では65~69 歳で最大となり、男性では75~79 歳で最大となっている

・事故の型別では、転倒災害、墜落・転落災害の発生率が若年者より高い傾向があり、特に女性でその傾向が顕著である。

・年齢別の休業見込期間では、それぞれの年齢層の災害発生件数を100 として、その休業見込期間を比較すると、年齢が高くなるほど休業見込期間が長くなる傾向がみられる。

・労働者千人当たりの熱中症の発生率を年齢別にみると、特に男性で年齢が上がるとともに発生率が高くなっている。

 

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加齢に伴う身体・精神機能の状況

1 視力
加齢に伴う視力の低下として、近くのものが見えにくくなる近方視困難がある。この状態は40歳代以降からはじまるとされる。また、加齢によって、動体視力の低下、色視力・コンストラクト視力・夜間視力なども低下する。
また、高齢になるにしたがって、白内障、緑内障、黄斑部変性、網膜血管硬化症などの眼疾患により、さらに視力低下が進むことも多い。
2 聴力
40 歳代から高音域から聴力低下が徐々に始まり、50 歳代になると3 kHz 以上の周波数の低下が顕著になる。60 歳代以降さらに高齢になるにしたがって、高音域での聴力低下が顕著になるばかりでなく、低音域での聴力低下が起こる。
さらに、音の大きさの弁別や高さの弁別が困難となり、両耳効果の低下とマスキング効果の増大のため可聴閾値が増大する。

筋力低下の状況

加齢による筋力の低下は、骨格筋量の低下に伴うもので、近年「サルコペニア」という用語で呼ばれる。
一般に、成長に伴って増加する骨格筋の量は、20 歳台をピークとし、その後 45 歳ごろからわずかに減少を始め、60 歳を超えると減少率は大きくなる。突然死した 15 歳から 83 歳までの男性の骨格筋量を直接測定した横断的研究では、25 歳から 50 歳までの減少率はおよそ 10 %であるのに対し、80 歳までの減少率はおよそ 40 %、つまり 50 歳から 80 歳の 30 年間で、25 歳時の骨格筋量のおよそ 30 %が減少する
すなわち、筋力は 60 歳を過ぎると、急速に低下することが知られている。

中高年者の知能の加齢変化

・「結晶性知能」は、個人が長年にわたる経験、教育や学習から獲得していく知能であり、言語能力、理解力、洞察力などを含む。

・一方「流動性知能」は、新しい環境に適応するために、新しい情報を獲得し、それを処理し、操作していく知能であり、処理のスピード、直感力、法則を発見する能力を含んでいる。

・結晶性知能に当たる「語彙」は、60 歳頃まで上昇し、その後もほとんど低下しないこと、一方、流動性知能の指標となる「処理速度」「推論」や「記憶」は加齢に伴って直線的に低下することを示した。

・訓練によって得た知識・技能の維持は、近代において結晶性知能と呼ばれるものに含まれる。結晶性知能は 60 歳を超えると緩やかに低下するが、その低下は 80 歳代の前半まで非常に緩やかである。

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高齢者の転倒災害防止

「高年齢労働者の安全と健康確保のためのチェックリスト」 (エイジアクション100)

・通路の十分な幅を確保し、整理・整頓により通路、階段、出入口には物を放置せず、足元の電気配線やケーブルはまとめている。

・床面の水たまり、氷、油、粉類等は放置せず、その都度取り除いている。

・階段・通路の移動が安全にできるように十分な明るさ(照度)を確保している。

・階段には手すりを設けるほか、通路の段差を解消し、滑りやすい箇所にはすべり止めを設ける等の設備改善を行っている。

・通路の段差を解消できない箇所や滑りやすい箇所が残る場合は、表示等により注意喚起を行っている。

・ヒヤリ・ハット情報を活用して、転倒しやすい箇所の危険マップ等を作成して周知している。

 

