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Brugada症候群(ブルガダ症候群)

・器質的心疾患を認めないにも関わらず、主として若年~中年男性が心室細動を引き起こして突然死する疾患
40歳前後(典型例は22~64歳)を中心とした男性に多い(男性は女性の9倍)
・詳しい機序は不明だが、右室流出路( right ventricular outflow tract:RVOT)の心外膜側の活動電位異常(伝導遅延:脱分極の異常)と推測されている。
・イオンチャンネル遺伝子(NaチャンネルのαサブユニットをコードするSCNA遺伝子変異など)に基づく疾患と考えられてきたが、近年では複数のリスク遺伝子多型や炎症、線維化が強く関与しているという報告がなされている。
・心室のNaチャンネルの機能異常により、右室流出路の心内膜と心外膜の活動電位に差が生じ、特に副交感神経優位(夜間睡眠中など)になった際に電位差が大きくなり不整脈が生じるとされる。
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症状

・1/3の症例で心室細動、多形性心室頻拍が初発症状となる
・失神
・心房細動
・夜間の死戦期呼吸
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ブルガダ型 ST-T 異常 (標準 12 誘導心電図検診判定マニュアル(2023 年度版))

・健診時にはブルガダ症候群を診断することは困難であるため、心電図用語は所見名である「ブルガダ型 ST-T 異常」とする。

 

(不完全)右脚ブロックとの鑑別点

・(不完全)右脚ブロック型では基本的にはSTが基線~低下するが、ブルガダ型はSTが上昇(J点が2 mm(0.2 mV)以上)する

・右脚ブロックではⅠ誘導やV5-6誘導に深いS波を認めるが、ブルガダ型では認めない

 

coved型、saddle back型とは?

・ブルガダ型 ST-T 異常は coved 型と saddleback 型に分類され、coved 型は saddleback 型よりも心室細動など致死性不整脈の発生頻度が高い

(覚え方by Dr.林:「ふたこぶラクダ(saddle back型)よりひとこぶラクダ(coved型)に乗った時の方が不安定」)

・検診マニュアルでは、coved型は自覚症状や家族歴の有無にかかわらず「 D 判定」

・saddleback 型は「失神、動悸など不整脈疾患を疑う自覚症状を伴う」または「若年者の突然死や遺伝性不整脈疾患(疑い)の家族歴」があれば「D判定」、なければ「C判定」

・saddleback 型は不整脈の自覚症状、失神の既往、突然死の家族歴などを総合的に判断する。

saddleback 型は無症候でも高位肋間記録によりcoved 型心電図に移行する場合があるので、1肋間上げての再確認が必要である。

 

検診での判定区分

・検診マニュアルでは、coved型は自覚症状や家族歴の有無にかかわらず「 D 判定」

・saddleback 型は「失神、動悸など不整脈疾患を疑う自覚症状を伴う」または「若年者の突然死や遺伝性不整脈疾患(疑い)の家族歴」があれば「D判定」、なければ「C判定」

・また、健診時にはブルガダ症候群を診断することは困難であるため、心電図用語は所見名である「ブルガダ型 ST-T 異常(サドルバック型、コーブド型)」とされる。

 

判定基準

・右側胸部誘導(V1-V3誘導)でJ点(QRS波とST部分の繋ぎ目:junction)が0.2mV(2mm)上昇していることが必要。

・RVOT心外膜側の活動電位の伝導遅延の有無により、その形から「coved (入り江) 型」と、「saddle back (馬鞍) 型」に分類される。

・特にcoved型の病的意義が高く、Burgada症候群の診断にはcoved型心電図が必須となる。

 

① coved 型(自覚症状や家族歴の有無にかかわらず D 判定)

・RVOT心外膜側の活動電位の伝導遅延がある

・J点から斜めに急峻に下降して陰性T波に移行し「入り江」のような形になる

・coved型は「J上昇+ST上昇+陰性T」(陰性T波を伴う:伝導遅延があるため)

・coved 型は saddleback 型よりも心室細動など致死性不整脈の発生頻度が高い。

・特にcoved型の病的意義が高く、Burgada症候群の診断にはcoved型心電図が必須となる。

・そのため、coved 型は自覚症状や家族歴の有無にかかわらず D 判定。

 

