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熱中症、WBGT(暑さ指数)

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参考サイト・ガイドライン

環境省熱中症予防対策サイト

熱中症診療ガイドライン2015(日本救急医学会)

 

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熱中症(heat-related illness)

・暑熱の環境で身体が適応できなくなった状態の総称を「熱中症」という。

・熱中症はその重症度や病型から、「熱痙攣(heat cramp)」、熱失神(heat syncope)、「熱疲労(heat exhaustion)」、「熱射病(heat stroke)」に分類される

 

熱痙攣

・熱さで大量に汗をかき、水だけを補給した場合に起きる。血液の塩分(ナトリウム)濃度が低下する低ナトリウム症である。

・筋の興奮性が亢進するため、足、腕、腹部(腹筋)の筋肉に「こむら返り」(けいれんと痛み)が起きる。

・生理食塩水(0.9%食塩水)など、やや濃いめの食塩水を補給したり、医療機関で点滴することで回復することが多い。

 

熱失神

・熱によって皮膚血管が拡張して下肢への血液貯留が起き、これによって血圧が低下して脳への血流が一時的に減少することにより起きる。

・炎天下で作業をした後等に起きるが、じっとしていたり、立ち上がった直後にも起きることがある。

・めまい、顔面蒼白、一時的な失神などの症状が見られ、脈拍が早くて弱くなる

・下肢を挙上し臥床させることにより多くは回復する。

 

熱疲労

・熱さで大量に汗をかき、一方で水分の補給が追いつかない場合に脱水によって起きる。

・全身倦怠感、脱力感、悪心・嘔吐、頭痛、めまい、集中力・判断力の低下などの症状が起き、ごく軽い意識障害を伴うことがある。

・体温はそれほど上昇しない。

・スポーツドリンクや0.2%食塩水などで、水分と塩分を補給することで回復することが多い。

 

熱射病

・熱によって体温調節が破たんして体温が上昇し、中枢機能に異常をきたした状態。脱水が背景にあることが多い。
意識障害を伴う
・呼びかけや外部の刺激への反応に異状がみられ、言動の不自然さ、全身のけいれん、ふらつきが伴うことがある。重症になると、昏睡に至る。
高体温を伴い、触ると熱いほどになることもある
・意識障害、けいれん、手足の運動障害が起きる。
・重症の場合は、血液凝固障害、肝機能以上、腎機能障害など全身の多臓器障害を合併して死亡することもある。
・意識障害が少しでもあれば、様子を見ることはせず、直ちに救急車を要請し、できるだけ早く身体を冷やす。

 

 

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日本救急医学会熱中症分類(2015年)

Ⅰ:現場で対応可能(熱痙攣、熱失神)

・「筋痙攣」(筋のこむら返り)、「熱失神」(めまいや立ち眩み)に相当

・意識障害なし

・経口補水やNa、Kなどの補給を心掛ける

 

Ⅱ度:医療機関での診察、治療が必要(熱疲労)

・「熱疲労」に相当

・脱水(大量発汗、頻脈)

・疲労感、めまい、頭痛、嘔気をともなう

・輸液が必要

 

Ⅲ度:入院加療(場合によっては集中治療)が必要(熱射病)

・「熱射病」に相当

・中枢神経症状(意識障害)を伴う

・痙攣、意識障害

・高体温(40℃以上)

・肝腎機能障害

・DIC

 

 

「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」

業種

例年、建設業、製造業、運送業が上位3業種

 

多い月

8月、7月の順で多い

 

 

 

治療

1)非重症例への対応

・脱衣

・空調24~26℃

・対外冷却

蒸散冷却:スプレーや濡れタオルで体を湿らせ、扇風機で蒸散

局所冷却:氷枕や氷嚢を頚部や腋窩に当てる

・水分摂取

飲水が可能なら経口補水液

塩辛くて飲めない場合は水、お茶、スポーツドリンクでも可

経口摂取困難、できても症状が改善しない場合は細胞外液500~1000ml補液

(脱水が高度の場合は2000mL程度の場合も)

水分摂取の終了の目安は自覚症状の消失と排尿

・2時間程度の休憩

 

2)重症例への対応

・ABCの安定

必要に応じて気管挿管、人工呼吸器管理、大量補液、カテコラミン投与など

・労作性熱中症にはアイスプール(cold water immersion)

・非労作性熱中症には蒸散冷却、氷嚢、水冷却ブランケットなど

 

ミオグロビン尿を疑う場合(急性腎不全予防)

・筋酵素は受診日より翌日の方が高値

(受診日が低値でも油断できない。翌日の再検査が必要)

・補液

最初の1時間は1~2L/時、その後300mL/時

2~3mL/kg/時の尿量維持目標

ラシックスは過剰輸液時に使用可だが、エビデンスは希薄

 

