睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン
ー出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアルー
睡眠薬処方の適応
・明らかな基礎疾患がなく、適切な睡眠衛生指導を行っても効果不十分な症例では睡眠薬の投与を考慮する。
・最終目標は睡眠薬なしの状態に置く、つまり「出口を見据えた治療」が重要である。
・睡眠薬の効果と副作用のバランスが重要であり、特に依存症を生じないように注意する。
具体的処方
① オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ®、デエビゴ®)
・効果と副作用のバランスという面では第1選択
・覚醒維持に作用するオレキシン受容体に拮抗
・高齢者の早期覚醒型に有効
・入眠困難にレンボレキサント(デエビゴ®)、中途覚醒にスボレキサント(ベルソムラ®)が一般的
・20㎎ 1×眠前(65歳以上の高齢者ではベルソムラ15㎎ 1×眠前)
② メラトニン受容体作動薬(ロゼレム®)
・睡眠相のずれ(昼夜逆転、概日リズム障害)に効果あり
・効果発現に2週間かかる(屯用では使用できない)
・日中の眠気の副作用あり(その場合は減量を考慮)
・ベルソムラに次ぐ第2選択
・8㎎ 1×眠前(昼間の眠気が強い時、概日リズム障害に用いる場合は1~4㎎)
③ ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系
・処方が4週間を超えると依存性が形成し始めるので、できるだけ短期処方とする。
・入眠障害に対してキレがよく、即効性で抗不安作用もあるため、比較的若年の症例や不安が強い症例(例えば手術前、検査前などに対して短期間用いるのに適している。
・非ベンゾジアゼピン系のエスゾピクロン(ルネスタ®)が最も推奨(2㎎ 1×眠前、高齢者では1㎎)
④ 抗うつ薬
・うつの不眠や、熟眠障害に対して
・鎮静作用あり
・トラゾドン(デジレル®)12.5~25㎎ 1×夕食後
・ミアンセリン(テトラミド®)2.5~10㎎ 1×夕食後
・ミルザタピン(リフレックス®) 3.75~15㎎ 1×夕食後
睡眠薬の減量と中止
・一定程度良好な睡眠(寛解)が1~2か月間得られれば、睡眠薬の減量・中止を考慮する。
※ 寛解:年齢相応にある程度眠れており、かつ日中問題なく活動できる状態
・完全に満足のいく睡眠を目指すのではなく、「昼間の活動に支障をきたさない状態であればよい」と考え、患者にもそれを繰り返し説明・教育する必要がある。
・ベンゾジアゼピン系依存症の場合の減量・中止は専門医に依頼するほうがよいと考えられる
具体的な減薬方法
1)漸減法
・超短~短時間作用型で用いる
・1~2週間毎に、3/4→1/2→1/4錠と減量する
・リバウンドによる反跳性不眠が生じやすい短時間作用型睡眠薬(ゾルピデム(マイスリー®)、ゾピクロン(アモバン®)、ブロチゾラム(レンドルミン®))の場合、2~4週間毎に当初の投与量の25%ずつ漸減
2)隔日法
・中~長期間作用型で用いる
・半減期の長い睡眠薬の場合、2~4週間毎に「2日に1回」、「3日に1回」と服薬間隔を広げていく隔日法が可能
・短時間作用型からの離脱が難しい場合、いったん中~長時間型睡眠薬に置き換えたのちに隔日法で減量する
参照


レジデントノート 2022年3月 Vol.23 No.18 一般外来 処方ドリル〜症例で鍛える! 慢性疾患・コモンプロブレムへの上手な薬の選び方・使い方
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