『急性腹症』の定義
急性腹症は、発症1週間以内の急性発症で手術などの迅速な対応が必要な腹部(胸部なども含む)疾患である。
激痛を来す「こわい腹痛」
1.血管が詰まる、破れる
(これらは激痛を来すのに腹膜刺激症状が出ないことがある)
・心筋梗塞
・腹部大動脈解離、瘤、切迫破裂
・肝癌破裂
・腸間膜動脈閉塞症(塞栓、血栓、解離、NOMI)
・異所性妊娠破裂(出ないことがある)
2.炎症、閉塞、捻転
・消化管穿孔
・腸閉塞(特に絞扼性)
・重症膵炎
・重症胆管炎
・卵巣腫瘍捻転
・精巣捻転
激しい腹痛なのに圧痛や腹膜刺激症状に乏しい場合
血行障害、血管障害を念頭に!
・心筋梗塞
・腹部大動脈瘤(切迫)破裂、腹部大動脈解離
・腸間膜動脈閉塞症(塞栓、血栓、解離、NOMI)
・腹腔動脈解離(単純CTで解離周辺の脂肪織増強)
・絞扼性腸閉塞
・異所性妊娠(刺激症状出ることが多いが、出ないことがある)
・卵巣捻転、精巣捻転
・肝癌破裂
妊娠可能女性に対する妊娠の確認
妊娠可能な年齢のすべての女性に対して、以下の5項目を確認する
① 月経周期の遅れ
② 妊娠悪阻
③ 避妊法
④ 妊娠する機会
⑤ 不妊治療
さらに、必要に応じて妊娠反応を測定する
鎮痛薬の使用
・原因に関わらず、診断前の早期のアセトアミノフェン1000mgの静脈投与が推奨される
・しかし安易な鎮痛薬の使用は、痛みが不明確となり診断の遅れを招くこともあることに留意する
・痛みの強さにより麻薬性鎮痛薬の静脈投与を追加し、疝痛(管腔臓器の不随意筋が激しく蠕動性に収縮し、周期的、間欠的もすくは発作的に生じる差し込むような痛み。胃腸、胆嚢管、膵管、尿管、子宮、卵管に由来)に対してブチルスコポラミン、胆道疾患、尿管結石にはNSAIDsが用いられる
例)
・アセリオ® 静注 300~1000㎎/回
・ペンタゾシン(ソセゴン®) 筋注 15㎎
・ブスコパン® 筋注 20~40㎎
・ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン®)坐剤50㎎
外科医コール適応基準
1.病歴で間欠的疝痛が、持続痛に変わった場合
2.ブスコパン、アセトアミノフェンで腹痛が軽減しない場合(ソセゴンまで必要な場合)
3.体温、白血球数、CRP、LDH、CKが高値、または経過を追って上昇傾向の場合
4.触診で1か所だけに顕著な圧痛や腹膜刺激症状がある場合
5.開腹手術歴のない腸閉塞
6.大腸腸閉塞
7.身体所見は異常がないのに、患者がひどい痛みを訴える時(血管炎や上腸間膜動脈塞栓症の可能性あり)
急性腹症に対する緊急造影CT検査の原則
適応
・6時間以上続く強い腹痛に考慮
・非特異的腹痛+発熱or 白血球減少
原則は造影!
・腹痛の評価でCTを撮影するときは基本的に造影する
(単純CTで感度が高いのは尿管結石くらい)
腎機能障害時のCT検査方針
・Cr≧1.5㎎/dLの時の造影剤腎症のオッズ比4.10(95%CI:2.26ー7.42)
・超音波までは30点、単純CTは70点、造影CTは90点と考える。単純CTでもある程度緊急手術の判断は可能である。腎機能障害がある時は、単純CTまで撮影した後に外科医に相談し、造影を行うかの判断は外科医に判断を委ねる。
造影CT撮影の手順(造影剤腎症への対処)
① まずはeGFRによるリスク判断
eGFR≧60で、かつ進行する腎障害なし:予防処置なしに撮影可能
30≦eGFR<60で、かつ進行する腎障害なし:造影剤腎症予防を実施したうえで撮影
② ERでの造影剤腎症予防
造影CT撮影前:
・生食 3mL/kgを1時間ペースで点滴
造影CT撮影後:
・生食 1.5mL/㎏を4~6時間ペースで点滴
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