職場における熱中症の救急処置(現場での応急処置)

 

 

以下の順序に従って対応する。ただし、以下の手順の途中で体調が悪化した場合は、ただちに救急車を要請する。

① 熱中症を疑う症状の有無について確認する。

② 症状が認められるか、疑わしい症状が認められれば、意識障害の有無を確認する。

少しでも意識障害があったり、身体がぐったりして力が入らないなどの熱疲労の症状があれば、直ちに救急車を呼ぶ(近くに医療機関があれば搬送する)。

この場合でも、できるだけふく射熱や日光の当たらない涼しい場所へ移し、身体を冷やすようにする。
③ 意識が清明で、問いかけに正常に反応する場合は、ふく射熱や日光が遮られる涼しい場所へ移し、身体を冷やすようにする。

④ スポーツドリンク又は0.2%食塩水をとらせ、自力で摂取できないようなら医療機関へ搬送する。

⑤ スポーツドリンク又は0.2%食塩水を自力で摂取できた場合は、回復するかどうかを確認し、回復しないようなら医療機関へ搬送する。

⑥ スポーツドリンク又は0.2%食塩水を自力で摂取して回復した場合は、様子を見て、帰宅させるなどの措置をとる。

 

熱中症予防

参考:

熱中症を防ごう(日本スポーツ協会)

職場における熱中症予防対策マニュアル(厚労省)

 

暑熱への順化

・作業を行う者が暑熱順化していない状態から7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くする

 

暑熱環境下の水分摂取

「自覚症状以上に脱水状態が進行していることがあること等に留意の上、自覚症状の有無にかかわらず、水分及び塩分の作業前後の摂取及び作業中の定期的な摂取を指導する」

(「職場における熱中症予防基本対策要綱」)

 

作業を中止すべき健康状態の指標

・口渇、口腔内の乾燥感

・尿量の減少

・体温上昇

心拍数の増加

 

 

 

WBGT値(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)

・熱中症の危険度を判断する数値。「暑さ指数」とも呼ばれる

・人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい

「湿度」「 輻射熱」「気温」の3つを取り入れた熱中症予防のための暑さの指標

(WBGTは人体の熱収支に係わる環境の4要素のうち気温、湿度、輻射熱の3要素により算出されるが、湿球温度、黒球温度は気流の影響も受けるため、気温、湿度、輻射熱だけでなく気流を加えた環境の4要素を積極的に取り入れた指標といえる)

・単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されるが、その値は気温とは異なる。

 

輻射

・輯射とは、遠赤外線などにより離れた物体問で、熱エネルギーが伝わることをいう。

 

暑さ指数の意義

・熱中症とは、体内での熱の産出と熱の放散のバランスが崩れて、体温が著しく上昇した状態である。

・体への熱の出入りに関係する気象条件としては「気温」「湿度」「輻射熱( 日射しを浴びたときに受ける熱や、地面、建物、人体などから出ている熱。温度が高い物からはたくさん出る)」「気流」の4つが挙げられる。

・「気温が高い」「湿度が高い」「輻射熱が強い」「風が弱い」という条件は、いずれも体からの熱放散を妨げる方向に作用するため、熱中症の発生リスクを増加させる

・暑熱環境で体温が上がり過ぎないよう、放射、伝導、対流及び蒸発の四つの熱放散を利用する。

・そのため、熱中症予防のための指標として、気温、湿度、気流、日射・輻射の気象条件を組み合わせた指標として、「暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature:WBGT)」の使用が推奨されている(WBGTは人体の熱収支に係わる環境の4要素のうち気温、湿度、輻射熱の3要素により算出されるが、湿球温度、黒球温度は気流の影響も受けるため、気温、湿度、輻射熱だけでなく気流を加えた環境の4要素を積極的に取り入れた指標といえる)

・暑さ指数(WBGT)が28℃(厳重警戒)を超えると熱中症患者が著しく増加する

・WBGTは「乾球温度計」「湿球温度計」「黒球温度計」による計測値を使って計算される。

 

暑さ指数の使い方

・暑さ指数(WBGT)は労働環境や運動環境の指針として有効であると認められ、ISO等で国際的に規格化されています。

・(公財)日本スポーツ協会では「熱中症予防運動指針」、日本生気象学会では「日常生活に関する指針」を下記のとおり公表しています。労働環境では世界的にはISO7243、国内ではJIS Z 8504 「WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく作業者の熱ストレスの評価-暑熱環境」として規格化されています。

 

各測定値について

湿球温度(NWB:Natural Wet Bulb temperature)

・水で湿らせたガーゼを温度計の球部に巻いて観測。

・温度計の表面にある水分が蒸発した時の冷却熱と平衡した時の温度で、空気が乾いたときほど、気温(乾球温度)との差が大きくなり、皮膚の汗が蒸発する時に感じる涼しさ度合いを表す。

