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化学物質の有害性

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無毒性量(NOAEL)と最小毒性量(LOAEL)

無毒性量(NOAEL:No Observed Adverse Effect Level)

・「無毒性量(NOAEL:No Observed Adverse Effect Level)」と「最小毒性量(LOAEL:: Lowest Observed Adverse Effect Level)」はともに、慢性毒性を調べるための動物試験などにおける有害性の程度を表す指標である。

・「無毒性量(NOAEL)」は動物試験等で有害な影響が認められない最高の投与量である。

・何段階かの投与用量群を用いた毒性試験において、有害影響が観察されなかった最高の暴露量
のことである。

・この値に安全係数や不確定係数を乗じて、ADI や TDI を求めることがある。

 

NOEL:No Observed Effect Level(無影響量)

・毒性試験において有害、無害両方を含む影響が認められない最高の暴露量。

・影響の中には有害、無害両方を含むので、一般には NOAEL に等しいかそれより低い値である。

 

最小毒性量(LOAEL)

・「最小毒性量(LOAEL)」は動物試験等で有害な影響が認められた最低の投与量である

 

 

 

・このような数値は実験で求めます。例えば1ずつ濃度を変えて調べていけば、5のときがNOAELだとしたら、6がLOAELになります。必ずLOAELが大きくなります。

 

NOAELの方は影響が現れない投与量なので比較的確実性が高いが、LOAELは影響が現れない投与量が分からないので比較的信頼性が低い。そのため、ヒトに対する影響を推定するときは、NOAELが得られればNOAELを用い、LOAELはNOAELが得られない場合に用いる。

NOAELの方が信頼性が高いので、NOAELが得られればNOAELを用いる。LOAELはNOAELが得られない場合に用いる。

・また、ヒトに対する影響を推定するときの不確実係数(UF)の算定に当たって、LOAELを使用する場合はディフォルトで10倍(NOAELは1倍)する。

 

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不確実係数(UF)

・リスク評価のための種々のデータには、不確実な点が多く含まれます。

・例えば、“化学物質Aのヒトへの発がん性は100万人に1人の確率である” ことを、100万人のヒトをその寿命まで化学物質Aに暴露させて証明することはできません。

・そのため、ヒトの代わりにラットなどの動物で実験しますが、その結果からヒトに対する発がん性を推定するため不確実さが生じるのです。

・そこでリスク評価では、その不確実さによりリスクが小さく見積もられることがないようにUF( 不確実係数)を設定し、より安全側に立った評価をするようにしています。。

・一般的には、動物とヒトの違いである種差(×10)と、感受性の違いである個人差(×10)を考慮した100を基本の値とします。

 

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LD50とLC50

LD50(半数致死量)

Lethal Dose 50.

急性毒性を評価する指標で、1回の投与で一群の試験動物の50%が死亡すると予想される投与量

・ある一定の条件下で動物に試験物質を投与した場合に、動物の半数を死亡させる試験物質のである。

 

LC50(50% Lethal Concentration)

Lethal Concentration 50

・その気中濃度(水生生物を用いる場合は水中の濃度)でばく露した試験用生物の半数(50%)が試験期間内に死亡したときの、その濃度のこと。

・LC50 は物質の急性毒性を数値として表すことができ、毒性の強さを数値的に比較する事ができる。

・LC50が大きければ大きい程、急性毒性は低い。

 

 