② saddleback型(CまたはD判定)

・RVOT心外膜側の活動電位の伝導遅延がない型

・saddleback型は「J波上昇+ST上昇」(しかし陰性T波は伴わない:伝導遅延がないため)

・Saddleback 型は不整脈の自覚症状、失神の既往、突然死の家族歴などを総合的に判断する
・日内変動、日差変動がある
・無症候でも高位肋間記録によりcoved 型心電図に移行する場合があるので、saddleback 型の場合、右側胸部誘導(V1、V2 誘導)を1 肋間上に上げて記録(右室流出路直上)し、 coved 型への変化の有無を確認する

・「失神、動悸など不整脈疾患を疑う自覚症状を伴う」または「若年者の突然死や遺伝性不整脈疾患(疑い)の家族歴」があればD判定、なければC判定

 

 

参照(このサイトより引用):http://shindenzunoheya.blog.jp/archives/13380399.html

 

 

Brugada型心電図のtype分類

・V1~ V3誘導の 「J点が2 mm(0.2 mV)以上を示す」ST上昇を、3つのタイプに分類

遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017 年改訂版)

① type1:coved型ST上昇と陰性T波を示す場合

② type2:saddle back型を呈し,STの終末部(トラフ)が1 mm以上を示す場合

③ type3:coved型あるいはsaddle back型を示し,STの終末部が1 mm未満である場合

 

ブルガダ型心電図type 1の症例で失神や心室細動、心房細動発症の危険が高いと言われている。

・ただし、Brugada型心電図type2、3でもtype1への変動を認め、注意を要する。

 

 

Brugada症候群を疑った時の検査、診断基準

・1~2肋間上げて、第2、3肋間で心電図を取ってみる。

coved型(type1)の心電図が診断の必須項目

 

診断基準

・重要なことは、全てのBrugada型心電図がBrugada症候群という訳ではない。

<診断基準>

必須条件:

coved型(type1)の心電図(薬剤投与後の場合も含む)が、右測胸部誘導(V1-V3)の1つ以上に認められること。

追加条件:

①多形性心室頻拍・心室細動が記録されている

②45歳以下の突然死の家族歴がある

③典型的なcoved型(Type 1)の心電図を認める家族がいる

④多形性心室頻拍・心室細動が心臓電気生理検査により誘発される

⑤失神や夜間の瀕死期呼吸(あえぎ様呼吸)を認める

この追加条件の①~⑤のうち、1つ以上を満たすものとしています。

・但し、saddleback型(type2、type3)の場合は、薬物で典型的なcoved型(type1)になった症例だけを上記の診断基準に当てはめる。

 

治療方針

coved型(type1)の場合

※ 専門医へ紹介すること

① 有症候性(VF、または失神の既往がある場合)

・VFの既往→致死性不整脈10%/年→ICD(classⅠ)

・失神の既往→致死性不整脈2%/年→ICD(classⅡa)

② 無症候性

・致死性不整脈1%/年

・EPS(電気生理学検査)で致死性不整脈誘発→ICD(classⅡb)

・上記で異常がなければ慎重な経過観察

 

・下記のいずれもなければ慎重に経過観察

45歳以下の突然死の家族歴
本人の心停止、心停止歴
夜間の胸苦のエピソード
12誘導心電図でPVC連発、心室頻拍

 

type2,type3(ブルガダ型心電図)の場合

※一度は専門医へのコンサルトが必要

・失神歴、突然死の家族歴の確認→いずれかかあれば専門医紹介(サンリズム負荷試験へ)

・1肋間上げてECG再検査→coved型になれば専門医へ紹介

・上記で何もなければ早期再分極異常に準じた対応

 

患者・家族指導

・家族には心肺蘇生法の講習参加を促す

・Naチャンネル遮断薬は心電図異常を増強させ、不整脈発作を惹起する可能性があるため、負荷試験を除き使用を控える

・過度の飲酒は避ける

・発熱時には速やかな解熱を図る

・経過観察例において、新たに失神が出現した場合は直ちに受診する

 

 

卒後15年目総合内科医の診断術 ver.2

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