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睡眠薬(具体的処方、不眠時指示)

睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン
ー出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアルー

 

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不眠症の定義、分類

・適切な睡眠環境下で、睡眠の質や維持に関する訴えがあり、これに基づいて日中の機能異常が認められる症状

日中の機能障害がなければ不眠症ではない

 

分類

① 入眠障害

② 中途覚醒/睡眠維持困難

③ 早朝覚醒

 

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「不眠」の原因の鑑別

・甲状腺機能低下症

活動性低下による不眠や就寝時間の延長、体重増加や粘液水腫による喉咽頭の狭窄、睡眠関連呼吸障害

・加齢

・認知症

・前立腺肥大症による頻尿

・搔痒や疼痛を伴う疾患の合併

・更年期障害

・カフェイン

・スマートフォンの不適切使用

・薬剤性

・むずむず脚症候群

・うつ病

・概日リズム障害

・睡眠時無呼吸症候群

 

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睡眠薬処方の適応

・明らかな基礎疾患がなく、適切な睡眠衛生指導を行っても効果不十分な症例では睡眠薬の投与を考慮する。

→参照:

不眠、睡眠障害(問診、検査、睡眠衛生指導、薬物療法、出口戦略)
不眠症のタイプ(DSM-3、ICSD-3) ① 入眠困難 ② 中途覚醒/睡眠維持困難 ③ 早朝覚醒 不眠に関する問診 1.不眠の種類 「寝付きはいいですか?」 「途中で目が醒めますか?」 「朝早く目が醒めて、その後眠れないことはありますか?...

・最終目標は睡眠薬なしの状態に置く、つまり「出口を見据えた治療」が重要である。

・睡眠薬の効果と副作用のバランスが重要であり、特に依存症を生じないように注意する。

 

薬剤各論

睡眠薬治療の原則

・一般医がベンゾジアゼピン系を敢えて処方する理由はない(特に高力価・短時間作用型のトリアゾラム(ハルシオン®)、エチゾラム(デパス®)

第一選択はオキシレシン受容体拮抗薬(デエビゴ®、ベルソムラ®)

・空腹時投与が原則

・就寝時間の20~30分前に服用する

 

処方例

① 入眠障害

・デエビゴ 1回5~10㎎ 1日1回就寝前

デエビゴはベルソムラより入眠障害に有効

・ロゼレム 1回8㎎ 1日1回就寝前

 

② 中途覚醒、早朝覚醒

・ベルソムラ 1回15~20㎎ 1日1回就寝前

作用時間がデエビゴより長め(中~長時間作用あり)

・デエビゴ 1回10㎎ 1日1回就寝前

 

③ 高齢者

・ロゼレム 1回8㎎ 1日1回就寝前

・デエビゴ 1回2.5~10㎎ 1日1回就寝前

・ベルソムラ 1回15㎎ 1日1回就寝前

 

 

 

 

オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ®、デエビゴ®)

・効果と副作用のバランスという面では第1選択

・覚醒維持に作用するオレキシン受容体に拮抗

・高齢者の早期覚醒型に有効

・入眠障害にレンボレキサント(デエビゴ®:作用時間短い)、中途覚醒にスボレキサント(ベルソムラ®:作用時間長い)が一般的

 

デエビゴ®(レンボレキサント)

・オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラと同じ系統)

・どちらもオレキシン1受容体とオレキシン2受容体を阻害するが、デエビゴはベルソムラに比べてよりオレキシン2受容体を阻害する。

・オレキシン2受容体はより覚醒に関与するとされており、デエビゴはベルソムラより入眠障害に有効と考えられている

・また受容体からの解離が早く、持ち越しを避けやすい

・せん妄のリスクが少ない。

・筋弛緩作用が少ない

1回5㎎ 1日1回就寝前で開始。効果がなければ10㎎まで増量可

・トラゾドンとの併用も可(トラゾドン50mg+デエビゴ5㎎:おススメ)

・ベルソムラ15mg 服用患者患者からの切り替えは?

→1日1回5mg で換算

 

 

ベルソムラ®(スボレキサント)

・オレキシン受容体拮抗薬(最初に発売)

せん妄の予防効果あり

・筋弛緩作用少ない

・入眠障害にはキレが悪い

・作用時間がデエビゴより長め(中~長時間作用あり)。そのため途中覚醒、早期覚醒型に有効。

・持ち越し作用あり、翌日に過眠を認めることがある

年齢によって用量が異なる

65歳未満:1日1回20㎎  1×眠前

65歳以上:1日1回15㎎ 1×眠前

・用量幅が狭いことが欠点

 

メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン(ロゼレム®))

・睡眠相のずれ(昼夜逆転、概日リズム障害)に効果あり

速効性はなく、効果発現に2週間(~1か月)かかる(屯用では使用できない)

・効果は少し弱め(軽症の睡眠障害に良い適応)

・せん妄予防効果もあり

・日中の眠気の副作用あり(その場合は減量を考慮)

ベルソムラに次ぐ第2選択

・満腹時は血中濃度が上がらないので眠前空腹時投与が必要

・8㎎ 1×眠前

(昼間の眠気が強い時、概日リズム障害に用いる場合は1~4㎎)

 

