視覚障害による身体障害者の原因疾患(2015年)
1位:緑内障(28.6%)
2位:網膜色素変性症(14.0%)
3位:糖尿病性網膜症(12.8%)
4位:黄斑変性(8.0%)
眼底写真の見方
① 視神経乳頭
・眼の中の視神経の束が集まって、眼の外へ出ていく出口の部分
・形、色、境界部の鮮明さ、乳頭陥凹の有無を観察する
・視神経乳頭(disc)の中の白くなった部分を視神経乳頭陥凹(cup)という。
・陥凹(cup)と乳頭(disc)のいずれも垂直方向の直径比(C/D比)が0.3以下ならば正常、
0.6以上は緑内障を疑う(視神経乳頭陥凹拡大)
・乳頭浮腫とは、周辺がぼやけている状態(→頭蓋内圧亢進の疑い)
② 網膜の観察
・出血、白斑、小血管瘤、黄斑部を含む変性所見の確認
・黄斑とは網膜の中心にある直径1.5mm~2mm程度の小さな部分の名称で、黄斑の中心は中心窩と呼ばれ、見ているところ(固視点)からの光が当たる部位にあたる。黄斑にはキサントフィルという色素が豊富にあるために黄色を呈している。
③ 赤色病変(出血)
※ 「場所」と「形状」で鑑別
周辺
・点状→糖尿病網膜症、高血圧性網膜症、腎性網膜症
・面状→網膜静脈閉塞
視神経から火炎状
→網膜中心静脈閉塞症
視神経乳頭から離れたところで扇型に出血
→網膜静脈分枝閉塞症
黄斑部に出血
→加齢黄斑変
視神経乳頭の出血
→緑内障
④ 白色病変(白斑、虚血、ドルーゼン)
※ 「場所」と「形状」で鑑別
白斑
・硬性白斑;血管から脂質やタンパク質が漏れて固まったもの
(糖尿病網膜症、高血圧性網膜症、腎性網膜症)
・軟性白斑:網膜表面の虚血、浮腫
(糖尿病網膜症、黒血圧性網膜症、SLE、網膜静脈閉塞症)
虚血
・網膜全面が白色調→網膜中心動脈閉塞症
cherry red spot(黄斑部のみ赤色)
・網膜の一部が白色調→網膜動脈分枝閉塞症
ドルーゼン
・黄斑部や血管周辺の白色円形病変
・網膜の代謝物の沈着
・加齢黄斑変性の前駆症状ともいわれる
③ 乳頭上から出る血管の観察
・網膜中心動脈は静脈に比較して色調は赤色調で細い
・動脈硬化が進行すると動脈血管の色調が銅線様、銀線様に変化する
・網膜中心動脈と静脈の経口比は2:3
・動脈と静脈の交差部の観察
理解しておくべき疾患
糖尿病網膜症(改変Davis分類)
参照:糖尿病網膜症
緑内障
・40歳以上の5.78%が緑内障を有する
・人間ドックでは非接触型眼圧計を使用
・癌あるの正常値は10~20mmHgであるが、わが国では眼圧基準範囲内の緑内障が多い
・視神経乳頭陥凹の拡大(C/D比0.6以上)→D2
視神経乳頭(disc)の中の白くなった部分を視神経乳頭陥凹(cup)という。陥凹(cup)と乳頭(disc)のいずれも垂直方向の直径比(C/D比)が0.3以下ならば正常、0.6以上は緑内障を疑う
・視神経乳頭上出血
・網膜神経線維層欠損(乳頭周囲の網膜の色が濃くなる)
加齢黄斑変性:D2
参照:加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)
網膜色素変性症
・視覚障害による身体障害者の原因疾患の第2位(第1位は緑内障)
・進行性の求心性視野障害を示す疾患
・びまん性に視細胞と網膜色素上皮の機能障害を認める進行性の疾患
・主として遺伝性
・網膜血管の狭細化、骨小体様の黒っぽい斑点のような色素沈着(骨小体様色素沈着)を認めるのが典型的
・暗所で反応する桿体細胞が障害されるため、自覚症状として夜盲を訴える
・それに続いて視野狭窄を訴える
・中心は見えるが周辺が見えないという「輪状暗点」で始まり、徐々に視野障害が拡大する
・眼底腱検査では、中間周辺部網膜における骨小体状の色素沈着過剰が最も顕著な所見である
網膜静脈分枝閉塞症
・D2(硝子体出血を起こす可能性がるため)
・網膜動脈と静脈の交差部が閉塞して発症する
・中高年に多く、背景として高血圧症、動脈硬化、糖尿病などの合併が多い
・視神経乳頭から離れた部分で、扇型に出血(火炎状出血)を認める
・出血による浮腫が黄斑に及ぶと視力障害をきたす
黄斑前膜
・「網膜上膜」「網膜前膜」「黄斑前膜」などともよばれ、黄斑の網膜表面に薄い膜が形成される疾患である。
・加齢とともに眼の中の硝子体が網膜から剥がれていき、網膜の表面に残った硝子体が膜となる。そこに細胞が増殖してうすい膜が形成されることで起こる。
・眼底検査では、黄斑の網膜表面に光沢のあるセロファン膜のような膜が形成され、膜が縮んでくると、網膜自体にも皺が形成される。
・加齢に伴って形成される特発性ものがほとんど。他の病気に伴って生じる続発性のものもある。
眼底健診
意義
・人間ドックは,症状のない方に侵襲の多くない方法で疾病の発症の危険や早期発見に対して貢献するものと考えます。眼底写真で明らかに判読できない場合は,所見は「判読不能」として判定は「空白」もしくは,「D(要精査)」とします。(判定マニュアル13ページ参照)。
・眼科医による眼科診療とは異なり,散瞳下での撮像でない(無散瞳眼底検査)ため限界は明らかに存在します。また、健診項目ごとにその目的を明確にしておく必要があるかと思います。
・しかし,無散瞳眼底検査は,全国一律同一のスクリーニング検査としての位置づけで行われるため,訴訟でもその限界は踏まえます。これは,腹部超音波検査において膵臓の全体像を撮像できな
いのと類似しています。
・そもそも、Wong-Mitchell分類は将来の循環器疾患の危険を評価するもので、特定健診で血圧が高めの方の臓器障害の評価として行われるものです。同様に血糖値が高めの方に対して糖尿病網膜症のスクリーニングの意味で眼底検査が勧められています。
・糖尿病の診断を受け治療を受けている患者が眼底評価のために人間ドックの眼底検査で医療における眼底検査(眼科医による散瞳下の眼底検査)の代わりとするのは間違いです。
・「眼底写真撮影方法は日本人間ドック学会で認定されている眼底健診判定マニュアルに沿ったスクリーニングを目的としており、撮像範囲内での判定としております。また、すべての眼の病気を発見できるものではありません。もし最近見えにくいなど気になる症状があるようでしたら眼科にご受診されることをお勧めします。」の記載は問題ないかと思います。
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