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急性期脳梗塞(NIHSS、rt-PA治療の適応、血栓回収療法、または適応外の場合)

  1. 脳梗塞rt-PA適正使用講習e-learning
  2. NIHSS(National Institute of Health Stroke Scale)
  3. 発症時刻の定義
  4. 脳卒中を疑ったら、頭部CTの前に全症例で血糖測定
  5. 急性期脳梗塞治療①:静注血栓溶解療法(rt-PA静注療法) ※発症から4.5時間以内
    1. rt-PA治療適応:『発症から4.5時間以内』
        1. DWI-FLAIR ミスマッチ
    2. 1.適応外 (禁忌):1項目でも「適応外」に該当すれば実施しない
        1. 1)発症ないし発見から治療開始までの時間経過
        2. 2)既往歴
        3. 3)治療薬の過敏症
        4. 4)臨床所見
        5. 4)血液所見 (治療開始前に必ず血糖、血小板数を測定する)
        6. 5)CT/MR 所見
    3. 2.慎重投与
  6. 急性期脳梗塞治療 ②:機械的血栓回収療法 ※ 発症から24時間以内
    1. LVOスケール(Large Vessel Occlusionスケール)
        1. 項目
        2. 判定
    2. 適応
        1. 1)発症早期の急性期脳梗塞:
        2. 2)最終健常確認時刻より 6 時間を超えた ICA または MCA M1 部の急性閉塞が原因と考えられる脳梗塞
        3. 3) ASPECTS が 6 点未満の広範囲虚血例、NIHSS スコアが 6 未満の軽症例、MCA M2 部や BA の急性脳動脈閉塞例、発症前 mRS スコアが 2 以上の脳梗塞例に対して
        4. 4) 本療法の適応決定において、灌流画像の撮影に時間を要さない場合
    3. Alberta Stroke Program Early CT Score( ASPECTS)
  7. 急性期脳梗塞治療③: 血栓溶解療法、血栓回収療法の適応がない場合の治療方針
    1. 1)アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞の場合
        1. 発症48時間以内では、アスピリン160~300㎎の経口投与を開始(概ね200㎎/日)
    2. 2)心原生脳塞栓症
    3. ※ 病型によらず行う抗凝固療法以外の治療
        1. ・抗脳浮腫療法
        2. ・脳保護薬
        3. ・脂質異常症治療
  8. 参考動画・文献
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脳梗塞rt-PA適正使用講習e-learning

・通年5月と11月に日本脳卒中学会のホームページより受講可能

 

 

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NIHSS(National Institute of Health Stroke Scale)

 

・脳卒中重症度評価スケール。0~42点で評価。

・各項目ともに点数が高いほど重症度も高くなり、最大で42点となるように設定されている。

・以下の注意を守り、1aから11までの項目ごとに評点し、最後に合計点を計算する

1. 検査はリストの項目順に行う

2. 結果をすぐ記録し、迅速に進める

3. 検査済の項目に戻って評点を変えてはならない

4. 各項目に定められている方法に従って評価する

5. 評点は患者が実際に遂行したことに基づいて行い、推測で評点してはならない

6. 指示されている部分を除き、患者を誘導してはならない

 

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発症時刻の定義

① 患者自身、あるいは症状出現時に目撃した人が報告した時刻

② 患者が無症状であることが最後に確認された時刻(最終健常確認時刻の確認)

注)

起床時に症状を有していた場合は就寝前、あるいはその途中で無症状であることが確認された時点

段階状増悪の場合、最初に症状が出現した時点

一過性脳虚血発作が前駆した場合は、症状が一旦完全に消失し、2度目に症状が出現した時刻

 

脳卒中を疑ったら、頭部CTの前に全症例で血糖測定

・脳卒中を疑ったら、全例まずは血糖測定を行うこと!