 

乾球温度(NDB:Natural Dry Bulb temperature)

・通常の温度計を用いて、そのまま気温を観測。

 

黒球温度(GT:Globe Temperature)

・輻射熱を測定する温度計。

・黒色に塗装された薄い銅板の球(中は空洞、直径約15cm)の中心に温度計を入れて観測。

・黒球の表面はほとんど反射しない(熱を吸収する)塗料が塗られている。

・黒球温度は、直射日光にさらされた状態での球の中の平衡温度を観測しており、弱風時に日なたにおける体感温度と良い相関がある。

 

暑さ指数(WBGT)の算出式

屋内での算出式

WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度

※ WBGT、黒球温度、湿球温度、乾球温度の単位は、摂氏度(℃)

 

内緒で密告はなしヨ

ない(屋内)密告(0.3、黒球)なし(0.7、湿球)

 

「屋外」での算出式

WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度

※ 屋外は気温の影響も受けるため、屋内におけるWBGT値計算式にはなかった乾球温度を計算式に用いる

 

「外食は肉なしではいかん」

がい(屋外) にく(0.2、黒球)なし(0.7、湿球)いかん(0.1、乾球)

 

 

職場における熱中症予防基本対策要綱

職場における熱中症予防基本対策要綱

 

身体作業強度等に応じた WBGT 基準値

・熱中症のリスクの判定のために、職場や作業者の条件別に 「WBGT 基準値」が設定されている。

・WBGT 基準値に使用されている条件には、「作業区分」(0安静、1低代謝率、2中程度代謝率、3高代謝率、4極高代謝率)、「順化の有無」(暑熱順化者、暑熱非順化者)があり、それらの区分ごとに基準値が定められている。

・ WBGT 基準値は、健康な労働(作業)者を基準に、それ以下の暑熱環境にばく露されてもほとんどの者が熱中症を発症する危険のないレベルに相当するものとして設定されています。

作業区分が強度になるほどリスクは高くなり、暑熱馴化が行われていなければリスクは高くなる。
・なお、WBGT 基準値ではないが、衣類の組合せにより、WBGT値に加えるべき「着衣補正値」が示されている。その際、服装の透湿性及び通気性が悪ければリスクは高くなる。

 

 

WBGT 値がWBGT 基準値を超え又は超えるおそれのある場合に講ずべき対策

職場における熱中症予防基本対策要綱

 

1 作業環境管理

① 発熱体との間の遮へい物、直射日光等を遮る簡易な屋根等を設けてふく射熱を避ける

② 適度な通風の確保又は冷房を行うための設備の設置

③ 屋内の高温多湿作業場所における除湿機の採用

2 作業者への支援措置

① 冷房を備え又は日陰等の涼しい、足を伸ばして横になれる広さの休憩場所の設置

② 飲料水、スポーツ飲料、塩飴などの備付け等

③ 氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やす物品及び設備の設置

3 作業管理

① 作業時間の短縮、休止時間・休憩時間の確保

② 事前の暑熱順化

③ 水分及び塩分のこまめな摂取の奨励

④ 透湿性及び通気性の良い服装や冷却服等の奨励

⑤ 作業中の巡視による作業管理状況や作業者の健康状態の確認を図る。

4 健康管理

① 健康診断結果と医師等の意見を勘案して、必要な場合の就業場所の変更、作業の転換等を講ずる

② 作業者に対して、睡眠不足、体調不良、前日等の飲酒、朝食の摂取等の熱中症の発症に影響を与えるおそれがある事項について、日常の健康管理について指導

③ 作業開始前の労働者の健康状態の確認

④ 休憩場所等に体温計、体重計等を備え付け。

5 労働衛生教育

労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、適切な作業管理、労働者自身による健康管理等が重要であることから、作業を管理する者及び労働者に対して、あらかじめ次の事項について労働衛生教育を行うこと。
(1)熱中症の症状
(2)熱中症の予防方法
(3)緊急時の救急処置
(4)熱中症の事例

 

6 救急時への対応への備え

① 病院、診療所等の所在地及び連絡先の把握、緊急連絡網の作成、それらの関係者への周知

② 熱中症を疑わせる症状が現われた場合に、救急処置として涼しい場所で身体を冷し、水分及び塩分の摂取等を行う体制の整備

③ 意識障害が現れるなど、必要な場合は、救急隊を要請し又は医師の診察を受けさせることの徹底。

 

熱中症予防運動指標

・JSPO(公益財団法人日本スポーツ協会)によるWBGTに対応する熱中症予防のための行動指針

・WBGT 31℃以上は「運動は原則禁止」

 

 

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