分類
1)原発性:副腎自体の異常
・原因として自己免疫性(7~8割)、結核性、悪性腫瘍の副腎転移、副腎出血・梗塞
・自己免疫性のなかでは多腺性機能不全症候群が多い
・色素沈着を来す
2)2次性:下垂体機能低下
・好発年齢は60歳代
・下垂体腫瘍、下垂体炎(原因としてリンパ球性下垂体炎、自己免疫性下垂体炎、IgG4関連下垂体炎、肉芽腫性、壊死性など)、放射線療法後、髄膜炎後、頭部外傷後、シーハン症候群など
3)3次性:視床下部機能低下
疑う所見、症状
副腎不全の症状は非特異的症状が多い「意欲の低下」「食欲低下」など、不定愁訴では必ず疑うべきである(一見うつ病や認知症に見えることがある)
・倦怠感、意識障害
・うつ、気力低下(20~40%)
・易疲労感
・食欲低下、体重減少
・発熱(不明熱の原因)
・低血圧
・徐脈
・低血糖(2次性(原発性では正常)
・低Na血症(90%)
・高カリウム(1次性で65%、2次性ではなし)
・消化器症状(腹痛(急性の場合)、嘔吐、下痢)(90%)
・副腎疾患の既往、ステロイド内服歴
・色素沈着(1次性)
検査
一般採血検査
・好酸球増多(感度20~30%)
・低血糖
・原発性では低Na、高K血症(感度20~30%)
スクリーニング検査
1)早朝コルチゾール、ACTH
・夜間絶食後、朝8~9時に採血。
・非ストレス刺激下で,早朝コルチゾール値が
4μg/dL未満であれば副腎不全の可能性が高い
4μg/dL以上18μg/dL未満では副腎不全を否定できない(→rapid ACTHへ)
18μg/dL以上であれば副腎不全は否定的(正常)
↓
・副腎抑制状態で、かつ
ACTH>100pg/mLなら原発性
ACTH正常~低下なら2次性もしくは3次性
と判断する。
・コルチゾール4.0~18.0μg/dLでは判断困難として迅速ACTH負荷試験を行う。
2)迅速ACTH負荷試験
・原発性の判断に使用(2次性は感度が低く除外できない)
コートロシン®(テトラコサクチド:合成ACTH製剤)250μg静注で、
前値、負荷後30分、負荷後60分のコルチゾール値の頂値が
①18μg/dL≧で副腎不全は否定的
②18μg/dL未満で副腎不全は否定できない
③15μg/dL未満は原発性副腎不全の可能性が高い。
3)2次性(下垂体性)の検査
・メチラポン試験
・CRH負荷試験
画像検査
・造影下垂体MRI、頭部MRI
治療
Rp)ヒドロコルチゾン(コートリル®)20mg〜30mg
原発性副腎不全では、ヒドロコルチゾンの補充だけでは塩類喪失を改善できない場合がある
→フルドロコルチゾン(フロリネフ®) 0.05〜0.1mg を追加する。
血圧と電解質、尿中Na排泄量、レニン血中濃度でモニタリングを行う
急性副腎不全症(副腎クリーゼ)
・急激な糖質コルチコイド(glucocorticoid:GC)の絶対的または相対的な欠乏により,循環障害を来たす致死的病態であり,内分泌性クリーゼの代表的疾患である.
・多くは慢性副腎不全症患者に感染症や手術などの身体的ストレスが加わりステロイド需要が増した場合や、ステロイドの長期服用者に急なステロイド中止や減量を行った場合に多い。
・誘因としては感染症(特に急性胃腸炎)の頻度が高い
・好酸球増多、低血糖、低ナトリウム血症を認める
治療
・疑った場合は血中ACTHとコルチゾールの測定用検体を採取し、結果を待たず速やかにヒドロコルチゾンの投与を行うべきである
RP)
ヒドロコルチゾン(ハイドロコートン®、サクシゾン®、ソル・コーテフ®)
100㎎+生食50mL静注
100㎎+生食50mL静注
その後、
100~200㎎+5%ブドウ糖液 24時間持続点滴静注
または
25~50㎎+5%ブドウ糖液100~200mL1日4回6時間毎静注
または
25~50㎎+5%ブドウ糖液100~200mL1日4回6時間毎静注
(追加投与分の1日の上限は200㎎/日とする)
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