なぜ非薬物療法(運動療法)が重要かつ有効か?
(参考:洛和会音羽病院 酒見英太先生)
・地球上の生命は約138億年前のビッグバンでばら撒かれた粒子が気の遠くなるような時間をかけて寄り集まってできた軌跡の産物である。
・我々の哺乳類としての体の基本構造は約2億年前にでき、ホモ・サピエンスとしての体や脳の基本構造は約20~30万年前にほぼ完成した。
・約1万年前に農耕や牧畜が始まり定住が可能となったが、古代文明発祥以降も、大多数の被支配者階級は生産活動にもくもくと体を使っていた。
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ところが、
・約200年前に英国で産業革命が始まって以来、化石燃料を始めとするエネルギー消費は増加の一途をたどる一方で、次第に我々人類は、何十万年もかけて飢餓に堪えつつ食糧確保活動をするために進化させてきた身体(視力、聴力、運動器、神経、内分泌など)を造られたように使用しなくなった。
・特に顕著なのは第2次世界大戦後の復興期以降で、日本においては戦前と比べ、1日の摂取カロリーは約2000kcal強で変わっていないのに対し、自動車の普及、その後のIT技術の普及が日々の歩行不足に拍車を掛け、生活習慣病の増加に影響している。
運動の効果:
・運動不足が筋緊張性頭痛、肩こり、不眠、メタボリックシンドローム、骨粗鬆症の原因や増悪因子になることが知られている。
・予防的な観点から、定期的な運動習慣が死亡率低下、糖尿病低下、心血管疾患低下、いくつかの癌発症低下、転倒・骨折の低下、うつの低下、認知機能保持という好ましい影響を及ぼすことが証明されている。
結論:
運動は慢性疾患に対する非薬物療法のなかでは最も重視されるべきものであると言える
Walking is man’s best medicine.
医聖・ヒポクラテスの言葉
参考文献
総合診療2020年10月号 特集 ポリファーマシーを回避する! エビデンスに基づく非薬物療法のススメ
「身体活動基準2023(仮称)」
厚生労働省は、2023年6月に「健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会」を設置し、平成25(2013)年に策定した「健康づくりのための身体活動基準・指針2013(アクティブガイド)」の改訂に着手。
このほど開催された検討会で「身体活動基準2023(仮称)」が公表され、ライフステージ別の身体活動・運動の推奨値や「働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント(案)」が示された。
今後、議論を重ね、基準・指針を決定して年度内に公表し、来年度からスタートする健康日本21(第三次)のアクションプランに反映させる方針となっている。
今回の改訂では、ライフステージ別(「成人」「こども」「高齢者」)の身体活動・運動の推奨値について、メタ解析等で一定のエビデンスがある情報を記載し、推奨値を示している。
特に2013年版からの大きな変更点は、「座位行動」を取り上げていることだ。
システマティック・レビューで、総座位時間の増加に伴い死亡リスクが増加すると報告されていること。30分以上連続する座位行動をできる限り頻繁に中断(ブレイク)することが心血管代謝疾患のリスクを低下させるとの報告があること。
さらに2020年に公表されたWHO(世界保健機関)の「身体活動および座位行動に関するガイドライン」(2020年)でも、各年代における座位時間の減少や身体活動への置き換えを推奨しており、これらのエビデンスを集積して今回の改訂案では「座位行動」の推奨値を設定した。
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