高気圧作業安全衛生規則
高気圧作業安全衛生規則
作業室の気積
【高気圧作業安全衛生規則】
(作業室の気積)
第2条 事業者は、労働者を作業室において高圧室内業務に従事させるときは、作業室の気積を、現に当該作業室において高圧室内業務に従事している労働者一人について、4立方メートル以上としなければならない。
送気量及び送気圧
第28条 事業者は、空気圧縮機又は手押ポンプにより潜水作業者に送気するときは、潜水作業者ごとに、その水深の圧力下における送気量を、毎分60リツトル以上としなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、事業者は、潜水作業者に圧力調整器を使用させる場合には、潜水作業者ごとに、その水深の圧力下において毎分40リツトル以上の送気を行うことができる空気圧縮機を使用し、かつ、送気圧をその水深の圧力に〇・七メガパスカルを加えた値以上としなければならない。
圧力調整器
第30条 事業者は、潜水作業者に圧力1メガパスカル以上の気体を充てんしたボンベからの給気を受けさせるときは、2段以上の減圧方式による圧力調整器を潜水作業者に使用させなければならない。
事業者が高圧作業主任者に携行させなければならないもの
・事業者は、高圧室内作業主任者に、携帯式の圧力計、懐中電灯、酸素、炭酸ガス及び有害ガスの濃度を測定するための測定器具並びに非常の場合の信号用器具を携行させなければならない。
酸素ばく露量の制限
・高圧則第16条により、高圧室内作業者の酸素ばく露の制限が定められている
・呼吸ガスの酸素分圧は、原則 18kPa 以上 160kPa 以下(0.18atm 以上 1.6atm 以下、1.8msw 以上 16.0msw 以下)と酸素ばく露の制限が定められている。
・水深40mを超える潜水作業では、ヘリウム混合ガスを呼吸ガスとする。
高気圧障害の症状
窒素酔い
・圧力が高い窒素を吸ってその窒素が血液中に溶け込むと、麻酔作用を及ぼすことがある。その麻酔作用を「窒素酔い」という。
・人が陸上(大気圧下)で吸っている空気のおよそ80%は窒素である。窒素は大気圧下では身体に何の作用も及ぼさない。
・しかし水中では大気圧の他に水圧がかかります。水圧は水深が10m増すごとに1気圧ずつ増えていき、水深10mでは大気圧1+水圧1=2気圧、水深20mでは大気圧1+水圧2=3気圧となる。この大気圧と水圧の合計を「環境圧」といいます。
・ダイビング中に呼吸する空気は、環境圧と同じ圧力になっている。そのため、水深が深くなるほど(環境圧が高くなるほど)、空気中の窒素の圧力も高くなる。
・水深25m~30m(環境圧3.5気圧~4気圧)あたりから窒素酔いの症状が出る可能性があるといわれている。
・窒素酔いを避けるため、ヘリウムと酸素を混合したガスや、アルゴンと酸素を混合したガスが用いられることがある。すなわち、ヘリウムやアルゴンは不活性ガスであり、それほど分圧を下げる必要はない。
・窒素酔いそのものはそれほど危険なものではないが、軽い躁状態となり、危機感が薄れるので、事故の原因となり得る。
スクイーズ
・スクイーズとは、体内に圧力が不均衡に加わることによって発生する障害をいう。
・急速に身体に加圧すると、どうしても体内の圧力が均一に上がるのではなく、不均衡に上がる。
・耳の鼓膜の内外に圧力差を生じると耳が痛くなることは、飛行機に乗っていてもよく経験することである。鼻では、鼻腔と副鼻腔の圧力差によって前額部に疼痛を受けることがある。
連絡員
・事業者は、高圧室内業務を行うときは、気こう室の付近に、高圧室内作業者及び空気圧縮機の運転を行う者との連絡その他必要な措置を講ずるための者(次項において「連絡員」という。)を常時配置しなければならない。
「気こう室」とは
・高気圧室内業務に従事する労働者(以下「高圧室内作業者」という) が作業室への出入りに際し加圧又は減圧を受ける室をいう。
・高圧室内業務を行うときは、気こう室の付近に、高圧室内作業者及び空気圧縮機の運転を行う者との連絡その他必要な措置を講ずるための者を常時配置しなければならない。
作業室及び気こう室におけるガス分圧の制限
作業室及び気こう室における次に掲げる気体の分圧がそれぞれに定める分圧の範囲に収まるように、作業室又は気こう室への送気、換気その他の必要な措置を講じなければならない。
1 酸 素:
18キロパスカル以上160キロパスカル以下
ただし、気こう室において高圧室内作業者に減圧を行う場合にあっては、18キロパスカル以上220キロパスカル以下とする。
(0.01気圧≒1kPa)
2 窒 素;
400キロパスカル以下
3 炭酸ガス:
0.5キロパスカル以下
減圧時の措置
・事業者は、気こう室において、高圧室内作業者に減圧を行うときは、次の措置を講じなければならない。
一 気こう室の床面の照度を20ルクス以上とすること。
二 気こう室内の温度が10度以下である場合には、高圧室内作業者に毛布その他の適当な保温用具を使用させること。
三 減圧に要する時間が1時間を超える場合には、高圧室内作業者に椅子その他の休息用具を使用させること。
減圧症
・減圧症とは、高気圧状態から急速に減圧したとき、血液中に溶解していた窒素ガスが気泡となって、気泡による血流障害(気泡塞栓)や、気泡が組織を圧迫することによる障害の総称である。凝固系や補体系の活性化や、種々の液性因子の放出によって、さまざまな障害が起きる。
・減圧症は、比較的軽度なⅠ型減圧症と、より重篤なⅡ型減圧症に分類される。
・Ⅰ型には、皮膚の掻痒、疼痛、発疹などの皮膚型と、四肢の関節・筋肉痛などの筋肉関節型減圧症(ベンズ)などがある。
・Ⅱ型には、前胸部痛や呼吸困難、ショックなどの呼吸循環器型減圧症(チョークス)や、重篤な運動麻痺や感覚障害などの中枢神経型、めまいや嘔気などの内耳前庭型などがある。
・肥満は減圧症のリスクになる。脂肪は窒素が溶け込みやすいので、体内の脂肪分が多いと減圧時に窒素の気泡がより多く形成されやすくなり、減圧症のリスクが高まると考えられている。
高圧室内業務と潜水業務に共通する課題
・水深40mを超える潜水作業では、ヘリウム混合ガスを呼吸ガスとする。
慢性酸素中毒
・慢性の酸素中毒(肺酸素中毒)の主な症状は肺の障害で、胸部違和感、咳・痰、肺活量の減少などが生じる。
酸素ばく露量の算出
・酸素ばく露量の算出の際は、UPTD(肺酸素毒性量単位)をその単位として用いる。
Unit Pulmonary Toxic Dose (UPTD:肺酸素毒性量単位)
定義:
1気圧で100%の酸素を1分間呼吸すること により生ずる肺毒性の度合。
高分圧酸素による肺機能障害として、肺活量の減少を指標にした毒性単位
健康診断
高気圧作業安全衛生規則上、事業者が高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者に対し、当該業務についた後6か月以内ごとに1回、定期に行わなければならない。
・健康診断の項目
一 既往歴及び高気圧業務歴の調査
二 関節、腰若しくは下肢の痛み、耳鳴り等の自覚症状又は他覚症状の有無の検査
三 四肢の運動機能の検査
四 鼓膜及び聴力の検査
五 血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋白の有無の検査
六 肺活量の測定
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