疾患
・慢性骨髄性白血病(CML)は,多能性造血幹細胞が悪性化してクローン性の骨髄増殖を起こすことで発生し,未熟な顆粒球の著しい過剰産生をもたらす。
初期段階では無症状であるが,潜行性に進行し,非特異的な「慢性期」(倦怠感,食欲不振,体重減少)があり,最終的には,脾腫,蒼白,紫斑ができやすいおよび出血しやすい状態,発熱,リンパ節腫脹,皮膚の変化などの,より不良な徴候を呈する移行期または急性転化期に移行する。
・慢性骨髄性白血病の発病はすべての年齢層におこりえるが、40歳代~50歳代以降に多くみられる。白血病全体のなかでは、約20パーセントを占める。
CML患者の約85%が初診時に慢性期である。初期には無症状であることが多く,潜行性で非特異的な症状(例,易疲労感,筋力低下,食欲不振,体重減少,盗汗,腹部膨満感[特に左上腹部],痛風性関節炎,白血球停滞の症状[耳鳴,昏迷,蕁麻疹など])が発現し,それらが受診の契機となる場合がある。
初期に蒼白,出血,紫斑ができやすい状態,およびリンパ節腫脹がみられることはまれであるが,中等度またはときに重度の脾腫がよくみられる(症例の60~70%)。進行に伴い,脾腫が増大し,蒼白および出血が生じる。発熱,著明なリンパ節腫脹,および斑丘疹性の皮膚浸潤は,予後不良の臨床像である。
関節痛、骨痛などが現れる場合がある(関節リウマチとの鑑別)
診断
血算
・偶然に,または脾腫の評価中に得られた血算の異常に基づいて疑われる頻度が最も高い。
・顆粒球数が上昇し,通常は無症状の患者で50,000/μL未満,症状のある患者で200,000~1,000,000/μLである。
・好中球増多(白血球分画の左方移動),好塩基球増多,および好酸球増多がよくみられる。
・血小板数は正常またはわずかに高値となる
末梢血塗抹検査
・CMLの末梢血塗抹標本では,しばしば未熟顆粒球に加えて,好酸球数と好塩基球数の増加が認められる。
骨髄検査
・骨髄細胞数および骨髄線維化の程度に加え,核型を評価すべきである。
・骨髄細胞の染色体検査で小型のPh染色体がみられる(22番染色体の長腕の一部が切れ、9 番染色体の長腕の一部と互いに入れ代わる相互転座t(9;22)の結果作られた遺伝子)。
・9 番染色体の長腕にある癌遺伝子ABL1 が、22番染色体のBCR 遺伝子部に転座し、BCR-ABL(Break-point Cluster Region-Abelson)融合遺伝子が作られる。この遺伝子が作るP210蛋白分子は強いチロシン・キナーゼ活性を示し、細胞をアポトーシスより守ることで、慢性骨髄性白血病の病因になる
治療
・イマチニブ,ダサチニブ,ニロチニブなどのチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)によるが,これにより反応が著しく向上しており,生存期間も延長した。骨髄抑制薬(例,ヒドロキシカルバミド),幹細胞移植,およびインターフェロンαもときに使用される。
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