・非糖尿病患者でも低血糖になる可能性がある(腎不全、肝不全、異吻合(特にRoux-en-Y法)、敗血症、低栄養など)

 

急性期脳梗塞治療①:静注血栓溶解療法(rt-PA静注療法) ※発症から4.5時間以内

rt-PA治療適応:『発症から4.5時間以内』

静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針 第三版(2019年)
https://www.jsts.gr.jp/img/rt-PA03.pdf

・対象は脳梗塞のすべての病型(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原生脳塞栓症

・静注血栓溶解療法は、発症から 4.5 時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害患者に対して行う

・発症時刻が不明な時は、終健常確認時刻」をもって発症時刻とする
・発症時刻が不明な時でも、頭部 MRI DWI(発症1~2時間で出現)で見られる虚血性変化が 、FLAIR 画像(発症4.5時間以降で出現)で明瞭でない場合には、発症 4.5 時間以内の可能性が高い。このような症例に静注血栓溶解療法を行うことを、考慮しても良い。
DWI-FLAIR ミスマッチ
・発症早期にMRIの 拡散強調画像(diffusion-wieghted image: DWI)で認める虚血性変化(発症1~2時間で出現)が、FLAIR ( fluid-attenuated inversion recovery )画像(発症4.5時間以降で出現)で明瞭でない場合を「 DWI-FLAIR ミスマッチ」という。
DWI-FLAIR ミスマッチがある場合は、発症 4.5 時間以内の可能性が高い

 

1.適応外 (禁忌):1項目でも「適応外」に該当すれば実施しない

1)発症ないし発見から治療開始までの時間経過
・発症(時刻確定)または発見から 4.5 時間超
・発見から 4.5 時間以内で DWI/FLAIR ミスマッチなし、または未評価
2)既往歴
・非外傷性頭蓋内出血
・1 ヵ月以内の脳梗塞(症状が短時間に消失している場合を含まない)
・3 ヵ月以内の重篤な頭部脊髄の外傷あるいは手術
・21 日以内の消化管あるいは尿路出血
・14 日以内の大手術あるいは頭部以外の重篤な外傷
3)治療薬の過敏症

 

4)臨床所見
・くも膜下出血(疑)
・急性大動脈解離の合併
・出血の合併(頭蓋内,消化管,尿路,後腹膜,喀血)
・収縮期血圧(降圧療法後も 185mmHg 以上)
・拡張期血圧(降圧療法後も 110mmHg 以上)
・重篤な肝障害
・急性膵炎
・感染性心内膜炎 (診断が確定した患者)
4)血液所見 (治療開始前に必ず血糖、血小板数を測定する)
・血糖異常(血糖補正後も<50mg/dL 、または>400mg/dL)
・血小板数 10万 / mm3以下 (肝硬変、血液疾患の病歴がある患者)
※肝硬変、血液疾患の病歴がない患者では、血液検査結果の確認前に治療開始可能だが、10万/mm3以下が判明した場合にすみやかに中止する
・血液所見:抗凝固療法中ないし凝固異常症において
 PT-INR>1.7
 aPTT の延長(前値の 1.5 倍(目安として約 40 秒)を超える)
 直接作用型経口抗凝固薬の最終服用後 4 時間以内
※ダビガトラン(プラザキサ®)の服用患者にイダルシズマブを用いて後に本療法を検討する場合は、上記所見は適応外項目とならない
5)CT/MR 所見
・広汎な早期虚血性変化
・圧排所見(正中構造偏位)

2.慎重投与

・年齢 81 歳以上
・最終健常確認から 4.5 時間超、かつ発見から 4.5 時間以内に治療開始可能でDWI/FLAIR ミスマッチあり
・既往歴
 10 日以内の生検・外傷
 10 日以内の分娩・流早産
 1 ヵ月以上経過した脳梗塞(とくに糖尿病合併例)
 蛋白製剤アレルギー
・神経症候
 重症(NIHSS ≧26点)
 軽症(NIHSS ≦4点)
 症候の急速な軽症化
 痙攣(既往歴などからてんかんの可能性が高ければ適応外)
・臨床所見
 脳動脈瘤・頭蓋内腫瘍・脳動静脈奇形・もやもや病
 胸部大動脈瘤
 消化管潰瘍・憩室炎,大腸炎
 活動性結核
 糖尿病性出血性網膜症・出血性眼症
 血栓溶解薬,抗血栓薬投与中(とくに経口抗凝固薬投与中)
 月経期間中
 重篤な腎障害

