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失神:失神三羽烏(心原性、起立性、神経調節性)、入院適応判断

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3つの鑑別疾患群(失神三羽烏 by Dr.林)

① 心原生(心血管性)失神
② 起立性失神(出血、貧血、脱水)
③ 神経調節性(反射性)失神(Neurally mediated syncope)

(④として、薬剤性失神:薬剤性QT延長)

 

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失神の定義と種類

失神の定義

「一過性の意識消失発作の結果、姿勢が保持できなくなり、かつ自然に、また完全に意識の回復がみられること」を失神と定義する。

 

診療の注意点

・「失神」と「意識障害」は区別して鑑別する

・失神なら数分以内(ほとんどが5分以内)に元の状態に戻る

・失神患者の診断に頭部CTは寄与しない

・顔面外傷がある場合は、失神の精査を怠ってはならない(倒れる瞬間を覚えているか?手を出して受け身をとるのが間に合わなかっったのか、確認する)

・失神の原因として「薬剤性」を必ず念頭に

 

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失神と痙攣(てんかん)の鑑別

痙攣(てんかん)の可能性を高める所見

前兆を伴う

表情は開眼、開口

舌咬傷(特に片側性)

頭位変換

チアノーゼ

ストレスに関連した意識障害

発作後錯乱、意識障害、発作後もうろう状態(post-ictal state)

・CK、アンモニア、乳酸値の上昇

 

失神の可能性を高める所見

長時間の立位

前駆する発汗,嘔気,前失神症状,顔面蒼白

 

 

失神検査の3種の神器(by Dr.林)

・三種の神器:「採血」「心電図」「妊娠反応」

加えて、

「SpO2モニター」:肺血栓塞栓症の検出

「エコー」:心嚢水、胸水、腹水、IVC、心収縮能、右心負荷所見、A弁、M弁

 

・血液検査

痙攣ではCK、アンモニア、乳酸値の上昇を認める

 

 

3つの鑑別疾患群(失神三羽烏(by Dr.林))

① 心原生(心血管性)失神

② 起立性失神(出血、貧血、脱水)

③ 神経調節性(反射性)失神(Neurally mediated syncope)

(④として、薬剤性失神:薬剤性QT延長)

 

1.心原生(心血管性)失神(見逃すな!生命予後不良!)

・「不整脈」「虚血性心疾患」「大動脈解離」「肺血栓塞栓症」「クモ膜下出血」など

・見逃すと一年後死亡率18-33%→高齢者の失神では違うと分かるまで心血管性を疑うこと!

臥位での発症、運動時の発症の場合、強く疑う。

・血圧左右差、頚部に放散する収縮期駆出性雑音の確認

 

見逃してはいけない鑑別疾患「HEARTS」

H : heart attack,heart failure(心筋症、心筋梗塞)
E : embolism(肺)
A : aortic dissection/aortic stenosis
R : rhythm disturebance ( 徐脈性不整脈:房室ブロック、SSS)
T : tachycardia(頻脈性不整脈:Vf,VT)
S : subarachnoid hemorrhage(くも膜下出血)

 

失神患者の高リスク基準(日本循環器学会ほか:失神の診断・治療ガイドライン2012年改訂版)
① 重度の器質的心疾患あるいは冠動脈疾患:
・心不全
・左室駆出分画低下
・心筋梗塞歴
② 臨床上あるいは心電図の特徴から不整脈性失神が示唆されるもの
労作中あるいは仰臥時の失神
・失神時の動悸
心臓突然死の家族歴
・非持続性心室頻拍
・二束ブロック(左脚ブロック,右脚ブロック+左脚前枝or 左脚後枝ブロック)
・QRS≧120ms のその他の心室内伝導異常
・陰性変時性作用薬や身体トレーニングのない不適切な洞徐脈(<50/分),洞房ブロック
・早期興奮症候群
・QT 延長 or 短縮
・Brugada パターン
・不整脈原性右室心筋症を示唆する右前胸部誘導の陰性T波,イプシロン波,心室遅延電位
③ その他:重度の貧血,電解質異常等
心電図の見るべきポイント(Ottawa ECG criteria)

① ブロック

a. Ⅱ度Morbitz 2型、もしくはⅢ度AVブロック
b. 脚ブロック+Ⅰ度AVブロック
c. 右脚ブロック+左脚前肢または後枝ブロック

② 新規虚血性変化

③ 非洞調律

④ 左軸偏位

⑤ 救急外来における心電図モニター異常

→1つでも該当すれば、30日後のアウトカム不良

 

Red flag

・心疾患のリスク(心不全など)
・高齢者
・どのように発症したか?(臥位発症前駆症状なし胸痛の合併、労作性発症(器質性))

 

2.起立性失神(出血、貧血、脱水)

・立位になった直後に発症(多くは5分以内。5分以上の場合は心血管性、血管迷走神経性を考える)

・起立試験(参照

・消化管出血、腹腔内出血(肝癌、腹部大動脈破裂)、子宮外妊娠破裂(妊娠の有無)

・経鼻胃管、便潜血チェック

原因

・貧血

・出血

・脱水

・薬物起因性

・自律神経不全

 

3.神経調節性(反射性)失神(Neurally mediated syncope)

・様々な要因により交感神経抑制による血管拡張と迷走神経緊張による徐脈が、様々なバランスをもって生じる結果、失神に至ることをいう。

原因

身体的・精神的要因 (長時間の立位あるいは座位姿勢)
痛み刺激
不眠・疲労・恐怖など
環境要因 人混み
閉鎖的空間
※自律神経調節の関与が発症に関わっており、立位あるいは座位で同一姿勢を維持している時に発生しやすい。

分類

一過性徐脈により失神発作に至る「心抑制型」
徐脈を伴わず、一過性の血圧低下のみにより失神発作に至る「血管抑制型」
徐脈と血圧低下を伴う「混合型」

・起立後5分以上経過してからが多い(↔起立性は多くは3分後位から)

・Tilt試験は最低20~45分必要

 

種類

・血管迷走神経性失神

ストレス、同じ姿勢(立位、座位)、疼痛、採血、恐怖など

・状況失神(situational syncope)

特定の日常動作で誘発される失神

排尿、排便、咳嗽(胸腔内圧上昇)、嚥下、食後、運動後

・嚥下性失神

食道への刺激が迷走神経を介し、多くの場合は徐脈性不整脈を誘発して起こる。特徴として、大きめの固形物や冷水、炭酸飲料の嚥下により誘発されやすい)

・運動後失神

・頸動脈洞症候群

車のバック運転、髭剃り、きついネクタイ

 

入院適応判断

鑑別すべき疾患(疑いあれば入院精査)

・虚血性心疾患

・徐脈性・頻脈性不整脈

・肺塞栓症

・大動脈解離

・脳血管疾患(特にクモ膜下出血)

・起立性失神の鑑別疾患(消化管出血、大動脈切迫破裂、子宮外妊娠)

 

※ サンフランシスコの失神ルール:「CHESS」

・congestive heart failure:うっ血性心不全

・Ht<30%:貧血

・ECG:洞調律でない、新しい心電図変化

・shortness of breath:息切れ

・systolic BP<90mmHg :血圧低下

 →1つでもあれば入院適応

 

 

 

 

卒後15年目総合内科医の診断術 ver.2

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