残業時間の情報提供
- 1ヶ月あたりの「時間外・休日労働時間」が80時間を超えた労働者の氏名、及びその労働者の超えた労働時間に関する情報、並びに労働者の業務に関する情報で産業医がその労働者の健康管理に必要と認める情報
- 健康診断実施後の措置等
※ 1月当たりの時間外労働時間が80時間を超えると、1日当たりの平均で睡眠時間が6時間よりも短くなると言われている。
時間外・休日労働時間数
・1ヶ月の総労働時間数
=労働時間数+延長時間数+休日労働時間数
・時間外・休日労働時間数
=1ヶ月の総労働時間数-(計算期間(1ヶ月間)の総暦日数/7)×40
正しく労働時間を把握する方法
● 始業・終業時刻の確認及び記録
労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録する。
● 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
・使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合の留意点
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
・自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
・実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
・自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
・自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。
・自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。
・また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。
・さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる 36 協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。
過重労働により引き起こされる健康障害の発症に関連する職場における業務上の負荷要因
脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について
・労働時間
・不規則な勤務
・拘束時間の長い勤務
・出張の多い勤務
・交代制勤務・深夜勤務
・作業環境(温熱環境・騒音・時差等)
・精神的緊張を伴う業務
医師による面接指導
・事業者は、労働者の週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められるときは、労働者の申出を受けて、医師による面接指導を行わなければなりません(労働安全衛生法第66条の8)
・下記の労働者については、本人の申出の有無にかかわらず実施が義務づけられている(ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合であって、他の医師の行う法定の面接指導と同等のものを受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときを除く)
「研究開発業務に従事する労働者であって、休憩時間を除き一週間当たり 40 時間を超えて労働させた労働時間が1月当たり 100 時間を超えた場合」
・安衛則第52条の6により、事業者は、面接指導の結果に基づき、実施年月日、労働者の氏名、面接指導を行った医師の氏名、労働者の疲労の蓄積の状況、労働者の心身の状況及び面接指導の結果に基づく労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見を記載した記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。
面接指導を行う医師
・事業場に選任されている産業医が実施することが望まれます。
・産業医が選任されていない事業場においては、地域産業保健センターの登録医、健康診断機関(労働衛生機関)の医師、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師が実施しましょう。
長時間労働者面接指導の流れ
厚生労働省パンフレット「医師による長時間労働面接指導実施マニュアル」
事業者の実施事項
① 労働時間に関する情報の産業医への提供
② 面接指導対象者の選定
③ 面接指導実施の労働者への通知
④ 事前問診票の面接指導対象者への配布
⑤ 面接指導対象者に関する情報の産業医への提供
⑥ 医師からの意見に基づく面接指導後の事後措置の実施
⑦ 実施した事後措置の記録・保存
⑧ 事後措置に関する情報の産業医への提供
面接指導の対象となる労働者の実施事項
① 事業者から配布された事前問診票への記入
② 面接指導の受診
③ 面接指導で指導を受けた事項を実践
産業医の実施事項
① 事業者から受けた労働時間に関する情報に基づき、長時間労働者の把握
② 事業者から受けた面接指導対象者に関する情報に基づき、面接指導前の健康リスク評価
③ 面接指導の実施(対象者への個人指導)
④ 面接内容の記録・保存
⑤ 事後措置に関する意見の事業者への提供
⑥ 事業者が行った事後措置の確認
面接
・長時間労働者への面接指導チェックリスト
・長時間労働者への面接指導マニュアルーチェックリストの使い方ー
労働者の状況を把握するために参考となる自記式質問票
労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023 年改正版)
労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023 年改正版)
職業性ストレス簡易調査票
日本産業衛生学会の自覚症しらべ
気分プロフィール検査(Profile of Mood States:POMS)
・気分や感情を主観的側面から評価するために1971年に開発された、65項目から構成される自己記入式の評価尺度である
・POMSは、緊張、抑うつ、怒り、活気、疲労、混乱の6種の因子が測定できる心理テストである。
面接指導の事後措置
事業者の事後措置
衛生委員会に報告するときの留意点
衛生委員会の関与について
・衛生委員会で面接指導の対象者数及び実施者数、事後措置に関する医師の意見等の報告を行うことで、事業場における長時間労働の状況を把握でき、対策に結びつけることができます。
・ただし、個人が特定されないよう注意することが必要であり、どのような情報を共有するか事前に衛生委員会で決めておくとよいでしょう。
・ 面接指導対象者が多い職場や事業場が明らかとなり(継続して面接指導対象者が多い部署など)、組織的な対応や職場環境改善が必要と考えられる場合、必要に応じて衛生委員会で改善策を審議することが大切です。
・衛生委員会で審議された後は、管理監督者へ通知し、職場環境改善や面接指導対象者への事後措置へつなげることが必要です。
衛生委員会等での調査審議事項
過重労働による健康障害防止対策について、衛生委員会等での調査審議事項
① 長時間にわたる労働による労働者の健康障書の防止対策の実施計画の策定等に関すること
② 事業場で定める必要な措置に係る基準の策定に関すること
③ 面接指導等の実施方法及び実施体制に関すること
④ 労働者の申出が適切に行われるための環境整備に関すること
⑤ 申出を行ったことにより当該労働者に対して不利益な取扱いが行われることがないようにするための対策に関すること
⑥ 事業場における長時間労働による健康障害の防止対策の労働者への周知に関すること
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