敗血症の定義の改訂
・敗血症の定義は2016年2月、ヨーロッパと米国の集中治療学会の合同委員会により改訂変更され、診断基準も新しいものになった。
・従来まで「感染による全身性炎症反応症候群(Systemic Inflammatory Response Syndrome;SIRS)」の存在を基本として構築されていた敗血症の診断基準からSIRSが外れた。
・重症度も「敗血症」、「重症敗血症」、「敗血症性ショック」の3段階に分かれていたが、「重症敗血症」という概念もなくなり、「敗血症」と「敗血症性ショック」の2段階になった(重症はつけなくなった)。
qSOFA score
・救急外来などでは即座に測定できるパラメーターを用いた『qSOFA(Sequential(Sepsis-related)Organ Failure Assessment score)』を用いて、3項目のうち2項目以上満たす場合に敗血症と診断することになった。
qSOFAの3項目
・意識状態の変化(Glasgow Coma Scale(GCS)15点未満)
・収縮期血圧100mgHg以下
・呼吸数22回/分以上
※ 感染症を疑う患者で、上記の2項目以上を満たせば「敗血症」と判断
(感度44.7%、特異度83.6%;除外には使えないが、引っかかったら要注意)
・qSOFA が2点以上では、1 点以下と比べ院内死亡率が3倍から14倍になる。
・救急外来を受診した患者や一般病棟に入院している患者で、何らかの感染症が疑われたうえでqSOFAの3項目中2項目を満たすと、敗血症の可能性が高いと判断しようというものである。
・「感染症(疑いを含む)」+「qSOFAで2項目以上陽性」の場合は、SOFAスコアの採点に進み、それが2点以上であれば敗血症と診断される。
・一方、qSOFAの2項目を満たさなくても、敗血症を疑う場合はSOFAスコアによる診断に赴いてもよい。
※qSOFAは満たさないが、それでも敗血症が疑わしい時は、SIRS criteriaが有用(感染症の拾い上げ)
敗血症、敗血症性ショックの定義
敗血症の定義
敗血症性ショックの定義
敗血症の診断基準

敗血症を疑った時の対応
・悪寒戦慄の有無の確認(あれば菌血症の感度45%特異度90.3%)
・1時間以内に下記を行う(敗血症性ショックの1時間バンドル)
1)乳酸値の測定
最初の乳酸値が2mmol/Lより高ければ再検する
2)抗菌薬投与前に血培採取
3)広域抗菌薬投与(TAZ/PIPCまたはMEPM、加えてバンコマイシン)
4)低血圧または乳酸値4mmol/L以上ならば、晶質液投与(生食よりも、乳酸リンゲルや酢酸リンゲルなどのバランス輸液)30mL/㎏(体重50㎏なら1500ml)急速投与
5)輸液後に平均血圧65mmHg以上を維持できなければ、昇圧薬(ノルアドレナリン)の検討
ノルアドレナリン(NAD):ノルアドレナリン
・末梢血管収縮作用が強いため、末梢循環不全を起こす可能性あり。
処方例:
1)
ノルアドレナリン注(1㎎/mⅬ)1A+生食19mⅬ=1㎎/20mⅬ
(またはノルアドレナリン注(1㎎/mⅬ)2A+生食38mⅬ=1㎎/20mⅬ
体重50kg換算:0.05γ=3.0mⅬ/時より開始
血圧を見ながら0.05γ(=3mⅬ時)ずつ増量、最大0.3γ(18ml/時)
2)
ノルアドレナリン5A+生食45m=1㎎/10mL
体重50kg換算:0.05γ=1mⅬ/時より開始、血圧を見ながら0.05γ(=1mⅬ時)ずつ増量、最大0.3γ(6ml/時)
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