 コントロール不良の糖尿病

感染性心内膜炎

 

急性期脳梗塞治療 ②:機械的血栓回収療法 ※ 発症から24時間以内

主幹動脈(large vessel occulusion:LVO:内頚動脈、中大脳動脈、脳底動脈の閉塞)で、神経症候と画像所見が適応基準を満たす場合、最長24時間までが治療対象となる。

 

LVOスケール(Large Vessel Occlusionスケール)

・「LVOスケール(Large Vessel Occlusionスケール)」とは、脳の主要な血管が血栓や塞栓によって閉塞される主幹動脈閉塞を予測するためのスケールです。

・救急隊と病院の間で情報伝達する際に使用され、主幹動脈閉塞が疑われる場合は、血管内手術による血栓除去が行える施設に搬送するためのものです。

・6つの観察項目に基づいて脳卒中が疑われる場合、そのうち満たされた項目数(陽性項目数)に応じて「感度」や「陽性的中率」が示され、これを基に機械的血栓回収療法の適応となるLVOの予測が可能となります。
・この予測値は、血栓回収医療機関への直接搬送を考慮するための指標として提案されました。
項目

・脈不正

・共同偏視

・半側空間無視(指4本法)

傷病者の目の前50cmに手の甲側を向けて指4本を見せて、「指は何本ですか?」と質問する。正確に答えられなければ「半側空間無視あり」と判断する。
*意識障害等によって答えられない場合も「あり」とする。

・失語

「眼鏡」「時計」が言えない

・顔面麻痺

・上肢麻痺

片側上肢麻痺

 

判定

・地域における搬送指標として活用することを提案する。
例) 陰性的中率/感度を重視するなら2項目、陽性的中率/特異度を重視するなら3項目

・「医療資源や医療機関の受入体制が豊富な地域・期間」では、6項目のうち2項目が陽性であった時点での搬送を考慮する。

・「医療資源や医療機関の受入体制が相対的に不十分な地域・期間」では、3項目が陽性であった時点での搬送が考慮される

 

適応

1)発症早期の急性期脳梗塞:
発症早期の急性期脳梗塞では、
①前方循環系の主幹脳動脈(ICA または MCA M1 部)閉塞と診断され、
②発症前の modified Rankin scale (mRS) スコアが 0 または 1
③頭部CTまたはMRI拡散強調画像で Alberta Stroke Program Early CT Score (ASPECTS) が 6点以上
④National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS)スコアが6以上
⑤年齢18歳以上
のすべてを満たす症例に対して、遺伝子組み換え組織プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA、アルテプラーゼ)静注療法を含む内科治療に追加して、発症6時間以内に ステントリトリーバーまたは血栓吸引カテーテルを用いた血管内治療(機械的血栓回収療法)を開始することが勧められる【グレードA】

 

MCA M1:中大脳動脈水平部

参照(このサイトより引用):https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/15633

 

 

mRS

 

2)最終健常確認時刻より 6 時間を超えた ICA または MCA M1 部の急性閉塞が原因と考えられる脳梗塞
最終健常確認時刻から6時間を超えたICAまたはMCA M1部の急性閉塞が原因と考えられる脳梗塞では、
・発症前の mRS スコアが0または1で、
・NIHSSスコアが10以上かつMRI拡散強調画像でASPECTSが7点以上
である症例に対して、最終健常確認時刻から16時間以内に本療法を開始することが強く勧められる【グレードA】
また、
・頭部CT灌流画像またはMRI拡散強調画像における虚血コア体積と、神経症状あるいは灌流画像での灌流遅延領域にミスマッチがある
と判断される症例に対し、最終健常確認時刻から24時間以内に本療法を開始することが勧められる【グレードB】

