じん肺
・「じん肺」とは、粉じんを吸入することによって肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病のことである(じん肺法第2条)
けい肺
・「けい肺」とは、じん肺のうち遊離けい酸粉じんによるものをいう。
・けい肺ではまず粒状陰影が上中肺野に形成されることが多い。これが進行すると大陰影となる。
・なお、けい肺でも、下肺野に代償性肺気腫を生じることもある。
「じん肺管理区分」の決定までの流れ
じん肺管理区分の決定
・事業者は、じん肺健康診断を行った結果、じん肺の所見のある労働者について、「エックス線写真」と「じん肺健康診断結果証明書」を都道府県労働局に提出することになっています。
・都道府県労働局においては「地方じん肺診査医」により審査が行われ、その労働者についてのじん肺管理区分が決定され、事業者に通知されます。
事業者によるエックス線写真等の提出
じん肺法(第12)
・事業者は、じん肺健康診断を行ったとき、又はエックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他の書面が提出されたときは、遅滞なく、じん肺の所見があると診断された労働者について、当該エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書面を都道府県労働局長に提出しなければならない。
通知
【じん肺法】
第14条 都道府県労働局長は、前条第2項の決定(じん肺管理区分の決定)をしたときは、その旨を当該事業者に通知するとともに、遅滞なく、エックス線写真その他の物件を返還しなければならない。
2 事業者は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対して、その者について決定されたじん肺管理区分及びその者が留意すべき事項を通知しなければならない。
3 事業者は、前項の規定による通知をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を記載した書面を作成し、これを三年間保存しなければならない。
随時申請
【じん肺法】第15条
・常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であった者は、いつでも、じん肺健康診断を受けて、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県労働局長にじん肺管理区分を決定すべきことを申請することができる。
記録の作成及び保存等
第17条 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、その行ったじん肺健康診断及びじん肺健康診断に関する記録を作成しなければならない。
2 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の記録及びじん肺健康診断に係るエックス線写真を7年間保存しなければならない。
じん肺管理区分、エックス線写真の像
じん肺管理区分
・「じん肺健康診断」の結果に基づき、じん肺を区分したもの
・「管理1」「管理2」「管理3のイ」「管理3のロ」「管理4」の5段階に区分。
・「管理1」は、じん肺の所見がないという区分であるが、「管理2」以上は、じん肺の所見があるということを示しており、数字が大きくなるに従いじん肺が進行していることになる。
・胸部のエックス線写真の像にかかわらず、著しい肺機能の障害があると認められる者は「管理4」となる。
じん肺健康診断のエックス線写真
・じん肺健康診断のエックス線写真は「直接撮影による胸部全域のエックス線写真」でなければならない。
じん肺法に基づく措置
管理1
・「管理1」は、じん肺健康診断の結果、じん肺の所見がないと認められるものをいう。
管理二
・「管理2」は、じん肺健康診断の結果、エックス線写真の像が第1型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるものをいう。
・常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が「管理2または管理3」であるものに対しては、1年以内ごとに1回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。
・都道府県労働局長は、事業者から、法令に基づいて、じん肺の所見があると診断された労働者についてのエックス線写真等が提出されたときは、これらを基礎として、地方じん肺診査医の診断又は審査により、当該労働者についてじん肺管理区分の決定をするものとする。
管理三イ
・「管理3イの者」については、「粉じん作業に従事する時間の短縮等適切な措置を講ずる必要がある」(じん肺法第20条の3)。
管理三ロ
・エックス線写真の像が第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
・事業者は、「管理3ロの者」については、「粉じん作業以外の作業に常時従事させることとするように努めなければならない」。
管理四
・じん肺管理区分が「管理四」と決定された者及び(and)「合併症にかかつていると認められる者」は、療養を要するものとする。
・事業者は、合併症により1年を超えて療養のため休業した労働者が、医師により療養のため休業を要しなくなったと診断されたときは、当該労働者に対して、遅滞なく、じん肺健康診断を行わなければならない。
・事業者は、現に常時粉じん作業に従事している「管理3ロ」の労働者が、都道府県労働局長の作業転換の指示により、粉じん作業以外の作業に常時従事することとなったときは、労働基準法に規定する平均賃金の60日分の転換手当を支払わなければならない。
じん肺健康診断
・「じん肺健康診断」には、次の4種類がある
① 就業時健康診断
・新たに常時粉じん作業に従事することになった労働者を対象に行う。
・作業に従事することとなった日の前6月以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が「管理3ロ」となった者について、就業時健康診断の実施義務を除外している。
② 定期健康診断
1)現在、常時粉じん作業に従事する労働者
・現在、常時粉じん作業に従事する労働者を対象に、じん肺管理区分に応じて定期的に行う
・常時粉じん作業に従事する労働者で、「管理1」であるものに対して「3年以内ごとに1回」
・「管理2」又は「管理3」である者に対して「1年以内ごとに1回」
2)過去に常時紛じん作業に従事したことがある労働者
・じん肺管理区分が「管理2」は「3年以内ごとに1回」
・「管理3」は「1年以内ごとに1回」
※ じん肺の所見があると診断された労働者について、当該エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書面を都道府県労働局長に提出しなければならない。
③ 定期外健康診断
・常時粉じん作業に従事し、一般健康診断でじん肺の所見があるか、疑いのある者を対象に、遅滞なく行う
④ 離職時健康診断
・常時1年以上継続して粉じん作業に従事した者の中で、離職をする際にじん肺健康診断を行うように求めた者を対象に行う。
・常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理3であるものが、離職の際にじん肺健康診断を行うよう求めた場合でも、当該労働者を離職の日までに使用していた期間が1年以内であるときは、じん肺健康診断を行わなくてもよい。
じん肺健康診断の記録と保存
・事業者は、じん肺健康診断に関する記録(じん肺健康診断結果証明書)を作成し、じん肺健康診断のエックス線写真とともに7年間保存しなければならない。
じん肺健康診断の結果報告書による有所見率
平成4年は0.3%
じん肺の病理
・じん肺は、肺に到達し沈着した微細な粉じんに起因する。
・じん肺では、肺内で線維増殖が起こり、肺が固くなって呼吸が困難になる。
・慢性の「けい肺症」では、胸部エックス線写真で上肺野に多発性の小粒状影が見られる。
・じん肺は、粉じん作業を離れた後でも、過去の粉じんばく露の程度が強いと更に進行する場合があります。
じん肺法施行規則に定める合併症
じん肺法の合併症は、じん肺管理区分が管理2又は管理3と決定された者に係るじん肺と合併した次に掲げる疾病とする。
・肺結核
・結核性胸膜炎
・続発性気管支炎
・続発性気管支拡張症
・続発性気胸
・原発性肺がん
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