労働衛生の3管理
・「労働衛生の3管理」とは、「作業環境管理」、「作業管理」及び「健康管理」の3管理を指します。
・これは、労働衛生管理の基本となるもので、これに「総括管理」と「労働衛生教育」を加え、「5管理」とすることもあります。
作業環境管理
「作業環境管理」とは、作業環境中の有害因子の状態を把握して、できるかぎり良好な状態で管理していくことです。作業環境中の有害因子の状態を把握するために、作業環境測定が行われます。
(※ 作業者が現場にいなくても実施可能なもの)
例)
・全体換気装置を設置する
・作業環境測定および評価
・作業中の気中有害物質の濃度を測定する
・設備改善
・有害化学物質、有害エネルギーの管理(有害性の低い物質への代替、曝露低減措置)
・取扱う化学物質の、より有害性の低いものへの変更
・一般環境衛生
・生産工程を改善し有害物質の発散を抑制する
・有害な化学物質を取り扱う設備を密開化する。
・ストレスチェックによる職場環境の改善
・作業場全体に対して、作業環境中の有害因子(有害物質、温度、騒音など)を管理する
・局所排気装置のフード付近の気流の風速を測定
・ずい道建設工事の掘削作業において、土石又は岩石を湿潤な状態に保つための設備を設ける
・作業場における放射線の周辺線量当量の測定。
作業管理
「作業管理」とは、環境を汚染させないような作業方法や、有害要因のばく露や作業負荷を軽減するような作業方法を定めて、それが適切に実施されるように管理することです。また改善が行われるまでの間の一時的な措置として、保護具を使用させることなども含まれます。
作業者個人に対する作業負荷の軽減、有害因子の曝露量の管理を行います。
(※ 作業者が作業現場にいなければ実施できないもの)
例)
・作業時間の適正化(過重労働時間の削減、連続作業、有害業務の作業時間)
・労働者の作業時間の管理
・作業休止時間の管理する
労働者の健康の保持や仕事と生活の調和を図るため、勤務間インターバルが確保できるよう努める。
・作業手順は、5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように)を明確にし、作業の進め方を具体的かつ分かりやすくする。
・睡眠時間の確保
6時間未満の睡眠で脳心血管疾患リスクが2倍以上
7時間睡眠が最も死亡率が低い
・作業方法・作業姿勢の改善
・作業規定の作成
・作業服は、適切な姿勢や動作を妨げることのないよう伸縮性のあるものを使用する。
・保護具の使用
・交代勤務、夜勤労働者(睡眠等生活リズムに関する保健指導、シフトに関する助言、基礎疾患を持つ者の管理)
・個人ばく露濃度測定
・放射線業務における「個人線量当量」の測定
・作業者個人に対して、作業負荷の軽減、有害因子の曝露量を管理する
・生物学的モニタリング
・作業空間・作業面の管理
不要な人や物の移動をできるだけ少なくしたうえで作業するのに十分な広さを確保
・作業姿勢の管理と改善
OWAS(Ovako Working Posture Analysing System)
・チェーンソー取扱い業務において、日振動ばく露限界値(5.0m/s2)を超えないように、振動ばく露時間の抑制、低振動工具の選定
健康管理
「健康管理」とは、労働者個人個人の健康の状態を健康診断により直接チェックし、健康の異常を早期に発見したり、その進行や増悪を防止したり、さらには、元の健康状態に回復するための医学的及び労務管理的な措置をすることです。
最近では、労働者の高齢化に伴って健康を保持増進して労働適応能力を向上することまでを含めた健康管理も要求されるようになってきています。
(※ 作業者の身体にかかわることで作業者が現場を離れていても実施できるもの)
例)
・健康診断
・健康診断結果に基づく事後措置(面接、保健指導、就業上の意見)
・過重労働対策
・健康の保持増進(THP)
・ストレスチェック
・健康相談
・健康診断の結果に基づいて、作業者の健康のために有害業務以外の業務へ配転する
労働衛生の5管理
・「3管理」に「労働衛生教育」と「総括管理」の2管理を加えた考え
・労働衛生管理の中で労働衛生3管理はその中核をなすものですが、総合的に労働衛生対策を効果的に進めるためには、産業医や衛生管理者等の労働衛生専門スタッフが有機的に結びついて連携をとっていくとともに、安全管理さらには生産管理と一体となって行われる必要があり、そのために「総括管理」を行います。
・また、作業者が労働衛生管理体制や労働衛生3管理についての正しい理解をすることが大切であり、この理解を深めることを目的として「労働衛生教育」が行われることとなります。
労働衛生教育
労働衛生教育の目的
・労働衛生教育の目的は、労働衛生の3管理が的確に行われて職業性疾病を発生させないことと共に、労働者の心身の健康の保持増進を図ることにある。
・教育の対象者はトップを始めとした管理職を含むすべての者であり、短時間労働者や派遣労働者、また必要に応じ関係事業場の労働者等を含む。
・その内容としては、
①有害な作業を行う者に対する、有害な因子の状況、ばく露を防止するための方法、保護具の適切な使用方法など
②すべての労働者に対する心身の健康の保持増進のために必要な事項
③管理監督者に対する労働衛生管理の重要性とリスクアセスメントの手法、具体的な対策の方法
などがある。
・実施する時期は、有害な因子を取り扱う前、管理監督者になる前などに行うととともに、その後定期的に実施する。
労働衛生教育の例
有害化学物質の人体への影響
有害エネルギー等の人体への影響
暑熱環境における障害防止
健康教育
・雇い入れ時教育
・管理監督者教育
・健康教育(生活習慣病、メンタルヘルス、健康保持教育)
総括管理
総合的に労働衛生対策を効果的に進めるために、産業医や衛生管理者などの産業保健スタッフが有機的な連携・協力態勢で臨むとともに、安全管理、更には生産管理と一体となって取り組む労働衛生管理。
・職場巡視
・労働衛生管理体制の整備
・健康保持増進対策の策定(衛生委員会への参加、安全管理との連携)
・職務計画、適正配置への参画
コメント