疾患
症状
coved型、saddle back型とは?
概要
・ブルガダ型 ST-T 異常は coved 型と saddleback 型に分類され、coved 型は saddleback 型
よりも心室細動など致死性不整脈の発生頻度が高い。
・saddleback 型は不整脈の自覚症状、失神の既往、突然死の家族歴などを総合的に判断する。
・saddleback 型は無症候でも高位肋間記録によりcoved 型心電図に移行する場合があるので、1肋間上げての再確認が必要である
・検診マニュアルでは、coved型は自覚症状や家族歴の有無にかかわらず D 判定。
・saddleback 型は「失神、動悸など不整脈疾患を疑う自覚症状を伴う」または「若年者の突然死や遺伝性不整脈疾患(疑い)の家族歴」があればD判定、なければC判定
・また、健診時にはブルガダ症候群を診断することは困難であるため、心電図用語は所見名であるブルガダ型 ST-T 異常とされる。
判定基準
・右側胸部誘導(V1-V3誘導)でJ点(QRS波とST部分の繋ぎ目:junction)が0.2mV(2mm)上昇していることが必要。
・RVOT心外膜側の活動電位の伝導遅延の有無により、その形から「coved (入り江) 型」と、「saddle back (馬鞍) 型」に分類される。
coved型
・RVOT心外膜側の活動電位の伝導遅延がある型
・J点から斜めに急峻に下降して陰性T波に移行し、入り江のような形になる
・coved型は「J上昇+ST上昇+陰性T」(陰性T波を伴う:伝導遅延があるため)
・特にcoved型の病的意義が高く、Burgada症候群の診断にはcoved型心電図が必須となる。
saddleback型
・RVOT心外膜側の活動電位の伝導遅延がない型
・sasddleback型は「J波上昇+ST上昇」(しかし陰性T波は伴わない:伝導遅延がないため)
参照(このサイトより引用):http://shindenzunoheya.blog.jp/archives/13380399.html
ブルガダ型 ST-T 異常(標準 12 誘導心電図検診判定マニュアル(2023 年度版))
標準 12 誘導心電図検診判定マニュアル(2023 年度版)
健診時にはブルガダ症候群を診断することは困難であるため、心電図用語は所見名である「ブルガダ型 ST-T 異常」とする。
coved 型(→D判定)
・coved 型は saddleback 型よりも心室細動など致死性不整脈の発生頻度が高い。
Saddleback 型(→C判定、またはD判定)
Brugada型心電図のtype分類
・V1~ V3誘導の 「J点が2 mm(0.2 mV)以上を示す」ST上昇を、3つのタイプに分類
① type1:coved型ST上昇と陰性T波を示す場合
② type2:saddle back型を呈し,STの終末部(トラフ)が1 mm以上を示す場合
③ type3:coved型あるいはsaddle back型を示し,STの終末部が1 mm未満である場合
・ブルガダ型心電図type 1の症例で失神や心室細動、心房細動発症の危険が高いと言われている。
・ただし、Brugada型心電図type2、3でもtype1への変動を認め、注意を要する。
(不完全)右脚ブロックとの鑑別
・(不完全)右脚ブロック型では基本的にはSTが基線~低下するが、ブルガダ型はSTが上昇(J点が2 mm(0.2 mV)以上)する
・右脚ブロックではⅠ誘導やV5-6誘導に深いS波を認めるが、ブルガダ型では認めない
Brugada症候群を疑った時の検査、診断基準
・1~2肋間上げて、第2、3肋間で心電図を取ってみる。
・coved型(type1)の心電図が診断の必須項目
診断基準
・重要なことは、全てのBrugada型心電図がBrugada症候群という訳ではない。
<診断基準>
必須条件:
coved型(type1)の心電図(薬剤投与後の場合も含む)が、右測胸部誘導(V1-V3)の1つ以上に認められること。
追加条件:
①多形性心室頻拍・心室細動が記録されている
②45歳以下の突然死の家族歴がある
③典型的なcoved型(Type 1)の心電図を認める家族がいる
④多形性心室頻拍・心室細動が心臓電気生理検査により誘発される
⑤失神や夜間の瀕死期呼吸(あえぎ様呼吸)を認める
この追加条件の①~⑤のうち、1つ以上を満たすものとしています。
・但し、saddleback型(type2、type3)の場合は、薬物で典型的なcoved型(type1)になった症例だけを上記の診断基準に当てはめる。
治療方針
coved型(type1)の場合
※ 専門医へ紹介すること
① 有症候性(VF、または失神の既往がある場合)
・VFの既往→致死性不整脈10%/年→ICD(classⅠ)
・失神の既往→致死性不整脈2%/年→ICD(classⅡa)
② 無症候性
・致死性不整脈1%/年
・EPS(電気生理学検査)で致死性不整脈誘発→ICD(classⅡb)
・上記で異常がなければ慎重な経過観察
・下記のいずれもなければ慎重に経過観察
本人の心停止、心停止歴
夜間の胸苦のエピソード
12誘導心電図でPVC連発、心室頻拍
type2,type3(ブルガダ型心電図)の場合
※一度は専門医へのコンサルトが必要
・失神歴、突然死の家族歴の確認→いずれかかあれば専門医紹介(サンリズム負荷試験へ)
・1肋間上げてECG再検査→coved型になれば専門医へ紹介
・上記で何もなければ早期再分極異常に準じた対応
患者・家族指導
・家族には心肺蘇生法の講習参加を促す
・Naチャンネル遮断薬は心電図異常を増強させ、不整脈発作を惹起する可能性があるため、負荷試験を除き使用を控える
・過度の飲酒は避ける
・発熱時には速やかな解熱を図る
・経過観察例において、新たに失神が出現した場合は直ちに受診する
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