騒音障害防止のためのガイドライン(令和5年4月改訂)
騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について(令和5年4月 20 日)
騒音性難聴
・騒音性難聴とは、慢性的に激しい騒音(85dB(A)程度以上)に長期間(1日8時間、5年程度以上)ばく露することによって発症する聴覚障害である。
・騒音にばく露して5~15年の間に進行し、それ以降の進行は少ないと言われる。
・蝸牛の有毛細胞の障害によって起き、有毛細胞は再生されないため不可逆的な疾患である。
・騒音性難聴の特徴は両側対称性である
・発症には個人差があり、騒音にばく露しても発症しないケースもある。
・老人性難聴と異なり、初期には4,000Hz付近の聴力損失が現れる。これは、通常の会話には悪影響がほとんどないので気付かれにくい。症状が進むにつれて、2,000~8,000Hz程度まで障害が進む。
・騒音性難聴は初期には高音部に強く表れ、4000Hzが聞こえにくくなる「C5 dip」という難聴を示すのが特徴である。ただし進行とともに2000~8000Hzにも難聴が及ぶようになる。
・「C5dipの有無」が加齢性難聴との鑑別になる
・高い周波数成分で音も小さい無声子音(s、k、t 等の音)が聞こえにくくなる。
・騒音性難聴では、内耳の蝸牛内の聴毛と有毛細胞が損傷を受ける。これらは、再生することはないので非可逆的な変化となる。そのため、予防が何よりも重要となる。
参照(このサイトより引用):http://home.a01.itscom.net/tcoh/part1.htm
Q2-2 騒音性難聴と加齢性難聴の違いを教えてください。
A.
・騒音性難聴は85デシベル(dB)以上の大きな音を長時間、長期間にわたって聴き続けることが原因で起こる難聴です。
・加齢性難聴は年齢変化による難聴です。
・両者とも内耳の障害で難聴が起こり、感音難聴をきたします。
・騒音性難聴は、初期には4,000Hz付近の聴力損失、「C5 dip」という難聴を示すのが特徴であり、加齢性難聴との鑑別になる
・加齢性難聴は高音域の低下が著しく、加齢とともに進行するが、中・低音域は比較的よく保たれる。
騒音性難聴を悪化させる日常生活活動
・ヘッドフォンによる大音量での音楽等の視聴
・カラオケなど
・疲労の蓄積や睡眠不足
・動脈硬化や肥満の原因となる食事や運動不足
騒音職場改善策
① 作業環境測定による、騒音に関する問題点の把握
② 騒音を発生させる原因の除去(本質安全化)や、騒音の発生を小さくすることなど
③ 騒音源の密閉化や遮蔽などによる、騒音の低下(工学的対策)
④ 作業手順の作製や労働衛生教育による、騒音にばく露されない作業の推進
⑤ 保護具の適切な選択、正しく確実な使用、正しい管理の推進
代表的な騒音対策の方法
1 騒音発生源対策
発生源の低騒音化: 低騒音型機械の採用
発生原因の除去: 給油、不釣合調整、部品交換等
遮音: 防音カバー、ラギング等の取り付け
ラギング:配管,ダクトなどの防音,保温のためにロックウール,グラスウールなどの吸音材料,鉄板などの遮音材料,またはこれらを組合せた材料を対象機器表面に巻付けたもの,あるいはこれらの材料で機器表面を覆ったものをラギングと呼んでいる.
