特定化学物質
・「特定化学物質」とは、労働者に健康障害を発生させる(可能性が高い)物質として、労働安全衛生法の「特定化学物質等障害予防規則」で定められた化学物質をいう。
・特定化学物質は有害性のレベルに応じて「第一類」「第二類」「第三類」に分類される。
・第1類物質が7種類、第2類が60種類、第3類が8種類の合計75種類が規制の対象となる。
・特化物は健康障害を発生させる可能性が高い物質として厚生労働省が認めたもので、局所排気装置のほか作業環境測定の定期的実施や用後処理装置の設置など規制が厳しくなっています。
・今後は厚生労働省が健康被害との因果関係を認めた物質を特化物として増やしていく傾向にあります。
・2022年春に新たに加わった溶接ヒュームのように、健康被害との因果関係が判明した物質に対していきなり特化物として規制対象になる方向です。
特定化学物質の分類
・特定化学物質は有害性のレベルに応じて「第一類」「第二類」「第三類」に分類される。
・このうち第2類物質は「特定第2類物質」「特別有機溶剤等」「オーラミン等」「管理第2物質」の4つに細分される
第一類物質:
・がん等の慢性・遅発性障害を引き起こす物質で、特に有害性が高いもの。
・第一類物質を製造しようとする者は、あらかじめ、当該物ごとに、かつ、当該物を製造するプラントごとに、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
第二類物質:
・がん等の慢性・遅発性障害を引き起こす物質で、第1類物質に該当しないもの。
・第2類物質は、設備について講ずべき基準等の区分に応じて「特定第二類物質」「特別有機溶剤等」「オーラミン等」「管理第2物質」の4つに細分される
・特定第二類物質又はオーラミン等を製造する設備については、事業者は密閉式の構造のものとしなければならない
特定第二類物質(←密閉式のみ)
・「特定第2類物質」は、第二類物質のうち漏洩した場合に急性中毒になるおそれのあるものという観点からグループ分けされている物質である。
・「特定第二類物質又はオーラミン等を製造する設備」については、原則として、密閉式の構造のものとしなければならない。
特別有機溶剤等
・有機溶剤中毒予防規則の有機溶剤のうち、特に発がん性のおそれがある物質について、特定化学物質として規制強化された有機溶剤。
・特別有機溶剤業務に係る作業(試験研究のために取り扱う作業を除く。)については、有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者のうちから特定化学物質作業主任者を、原則として選任しなければならない。
オーラミン等
・特定第二類物質又はオーラミン等を製造する設備については、原則として、密閉式の構造のものとしなければならない。
管理第二類物質
・第2類物質のうち、特別有機溶剤等とオーラミン等以外の物質
・「管理第2類物質」を製造する作業場の床は不浸透性の材料で造らなければならない。
・管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんが発散する屋内作業場については、原則として、当該物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない
・クロム酸及びその塩の粉じんを含有する気体を排出する製造設備の排気筒に設ける除じん装置については、粉じんの粒径にかかわらず、ろ過除じん方式とすることができる
・シアン化カリウムを含有する排液については、酸化・還元方式若しくは活性汚泥方式による排液処理装置又はこれらと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならない。
第三類物質:
・大量漏洩により急性中毒を引き起こす物質。
・第3類は作業環境測定は不要
・第3類は特殊健康診断をも不要
・塩酸
塩酸を含有する排液については、中和方式による排液処理装置又はこれと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならない
・アンモニア
・一酸化炭素
・硝酸
特別管理物質
・特別管理物質とは、第一類物質と第二類物質のうちの一部で、がん原性物質またはその疑いのある物質を指す
(1類6物質(1類のPCBは除く)+2類の約半分(36物質))
・特別管理物質を製造する作業場には、特別管理物質の名称、特別管理物質の人体に及ぼす作用、特別管理物質の取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならない。
・特別管理物質を製造する屋内作業場については、6カ月以内ごとに1回、定期に、作業環境測定を行い、所定の事項を記録し、これを30年間保存するものとされている。
(7分で 30本のトク ホ)
・特別管理物質を製造する作業場において常時作業に従事する労働者については、1か月を超えない期間ごとに、労働者の氏名、従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間等の作業記録を作成し、これを30年間保存するものとする。
・法令上、特殊健康診断の保存年限は一般には5年(じん肺は7年)であるが、特別管理物質(発がん性のあるもの等)は特化則により30年間の記録の保存が義務付けられている(なお石綿は40年間)。
・特別管理物質を製造し、又は取り扱う事業者が、事業を廃止しようとするときは、特別管理物質等関係記録等報告書に所定の書類を添えて、所轄労働基準監督署長に提出するものとされている。
例)
ベンゼン、スチレン、トリクロルエチレン、ナフタレン、ホルムアルデヒド、ジクロロベンジン、アルファナフチルアミン、クロロホルム、オルトトリジン、ジアニシジン、ベリリウム、ベンゾトリクロリドなど
特定化学設備
・省令で定められた特定化学物質を製造し、又は取り扱う設備。
・2年以内ごとに1回、定期に自主検査を行わなければならない
(自主的にガマンして局所を排除して特定)
・定期自主検査の記録は3年間保存
・特定化学設備のバルブ又はコックについては、特化則第15条の規定により、開閉の方向の表示、色分け又は形状の区分等の措置が義務付けられている。そして、「開閉の方向の表示」と「色分け又は形状の区分」は双方の措置を行わなければならない。
・事業者は、特定化学設備(特定化学設備のバルブ又はコックを除く。)のうち特定第二類物質又は第三類物質が接触する部分については、著しい腐食による当該物質の漏えいを防止するため、当該物質の種類、温度、濃度等に応じ、腐食しにくい材料で造り、内張りを施す等の措置を講じなければならない(特化則第13条)
・「特定化学設備及びその付属設備を設置し、移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画について届書に次の一~三の事項を記載した書面並びに周囲の状況及び四隣との関係を示す図面その他所定の図面等を添えて、当該工事の開始の日の30日前までに労働基準監督署長に提出しなければならない。
一 特定第2類物質又は第3類物質を製造し、又は取り扱う業務の概要
二 主要構造部分の構造の概要
三 附属設備の構造の概要
製造設備の排気筒に設ける除じん装置
特化則第9条
・事業者は、第二類物質の粉じんを含有する気体を排出する製造設備の排気筒又は第一類物質若しくは第二類物質の粉じんを含有する気体を排出する第三条、第四条第三項若しくは第五条第一項の規定により設ける局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置には、次の表の上欄に掲げる粉じんの粒径に応じ、同表の下欄に掲げるいずれかの除じん方式による除じん装置又はこれらと同等以上の性能を有する除じん装置を設けなければならない。
粒径5μm未満:ろ過除じん方式または電気除じん方式
粒径5μm以上20μm未満:スクラバによる除じん方式、ろ過除じん方式、電気除じん方式
粒径20μm以上:マルチサイクロン、スクラバによる除じん方式、ろ過除じん方式、電気除じん方式
(「ろ過除じん」と「電気除じん」は万能)
排液処理
第11条
事業者は、次の表の上欄に掲げる物を含有する排液(第一類物質を製造する設備からの排液を除く。)については、同表の下欄に掲げるいずれかの処理方式による排液処理装置又はこれらと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならない。
シアン化カリウム :「酸化・還元方式」、もしくは「活性汚泥方式」
呼吸用保護具
特化則第38条の7第1項(第二号)
・インジウム化合物を製造する作業、アーク溶接作業に労働者を従事させるときは、厚生労働大臣の定めるところにより、作業環境測定の結果に応じて有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。
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