高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン

高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン

職場環境の改善

(1)身体機能の低下を補う設備・装置の導入(主としてハード面の対策)

身体機能が低下した高年齢労働者であっても安全に働き続けることができるよう、事業場の施設、設備、装置等の改善を検討し、必要な対策を講じること。
その際、以下に掲げる対策の例を参考に、高年齢労働者の特性やリスクの程度を勘案し、事業場実情に応じた優先順位をつけて施設、設備、装置等の改善に取り組むこと。
<共通的な事項>
・ 視力や明暗の差への対応力が低下することを前提に、通路を含めた作業場所の照度を確保するとともに、照度が極端に変化する場所や作業の解消を図ること。
・ 階段には手すりを設け、可能な限り通路の段差を解消すること。
・ 床や通路の滑りやすい箇所に防滑素材(床材や階段用シート)を採用すること。また、滑りやすい箇所で作業する労働者に防滑靴を利用させること。併せて、滑りの原因となる水分・油分を放置せずに、こまめに清掃すること。
・ 墜落制止用器具、保護具等の着用を徹底すること。
・ やむをえず、段差や滑りやすい箇所等の危険箇所を解消することができない場合には、安全標識等の掲示により注意喚起を行うこと。
(中略

<暑熱な環境への対応>

・ 涼しい休憩場所を整備すること。

・ 保熱しやすい服装は避け、通気性の良い服装を準備すること。

・ 熱中症の初期症状を把握できるウェアラブルデバイス等のIoT機器を利用すること。

<重量物取扱いへの対応>
・ 補助機器等の導入により、人力取扱重量を抑制すること。

・ 不自然な作業姿勢を解消するために、作業台の高さや作業対象物の配置を改善すること。

・ 身体機能を補助する機器(パワーアシストスーツ等)を導入すること。

<介護作業等への対応>

・ リフト、スライディングシート等の導入により、抱え上げ作業を抑制すること。

・ 不自然な作業姿勢を解消するために、作業台の高さや作業対象物の配置を改善すること。

・ 労働者の腰部負担を軽減するための移乗支援機器等を活用すること。

<情報機器作業への対応>
・ パソコン等を用いた情報機器作業では、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月 12 日付け基発 0712 第3号厚生労働省労働基準局長通知)に基づき、照明、画面における文字サイズの調整、必要な眼鏡の使用等によって適切な視環境や作業方法を確保すること。

<危険を知らせるための視聴覚に関する対応>

・ 警報音等は、年齢によらず聞き取りやすい中低音域の音を採用する、音源向きを適切に設定する、指向性スピーカーを用いる等の工夫をすること。

・ 作業場内で定常的に発生する騒音(背景騒音)の低減に努めること。

・ 有効視野を考慮した警告・注意機器(パトライト等)を採用すること。

 

(2)高年齢労働者の特性を考慮した作業管理(主としてソフト面の対策)

敏捷性や持久性、筋力といった体力の低下等の高年齢労働者の特性を考慮して、作業内容等の見直しを検討し、実施すること。
その際、以下に掲げる対策の例を参考に、高年齢労働者の特性やリスクの程度を勘案し、事業場の実情に応じた優先順位をつけて対策に取り組むこと。

<情報機器作業への対応>

・ 情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないようにし、作業休止時間を適切に設けること。
・ データ入力作業等相当程度拘束性がある作業においては、個々の労働者の特性に配慮した無理のない業務量とすること。

高年齢労働者の労働災害防止対策に関して、事業者が活用できる国や公的機関による支援策

高年齢労働者の安全衛生対策に関する各種事業としては、以下のようなものがある。

・エイジフレンドリー補助金事業

・高年齢労働者安全衛生対策実証等事業

また、高年齢労働者の労働災害防止対策を含む個別の相談などの支援策としては、以下のものがある。

・産業保健総合支援センター及び地域産業保健センター

・中小規模事業場安全衛生サポート事業

有償のもの

・労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントによる安全衛生診断

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