消音: 消音器、吸音ダクト等の取り付け
防振: 防振ゴムの取り付け
制振: 制振材の装着
運転方法の改善: 自動化、配置の変更等
2 伝ぱ経路策
対距離減衰: 配置の変更等
遮蔽効果: 遮蔽物、防音塀の設置
吸音: 建屋内部の消音処理
指向性: 音源の向きの変更
3 受音者対策
遮音: 防音監視室の設置
作業方法の改善: 作業スケジュールの調整、遠隔操作化等
耳の保護 :耳栓、耳覆いの使用
騒音障害防止対策
労働衛生コラムNo.12 『騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について』
作業環境管理について、新ガイドラインでは、「別表第1に掲げる作業場」(労働安全衛生規則第588条及び第590条の規定に基づき、6月以内ごとに1回、定期に、等価騒音レベルを測定することが義務付けられている屋内作業場(8作業場))と、「別表第2に掲げる作業場」(労働安全衛生規則上の義務付けはなされていないが、等価騒音レベルが85dB以上になる可能性が大きい作業場(52作業場))に区分する。
・さらに、別表第2に掲げる作業場を、「屋内作業場」「坑内の作業場」「屋外の作業場」に区分し、それぞれ作業環境管理の方法が定められています。
作業環境管理
・作業場に応じた測定方法により等価騒音レベルを測定し、結果を評価し、評価結果に応じて措置を行い、記録することでを行うこと。
「別表第1に掲げる作業場」
測定方法:作業環境測定
測定頻度:6月以内ごとに1回、定期に行うこと。ただし、施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した場合は、その都度、測定すること。
「別表第2に掲げる作業場」
ア 屋内作業場
測定方法:作業環境測定(騒音源が移動する場合等においては、「個人ばく露測定による等価騒音レベルの測定」も可)
※「騒音源が移動する場合等」とは:例えば、手持動力工具を使用する場合等が想定される。手持動力工具を使用する業務を行う作業場については、「個人ばく露測定」を行い、措置及び記
録を行うことが望ましい。
測定頻度:6月以内ごとに1回、定期に実施(ただし第Ⅰ管理区分に区分されることが継続している場所又は等価騒音レベルが継続的に 85dB 未満である場所については、当該定期に行う測定を省略可)。施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した場合は、その都度、測定を行うこと。
イ 坑内の作業場
測定方法:定点測定(騒音源が移動する場合等においては、「個人ばく露測定による等価騒音レベルの測定」も可)
※定点測定とは:騒音作業が行われる時間のうち、騒音レベルが最も大きくなると思われる時間に、作業が行われる位置での測定。10分間以上継続して行う。
測定頻度:6月以内ごとに1回、定期に実施(ただし等価騒音レベルが継続的に 85dB 未満である場所については、当該定期に行う測定を省略可)。施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した場合は、その都度、測定を行うこと。
ウ 屋外作業場
測定方法:定点測定または個人ばく露測定(地面の上に騒音源があって、周辺に建物や壁等がない場所については、推計も可)
測定頻度:6月以内ごとに1回、定期に行うこと(ただし、等価騒音レベルが継続的に 85dB 未満である場所については省略可)。施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した
場合は、その都度、測定を行うこと。
個人ばく露測定
具体的な作業環境管理措置
・管理区分に応じた措置
・発生源の低騒音化: 低騒音型機械の採用
・発生原因の除去: 給油、不釣合調整、部品交換等
・遮音: 防音カバー、ラギング等の取り付け
・消音: 消音器、吸音ダクト等の取り付け
・防振: 防振ゴムの取り付け
・制振: 制振材の装着
・運転方法の改善: 自動化、配置の変更等
・対距離減衰: 配置の変更等
・遮蔽効果: 遮蔽物、防音塀の設置
・吸音: 建屋内部の消音処理
・指向性: 音源の向きの変更
作業管理
⑴ 聴覚保護具の使用
ア 事業者は、聴覚保護具については、日本産業規格(JIS)T8161-1 に規定する
試験方法により測定された遮音値を目安に、必要かつ十分な遮音値のものを選
定すること。
なお、危険作業等において安全確保のために周囲の音を聞く必要がある場合
や会話の必要がある場合は、遮音値が必要以上に大きい聴覚保護具を選定しな
いよう配慮すること。
イ 事業者は、管理者に、労働者に対し聴覚保護具の正しい使用方法を指導させ
た上で、目視等により正しく使用されていることを確認すること。
⑵ 作業時間の管理
事業者は、作業環境を改善するための措置を講じた結果、第Ⅰ管理区分となら
ない場合又は等価騒音レベルが 85 ㏈未満とならない場合は、次の表を参考に、労
働者が騒音作業に従事する時間の短縮を検討すること。
健康管理
⑴ 騒音健康診断
