1)胸部大動脈解離
・胸部大動脈正常径:30㎜(腹部は20㎜)
・直径が正常径の1.5倍(胸部では45㎜、腹部では30㎜)を超えた場合に「瘤」と称する
診断の目安(強く疑う所見)
・裂けるような痛み
・痛みの移動(血管に沿って)
・胸部X線で上縦隔拡大(解離の60%)
→上記のうち3つがあれば100%大動脈解離、2つ以上なら83%
・しかし5~10%は胸痛なし!
・血圧左右差20㎜Hg以上(しかし高齢者では正常でもよくあり)
・AR雑音
・四肢脈拍触知不良
血液検査
D-dimer:カットオフ<500ng/mL(0.5μg/mL))
・感度96.6%、特異度46.6%(除外診断に有用)
→ 500ng/mL以上なら解離が疑われるため「造影CT」(頚部~鼠径部単純、造影CT2相(早期相、および後期相))を撮影すること!
画像検査所見
胸部X線検査
・臥位では上縦隔は生理的に増大してしまうので判別困難。
・その場合は「気管分岐部レベルでの椎体中央と大動脈陰影左縁の距離が5cm以上」であれば縦隔拡大陽性とする
(気管分岐部レベルでは臥位でも立位でも椎体中央と大動脈陰影左縁の距離は変わらないため)
参照:https://tsunepi.hatenablog.com/entry/2016/12/08/000000
・大動脈の内膜の石灰化が大動脈陰影の外側から5mm以上内側に偏位していれば大動脈解離を疑う。
参照:https://case-report-by-erp.blog.ss-blog.jp/_pages/user/iphone/article?name=20081004
胸部大動脈エコー
・胸骨切痕から左下肢方向に、ゼリーをたっぷり付けてプローブを当てる
・心タンポナーデ
CT所見
・頚部~鼠径部単純・造影CT 2相(早期相、および後期相)
・単純CTで大動脈内膜に存在していた石灰化の内側偏位
・偽腔内新鮮血種の三日月形高吸収(hyperdense crescent sign)
→急性期偽腔閉塞型と診断
胸部大動脈解離リスクスコア (Aortic dissection detection risk score:ADD risk score)
胸痛、背部痛、腹痛、失神、臓器血流障害(脳、腸間膜、心臓、四肢)がある場合
↓
以下の項目をチェック
high risk状態:
①Marfan症候群
②Ao疾患家族歴
③A弁既往歴
④最近のAo手術歴
⑤胸部大動脈瘤の既往
high risk疼痛:
⑥急性発症の痛み
⑦激しい痛み
⑧裂けるような痛み
high risk身体所見:
⑨malperfusion(灌流障害)
⑩脈拍触知不良
⑪収縮期血圧左右差(15㎜Hg以上)
⑫局所の神経学的以上(+痛み:脳梗塞は痛くない)
⑪新規AR雑音(+痛み)
⑫血圧低下、ショック
↓
1項目以下ならDダイマーチェック、
500ng/mL未満なら解離は除外、500以上ならコンサルトし造影CT
2項目以上あれば早期コンサルトし造影CT
2)腹部大動脈瘤・解離
・腹部大動脈正常径:20㎜
・直径が正常径の1.5倍(腹部では30㎜)を超えた場合に「瘤」と称する
・動脈瘤の最大横径が大きくなるほど壁張力が増加し、5㎝(あるいは5.5㎝)を超えると破裂する危険性が増大する。
・瘤径が大きくなると拡張速度が速くなる
検査
腹部大動脈解離エコー
正常20mm程度(30mm以上なら異常(短軸像で外径間(外膜外側の間)で測定)
・40mm以上で手術適応あり
・50mm以上ならすぐ血管外科にコンサルト!
・膜状高エコー「intimal flap」の有無をチェック
【方法】
・コンベックスプローベ使用
・臍上部の腹部が一番低くて圧迫しやすい部分にプローブを横向きに置く(腸管ガスが少ないところから開始)
・腸管ガスが多くて描出が困難な場合は、優しく持続的に圧迫したり、側臥位にしたりしてみる
↓
・動脈を連続して頭尾方向にslideしなが追跡する
(心窩部から、できれば総腸骨動脈に分岐するまで)
↓
・矢状断も確認する
救急治療(降圧、脈拍コントロール、鎮痛・安静)
① 降圧(目標SBP100~120mmHg)
② 脈拍コントロール(HR≦60/分)
例)オノアクト®(ランジオロール)
生食20mLまたは50mLに溶解し、1γで開始(1~10γで調整)
例)プロプラノロール(2㎎/A)
1㎎ずつ、最大0.15㎎/㎏まで
例)インデラル(1A=2㎎):βブロッカー
1㎎静注、適宜追加
③ 鎮痛
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