・ただし我が国では、Trevo、Solitaire を除く血栓回収機器の添付文書での使用目的は「原則として発症 8 時間以内の急性期脳梗塞」であることに留意する。

 

3) ASPECTS が 6 点未満の広範囲虚血例、NIHSS スコアが 6 未満の軽症例、MCA M2 部や BA の急性脳動脈閉塞例、発症前 mRS スコアが 2 以上の脳梗塞例に対して
発症 6 時間以内に本療法を施行することは、十分な科学的根拠は示されていないが、症例ごとに適応を慎重に検討し、有効性が安全性を上回ると判断した場合には本療法の施行を考慮しても良い【グレード C1】。

 

4) 本療法の適応決定において、灌流画像の撮影に時間を要さない場合
虚血コア体積および低灌流領域を迅速に計測可能な自動画像解析ソフトウェアを用いても良い【グレードC1】

 

 

Alberta Stroke Program Early CT Score( ASPECTS)

・「レンズ核(被殻+淡蒼球)と視床を通る軸位断」と,「それより約 2 cm 頭側のレンズ核構造が見えなくなった最初の断面」の 2 断面にて,MCA 領域を 10 カ所に区分し、それぞれを1点としてカウントし、CTで虚血性変化が認められる箇所の個数につき10点満点から1点ずつ減点することによって病変範囲をスコア化するもの。

点数が低いほど重症となる

・評価領域のどこにも EIC(早期虚血性変化;early ischemic change:「皮髄境界消失」「レンズ核の不明瞭化」「脳溝の消失」)がみられなければ 1 点,全域にみられれば 0 点とする(10点満点).

・一般に ASPECTS 7点 が MCA 領域の 1/3 に相当し,オリジナルの論によると 8点 以上が転帰良好[modified Rankin Scale(mRS)0-2]と関連していた.

・10 領域を系統的に判読することで EIC の見落としが少なくなり,一カ所ずつ所見を吟味できるので,初心者向けの教育ツールとしての利用価値も高い.

 

 

 

 

 

急性期脳梗塞治療③: 血栓溶解療法、血栓回収療法の適応がない場合の治療方針

・脳梗塞の病型(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原生脳塞栓症)、発症機序(血栓性、塞栓性、血行力学性)がいずれに該当するかを診断する

 

 

 

1)アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞の場合

発症48時間以内では、アスピリン160~300㎎の経口投与を開始(概ね200㎎/日)

処方例1)

バイアスピリン(100㎎)1回2錠 1日1回

 

・または発症早期の軽症例(NIHSS 3点以下)では抗血小板薬2剤併用(dual antiplatelet therarpy;DAPT)(アスピリン+クロピドグレル)を考慮

・抗血小板薬の併用期間は1か月以内(一般には3週間)。長期になると出血性合併症が増加する

・急性期治療後(3週間後)にはアスピリン75~150㎎/日単独、またはクロピドグレル75㎎/日単独、またはシロスタゾール200㎎/日単剤に変更

・出血のリスクが高いと考えられる症例ではシロスタゾール(プレタール®)も考慮

 

※ オザグレルナトリウムの静脈投与は内服不可などの場合に考慮(推奨度は高くない)

 

2)心原生脳塞栓症

・抗凝固療法の開始は出血性梗塞のリスクによって判断。特に広範囲梗塞では慎重に判断すること

・ヘパリンは使用を考慮してもよい(推奨度は高くない)

・現在はDOACで行うことが主流となりつつある

 

※ 病型によらず行う抗凝固療法以外の治療

・抗脳浮腫療法

頭蓋圧亢進を伴うような大きな脳梗塞の急性期には高張グリセロール(10%)やマンニトールの静脈内投与を行うことを考慮

・脳保護薬

エダラボン(発症24時間以内の脳梗塞患者で投与)

・脂質異常症治療

脳梗塞急性期にスタチンの投与開始を考慮

 

 

 

 

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