ア 雇入時等健康診断
イ 定期健康診断
⑵ 騒音健康診断結果に基づく事後措置
事業者は、健康診断の結果の評価に基づき、次に掲げる措置を講ずること。
ア 前駆期の症状が認められる者及び軽度の聴力低下が認められる者に対して
は、第Ⅱ管理区分に区分された場所又は等価騒音レベルが85dB 以上90dB 未満
である場所においても、聴覚保護具を使用させるほか、必要な措置
イ 中等度以上の聴力低下が認められる者に対しては、聴覚保護具を使用させる
ほか、騒音作業に従事する時間の短縮、配置転換その他必要な措置
⑶ 騒音健康診断結果の記録及び報告
事業者は、健康診断を実施したときは、その結果を記録し、5年間保存するこ
と。
また、定期健康診断については、実施後遅滞なく、その結果を所轄労働基準監
督署長に報告すること。
聴力保護のための対策
① 騒音発生作業を自動化して周囲を遮蔽する、遮蔽されたケースの中に手を入れて作業を行うようにするなどの工学的対策をとること。
② 6か月を超えない期間ごとに1回、定期に作業環境測定を行い、その結果を評価して管理区分を決定し、第Ⅲ管理区分となったときは適切な対策を取ること。なお、作業環境測定の結果、評価の結果、結果に基づいてとった対策を3年間保存すること。
③ 新たに労働者を騒音作業に就けるとき、及びその後、6か月を超えない期間ごとに1回、定期に健康診断を行うこと。有所見者については、オージオメータによる250,500,1,000,2,000,4,000,8,000Hzにおける聴力の検査を行うこと。
④ 新たに労働者を騒音作業に就けるとき、騒音の人体に及ぼす影響及び聴覚保護具の使用について教育を行うこと。
⑤ 作業者に適切な保護具を使用させる、騒音作業時間を減じる、関係のない労働者を騒音職場に立ち入らせない等の作業の改善を行うこと。
騒音の許容基準(日本産業衛生学会)
・日本産業衛生学会が騒音の許容基準定めている。
・「騒音のバンドレベルがこの基準以下であれば、1日8時間以内のばく露が常習的に10年以上続いた場合でも、騒音ばく露に起因する永久的聴力損失は、1kHz以下の周波数で10dB以下、2kHzで15dB以下、3kHz以上の周波数で20dB以下にとどめることが期待できる」としている
常時騒音作業に従事する労働者に対して行う「労働衛生教育」
⑴ 管理者に対する労働衛生教育
事業者は、管理者を選任しようとするときは、当該者に対し、次の科目について労働衛生教育を行うこと。
① 騒音の人体に及ぼす影響
② 適正な作業環境の確保と維持管理
③ 聴覚保護具の使用及び作業方法の改善
④ 関係法令等
⑵ 騒音作業に従事する労働者に対する労働衛生教育
事業者は、騒音作業に労働者を常時従事させようとするときは、当該労働者に対し、次の科目について労働衛生教育を行うこと。
ただし、第Ⅰ管理区分に区分されることが継続している場所又は等価騒音レベルが継続的に 85 ㏈未満である場所において業務に従事する労働者については、当該教育を省略することができ
る。
① 騒音の人体に及ぼす影響
② 聴覚保護具の使用
騒音健康診断
騒音障害防止のためのガイドライン見直し
騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について(令和5年4月 20 日)
「騒音健康診断の検査項目」の見直し
・新ガイドラインでは、聴力低下のごく初期段階を把握するため、、 定期健康診断(騒音)における4000ヘルツの聴力検査の音圧を、「40dB」から「25dBおよび30dB」に変更しました。
・雇入れ時または配置替え時や、定期健康診断(騒音)の二次検査での聴力検査に、6,000ヘルツの検査を追加しました。
雇入時等健康診断
・250Hz、500Hz、1,000Hz、2,000Hz、4,000Hz、6,000Hz、8,000Hzにおける聴力検査
定期健康診断(騒音)の一次検査(6月以内ごとに1回)
・1,000Hzおよび 4,000Hzにおける「選別聴力検査」
・1,000Hz については30dB、4,000Hzについては25dBおよび30dBの音圧での検査
解釈
・1,000 ヘルツ又は 4,000 ヘルツについて 30dB の音圧レベルにおける計測で異常が認められた者及び医師が必要と認める者については、気導純音聴力レベル測定法による聴力検査(雇入時等健康診断と同様)を含む二次検査を行い、健康管理区分を決定する。
・4,000 ヘルツ25dB の音圧レベルにおける計測は、異常が認められたことのみをもって二次検査を行う必要があるとするものではないが、前回までの健康診断結果、作業状況等を勘案して医師が判断することとなる。
定期健康診断(騒音)の二次検査
※ 定期健康診断の結果、30dBの音圧での検査で異常が認められた者、その他医師が必要と認める者について行う。
・250Hz、500Hz、1,000Hz、2,000Hz、4,000Hz、6,000Hz、8,000Hzにおける聴力検査
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