てんかんの定義
てんかんの原因
てんかんの検査
ただし
「てんかん発作が起きているときの脳波が記録できて、それが発作の脳波であればてんかん発作であると診断できる」
国際抗てんかん連盟(ILAE)「てんかん分類(2017年)」
I. 焦点てんかん(焦点発作)
・過剰興奮が脳のある一部分から始まる
① 焦点意識保持発作(旧分類の単純部分発作):意識の保たれる発作
② 焦点意識減損発作(旧分類の複雑部分発作):意識のなくなる発作
③ 焦点起始両側強直間代発作(旧分類の二次性全般化): ①や②からけいれん発作に移行するもの
II. 全般てんかん(全般発作)
・過剰興奮が初めから脳全体(両側性)に広がる
1.欠神発作:
ボーとして短時間意識を失うもの
2.ミオクロニー発作:
身体の一部分ないしは全身の筋肉がピクンとするもの
3.間代発作:
カクカクする発作
4.強直発作:
突っ張る発作
5.強直間代発作:
突っ張ってからカクカクする発作
6.脱力発作:
筋肉の力が抜ける発作
Ⅲ 全般焦点合併てんかん
Ⅳ 病型不明てんかん
過剰興奮の起始が不明
抗てんかん発作薬(anti-seizure medication:ASM)
基本事項
・てんかんの治療は、薬物療法から開始されることが多い。てんかんに対する治療薬は従来「抗てんかん薬(anti-epileptic drug)」 と呼ばれてきたが、近年は “てんかん発作”に対する薬剤という意味で、 「抗てんかん発作薬/抗発作薬(anti-seizure medication: ASM) 」と表現されることが多い。
・通常ASMは単剤かつ少量から治療を開始し、発 作が抑制されるまで漸増する。初回のASM投与後に発作が残存する場合は、てんかんの診断自体の見直しやASMの服薬状況の確認などを行う。そのうえで、ほかの薬剤への切り替えまたは2剤目の追加 作用を行う。
・適切に選択または切り替えを行い、かつ十分な投与量で2剤以上使用しても発作が残存する場合は、「薬剤抵抗性てんかん (従来「難治てんかん」といわれていた)と判断し、外科的治療、免疫療法、食事療法(ケトン食療法)、3剤目のASM追加投与などを検討する。特に3剤以上のASMを投与する場合は、作用機序が異なるASMを選択し、相補的な組み合わせとなる合理的多剤併用療法を心がけることが重要である。
・なお、てんかんと診断されたからといっても、発作型、発作頻度、併存症によっては必ずしも治療が必要になるわけではない。
抗てんかん発作薬の種類と作用機序
・ASMにはさまざまな作用機序があり、1つの薬剤で複数の作用機序を有するものもある、大別すると、
1) 興奮性機構の抑制作用を有する薬剤
2) 抑制性機構の増強作用を有する薬剤
がある
1) 興奮性機構の抑制作用を有する薬剤
ナトリウム (Na) チャネル、カルシウム(Ca²+) チャネル、NMDA (N-methyl-D-aspartic acid: N-メチル-D-アスパラギン酸) 受容体、AMPA (a-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropi-onic acid: a-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メソオキサゾール-4-プロピオン酸) 受容体、SV2A (synaptic vesicle protein 2A: シナプス小胞タンパク質2A)に作用する薬剤が該当する。
2) 抑制性機構の増強作用を有する薬剤
GABA (y-aminobutyric acid: y-アミノ酪酸)A受容体に作用する薬剤に加え、GABA再取り込み阻害薬やGABA分解酵素であるGABAトランスアミナーゼ阻害薬、炭酸脫水酵素阻害薬などが該当する。
抗てんかん発作薬(anti-seizure medication:ASM)各論
レベチラセタム(イーケプラ®)
・興奮性機構の抑制作用を有する薬剤(SV2A (synaptic vesicle protein 2A: シナプス小胞タンパク質2A)結合薬)
・焦点てんかん、全般てんかんのいずれも使用可
・薬剤相互作用が少なく、眠気やふらつきなどの副作用も少ないため、高齢者にも使いやすい
処方例)
500~1000㎎/日から開始
イーケプラ®(250) 1回1錠 1日2回
ラコサミド(ビムパット®)
・興奮性機構の抑制作用を有する薬剤(電位依存性ナトリウム (Na) チャネル阻害薬)
・薬剤相互作用が少なく、眠気やふらつきなどの副作用も少ないため、高齢者にも使いやすい
処方例)
100mg/日から開始
ビムパット®(50) 1回1錠 1日2回
ラモトラギン(ラミクタール®)
・興奮性機構の抑制作用を有する薬剤(電位依存性ナトリウム (Na) チャネル阻害薬)
・双極性障害にも使用される
・眠気やふらつきなどの副作用も少ないため、高齢者にも使いやすい
・催奇形性の発現率が低いため、妊娠適齢期てんかんにも使用できる
・急速に増量するとStevens-Johnson症候群などの重症薬疹のリスクが高くなるため注意を要する
バルプロ酸(デパケン®)
・抑制性機構の増強作用を有する薬剤 (GABA A受容体作動薬)
・全般てんかんの第一選択薬
・副作用として高アンモニア血症、肝機能障害などがある
・胎児への催奇形性や出産後の精神発達への影響があり、妊娠または妊娠の可能性のある女性への投与は禁忌
・
てんかんの治療
・「焦点てんかん」と「全般てんかん」では薬剤選択が異なる
・新規抗てんかん薬である「ラモトラギン(ラミクタール®)」「レベチラセタム(イーケプラ®)」も単剤での使用が保険適応となった(2014年)。
・しかも新規抗てんかん薬は血中濃度測定は不要。
焦点てんかん(焦点発作)
・第一選択はレベチラセタム(イーケプラ®)、カルバマゼピン(テグレトール®)、ラモトリギン(ラミクタール®)
全般てんかん(全般発作)
・第一選択はバルプロ酸(デパケンR®)
・バルプロ酸を増量しても発作が消失しない場合はレベチラセタム(イーケプラ®)かラモトリギン(ラミクタール®)に変更する
焦点と全般の鑑別が難しいてんかん(起始不明発作)
・レベチラセタム(イーケプラ®)またはラモトリギン(ラミクタール®)などのスペクトラムの広い新規抗てんかん薬を処方する
高齢者への処方
・ほとんどが「焦点てんかん」
例1)レベチラセタム(イーケプラ®)
・1回125㎎、1日2回朝夕食後(250㎎/日)で開始
・以降、発作が抑制されない場合は14日ごとに1日量を125~250㎎増量
・1回500㎎、1日2回朝夕食後(1日1000㎎)を目安に漸増
※副作用
・眠気、だるさ
・薬疹のリスクは低め
・増量で易刺激性(イライラ)、易怒性といった精神症状が出現しうる
→精神症状がある患者では通常量の半分量(1回0.5T 1日2回)から開始し、
緩徐な増量(125~250㎎)が望まれる
例2)ラミクラール(25)
・1回1錠、1日1回朝食後、隔日投与で14日間投与
・その後連日投与に増量
・以降、14日毎に25㎎追加、50㎎/日より1日2回にして投与する
・急速に増量するとStevens-Johnson症候群などの重症薬疹のリスクが高くなるため注意を要する
・1回2錠 1日2回朝夕食後(1日100㎎)を目安に漸増

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