非ベンゾジアゼピン系

・GABA受容体作動薬

GABA受容体のうち、ω1受容体が催眠作用、ω2受容体が抗不安・筋弛緩作用に関与する。

非ベンゾジアゼピン系はω1受容体選択性をもつ

・すべて超短時間型作用型に分類される

・ピークも半減期も短く、入眠障害によい適応

・筋弛緩作用は少ない

・依存性あり。処方が4週間を超えると依存性が形成し始めるので、できるだけ短期処方とする。

・入眠障害に対してキレがよく、即効性で抗不安作用もあるため、比較的若年の症例や不安が強い症例(例えば手術前、検査前など)に対して、短期間用いるのに適している。

・非ベンゾジアゼピン系のエスゾピクロン(ルネスタ®)が最も推奨(2㎎ 1×眠前、高齢者では1㎎)

 

エスゾピクロン(ルネスタ®)

・非ベンゾジアゼピン系(ベンゾ系の中では、現状で最も推奨)

・ゾピクロン(アモバン®)の改良型

・ピークが1時間、半減期が5時間

・超短時間作用型→入眠障害に有効

・筋弛緩作用や依存性が少ない

・2㎎ 1×眠前、高齢者では1㎎

 

ゾルピデム(マイスリー®)

・ピークが1時間未満、半減期が2時間

 

ゾピクロン(アモバン®)

・ピークが1時間、半減期が4時間

・効果はやや強めだが、やや苦味があるのが難点

 

抗うつ薬

・うつの不眠や、熟眠障害、不眠を伴ううつ病に対して

・鎮静作用あり

トラゾドン(デジレル®)25~50㎎ 1×夕食後

・ミアンセリン(テトラミド®)2.5~10㎎ 1×夕食後

・ミルザタピン(リフレックス®) 3.75~15㎎ 1×夕食後

 

トラゾドン(レスリン®、デジレル®)抗うつ薬

・第1選択

・抗うつ効果はほとんどない

・鎮静効果は弱い。「ゴソゴソレベル」の不眠に有効

・筋弛緩作用が少なく、安全

・抗コリン作用が少なく、特に注意点なし

・ベルソムラ、ロゼレムとの併用も可(トラゾドン50mg+デエビゴ5㎎:おススメ)

半減期が6~7時間と短いため、持ち越しが少ない

・効果が出るのが早いため、頓服で使用できる

・せん妄リスクが少ない

・25~50㎎で開始、最大150㎎までと、調整の幅が広い(1日1回 1×夕食後)

使用法

定期:1-6錠/日

屯用:「30分毎、合計3錠まで。深夜2時まで使用可」

 

 

 

不眠時指示

① 原則

・高齢者は睡眠時間が減少する。
・夜間に覚醒し、その後眠れないと訴える患者では、比較的早い時間に布団に入るケースがある。
・できるだけ「遅寝早起き」を勧め、AM0時~5時くらいまでの時間帯に睡眠が継続できるように調整する。
ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬はできるだけ処方しないこと
(依存性、筋弛緩作用、認知機能低下、せん妄の原因となる)
・せん妄のリスクが高い場合、不眠時、不穏時指示としてベンゾジアゼピン受容体作動薬の使用は避けること。
ラルメテオン(ロゼレム®)、オキシレチン拮抗薬(ベルソムラ®)、レンボレキサント(デエビゴ®)を用いる

 

 

② せん妄の発症リスクが高い場合の不眠時指示:

1)スボレキサント(ベルソムラ®)主体

① スボレキサント(ベルソムラ®)15㎎(これで上限)

② トラゾドン(レスリン®) 25㎎

③ トラゾドン(レスリン®) 25㎎

それぞれ30分以上あけて

 

2)レンボレキサント(デエビゴ®)主体

① 5㎎

② 2.5㎎

③ 2.5㎎

それぞれ30分以上あけて

 

3)トラゾドン(レスリン®、デジレル®)主体(鎮痛作用は弱い)

① 25㎎

② 25㎎

③ 25㎎

それぞれ30分開けて、合計3回まで

 

 

睡眠薬の減量と中止

一定程度良好な睡眠(寛解)が1~2か月間得られれば、睡眠薬の減量・中止を考慮する。

※ 寛解:年齢相応にある程度眠れており、かつ日中問題なく活動できる状態

・完全に満足のいく睡眠を目指すのではなく、「昼間の活動に支障をきたさない状態であればよい」と考え、患者にもそれを繰り返し説明・教育する必要がある

・ベンゾジアゼピン系依存症の場合の減量・中止は専門医に依頼するほうがよいと考えられる

・作用時間が短いものほど、減薬した時の離脱症状(不安、倦怠感)や反跳性不眠(不眠が一時的に服薬前より強くなる)が出現しやすい。

 

具体的な減薬方法

1)漸減法

・超短~短時間作用型で用いる

・1~2週間毎に、3/4→1/2→1/4錠と減量する

・リバウンドによる反跳性不眠が生じやすい短時間作用型睡眠薬(ゾルピデム(マイスリー®)、ゾピクロン(アモバン®)、ブロチゾラム(レンドルミン®))の場合、2~4週間毎に当初の投与量の25%ずつ漸減

 

2)隔日法

・中~長期間作用型で用いる

・半減期の長い睡眠薬の場合、2~4週間毎に「2日に1回」、「3日に1回」と服薬間隔を広げていく隔日法が可能

・短時間作用型からの離脱が難しい場合、いったん中~長時間型睡眠薬に置き換えたのちに隔日法で減量する

 

参照

不眠、睡眠障害(問診、検査、睡眠衛生指導、薬物療法、出口戦略)
不眠症のタイプ(DSM-3、ICSD-3) ① 入眠困難 ② 中途覚醒/睡眠維持困難 ③ 早朝覚醒 不眠に関する問診 1.不眠の種類 「寝付きはいいですか?」 「途中で目が醒めますか?」 「朝早く目が醒めて、その後眠れないことはありますか?...

 

 

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