曝露限界
許容濃度
・「許容濃度」とは、日本産業衛生学会が公表する「職業ばく露限界値:Occupational Exposure Limit(OEL)」(作業者の健康へ悪影響を及ぼすことがないと考えられるばく露限界値)である。
・労働者が「1 日8 時間、1 週間40 時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質に暴露される場合」に、「当該有害物質の平均暴露濃度」がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないとされる濃度である。
・「許容濃度」は日本産業衛生学会によって定められた基準で、あくまでも参考値であり、法令によってその利用が義務付けられているわけではない。
(法的拘束力なし)
経皮吸収のリスクを無視できないと考えられている物質
・粘膜や眼を含め経皮吸収の可能性があるものについては、経皮吸収の欄に「皮」と表示している。
ACGIH(米国産業衛生専門家会議)のTLVs(許容限界値)
・米国産業衛生専門家会議(American Conference of Governmental Industrial Hygienist;ACGIH)では、作業環境許容濃度を「TLV (Threshold Limit Value )許容限界値:※ threshold :閾値 」と呼んでいる。
・TLV は、ほとんどすべての作業者が毎日繰り返し暴露しても、有害な健康影響が現れないと考えられる化学物質の気中濃度である。
TLV の3 つのカテゴリー
TLV には次の3 つのカテゴリーがある。
① TLV-TWA (Time-Weighted Average)
・作業時間が、1日8時間、1週40時間のとき、時間荷重平均濃度が超えてはならない値。
② TLV-STEL (Short-Term Exposure Limit)
・1日の作業のどの15分間をとっても、その平均ばく露濃度が超えてはならない値で。
③ TLV-C (Ceiling)
・いかなる瞬間も超えてはならない作業環境中における化学物質の濃度。
経皮吸収のリスクを無視できないと考えられている物質
・粘膜や眼を含め経皮吸収の可能性があるものについては数値のうしろに「Skin(皮膚)」の表示がある。
例)Skin; A5
TLVは設定されていない
・TLVが設定されている物質の数はまださほど多くはなく、「TLVは設定されていない」と記載されていても、この物質が安全であるという意味ではない。
管理濃度
・「管理濃度」とは、厚生労働省が作業環境評価基準に定めている濃度であり、有害物質に関する作業環境の状態を評価するための指標である。
・作業環境測定の結果から、作業環境管理の良否を判断するための管理区分を決定するための指標である。
・厚生労働省が設定し、法的拘束力がある。
・「管理濃度」は作業場の環境の良否の判断や改善を目的とした基準値である。
混合物の管理濃度
作業環境評価基準 第2条④
・有機溶剤を2種類以上含有する混合物に係る単位作業場所にあつては、測定点ごとに、次の式により計算して得た換算値を当該測定点における測定値とみなして、管理区分を行うものとする。この場合において、管理濃度に相当する値は、1.0とするものとする。
混合物の管理濃度(換算値) = C1 / 管理濃度 1 + C2 / 管理濃度 2 + ・・・Cn / 管理濃度
換算値、換算値変換計数
換算値
・ガスクロマトグラフで分析した測定値から、併行測定点における換算値を計算する
換算値=(各有機溶剤の測定値)÷(各有機溶剤の管理濃度)を、全て足したもの
換算値変換係数
換算値変換係数(ppm^-1)=併行測定点における換算値/併行測定点における検知管の指示値(ppm) で求める
【作業環境測定士試験問題】
問題:
混合有機溶剤について検知管法の使用が認められている場合において、トルエン、酢酸n-ブチル及びキシレンを含有する混合溶剤を使用している単位作業場所内の併行測定点におけるトルエン用検知管の測定値は、9.5ppmであった。一方、ガスクロマトグラフで分析した測定値は、トルエン5.0ppm、酢酸n-ブチル15ppm及びキシレン3.5ppmであった。換算値変換係数として、正しい値に最も近いものは次のうちどれか。
なお、トルエン、酢酸n-ブチル及びキシレンの管理濃度は、それぞれ20ppm、150ppm及び50ppmである。
回答:
まず、ガスクロマトグラフで分析した測定値から、併行測定点における換算値を計算します。
換算値=各有機溶剤の測定値÷各有機溶剤の管理濃度を、全て足したものです。つまり、
換算値=(5.0ppm/20ppm) +(15ppm/150ppm) + (3.5ppm/50ppm)
=0.42
あとは、換算値変換係数(ppm^-1)=併行測定点における換算値/併行測定点における検知管の指示値(ppm) で求まります。
換算値変換係数(ppm^-1)=0.42 / 9.5ppm
≒0.044ppm^-1
ばく露限界(limit of exposure)
・量―反応関係等から導かれる、ほとんどすべての労働者が連日繰り返しばく露されても健康に影響を受けないと考えられている濃度又は量の閾(いき)値。
・日本産業衛生学会の提案している許容濃度及び米国産業衛生専門家会議が勧告している時間荷重平均で評価した場合の時間荷重平均濃度が含まれる。
混合有機溶剤のばく露限界値
・混合有機溶剤など,同じ標的臓器や器官に対する類似の毒性影響を持つ化学物質が複数存在する場合には,それらを合わせた影響を考慮する必要がある.
・この場合,次の式により,各化学物質の濃度とばく露限界値との比を加算した値(C)を混合物の濃度とし,ばく露限界値を「1.0」としてこれを基準に結果の評価を行う.
化学物質のリスクとは
・「リスク」とは望ましくないことが起こる可能性のことをいい、「化学物質のリスク」という場合は、ある化学物質がヒトの健康や環境中の生物へ望ましくない影響を与える可能性のことをいう。
・化学物質のリスクの大きさは、化学物質の「有害性」の強さと「暴露ばくろ」の量で決まります。有害性の強い化学物質であっても、暴露量が少なければリスクは小さく、逆に有害性の弱い化学物質であっても暴露量が多いとリスクは大きくなります。
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