変異原性、発がん性、生殖毒性

変異原性
「変異原性」とは、生物の遺伝情報に不可逆的な変化を引き起こす性質のこと。
・Ames試験(エームス試験)は変異原性試験の一種であり、がん原性試験のスクリーニング試験として位置付けている。サルモネラ菌や大腸菌が使われる。
エームス試験:
・エームス(Ames)試験とは、発がん性試験のスクリーニングテストとして行われる変異原性試験である。具体的には、In vitroで行われる培養細胞を用いた突然変異試験(MLA)のことである。
・自らアミノ酸を合成することができないサルモネラ菌や大腸菌の変異菌株を被験物質中で培養する。
・被験物質に突然変異が生じさせる効果があると、菌が突然変異を起こしてアミノ酸が合成できるようになりやすい。
・そこで、被験物質を加えた寒天培地上で培養して、突然変異を起こし増殖して形成されるコロニー数によって、被験物質が遺伝子異状を引き起こすかどうかを判定し、イニシエーション作用の強さを評価するのがAmes試験である。
・なお、安衛法による新規化学物質の有害性の調査は、一般にはAmes試験によって行われることが多い。
発がん性
「発がん性」とはヒトにがんを生じさせる性質のことである。
・「発がん性」のある物質の多くに「変異原性」が見られるため、安衛法では変異原性試験(Ames試験:エームス試験)をがん原性試験のスクリーニング試験として位置付けている。
・変異原性試験は発がん性のスクリーニングとして実施されているが、発がん性のあるものが変異原性を有するとは限らない
生殖毒性
「生殖毒性」とは、雌雄の成体の生殖機能及び受精能力に対し悪影響を及ぼす性質及び子の発生に対し悪影響を及ぼす性質をいう。
・雌雄の成体の生殖機能及び受精能力に対し悪影響を及ぼす性質及び子の発生に対し悪影響を及ぼす性質をいう。
実質安全量(VSD:Virtually Safe Doze)

・DNAに作用しない非遺伝毒性発がん物質は一般に閾値があると考えられている。これに対して、DNA反応性を持つ遺伝毒性発がん物質と評価されたものは閾値が存在しないと考えられている。

・そして、閾値があれば許容されるばく露量は閾値よりも低い値として設定する。

・閾値がなければ、使用を禁止するか、人の生涯リスクとして許容し得る確率となるように、ユニットリスクから実質安全量(VSD:Virtually Safe Doze)を計算する。

 

化学物質による「多段階発がん」

メカニズム

・生体ががんを発症するまでの段階を「多段階発がん」と呼ぶ。

・第1段階はイニシエーション」である。細胞が傷ついた場合、通常は修復されたり、細胞自体がなくなったりして問題とはならない。しかし、イニシエータ(化学物質や放射線など)によって損傷したDNAが修復されずに固定されることがある。この場合、腫瘍発生に関与する遺伝子に機能異常をもたらす。この過程がイニシエーションである。
・第2段階は「プロモーション」である。第1段階の傷ついた細胞の発がんが促進される。この原因となるものをプロモータと呼び、それ自身は発がんを引き起こさないが、イニシエータによる発がん作用を促進する。一般的には、プロモータがなくなれば、第1段階の細胞の増殖を促す作用もなくなると考えられている。

・第3段階は「プログレッション」である。第2段階で増殖している細胞に、なんらかの重要な遺伝子異常が生じると、細胞は腫瘍性変化を起こす。この段階をプログレッションという。

 

閾値
段階的な発がん物質(遺伝毒性発がん物質)の場合、従来は、閾値はないと考えられていたが、最近では閾値があるという考え方も有力になっている。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

・反復ばく露によって初めて生じる特異的な非致死性の特定標的臓器・全身毒性をいう。

刺激性と感作性

・「感作性」とは接触によりアレルギー反応を誘発する性質をいう。

刺激性

「刺激性」とは比較的短期間で完全に治癒する可逆的な損傷を与える性質をいう。

「皮膚刺激性」とは、化学品の4時間以内の皮膚接触で、皮膚に可逆的な損傷を発生させる性質をいう。

「眼刺激性」とは、眼の表面に化学品をばく露した後に生じた眼の変化で、ばく露から21日以内に完全に治癒するものを生じさせる性質をいう。

 

感作性

感作性とは接触により皮膚や呼吸器にアレルギー反応を引き起こす性質をいう。

「呼吸器感作性」とは、化学品の吸入によって気道過敏症を引き起こす性質をいう。

「皮膚感作性」とは、接触によりアレルギー反応を誘発する性質を言う。

 

がんを起こすおそれのある化学物質を労働者に製造させ、又は取り扱わせる事業者が講ずべき措置

労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針

1 対象物質へのばく露を低減するための措置

対象物質についてのリスクアセスメントを実施し、必要があればより有害性の低い物質への代替化の検討、密閉化・局所排気装置の設置・プッシュプル換気装置の設置等の工学的対策、使用条件(温度、量)の変更の検討、異常発生時の適切な対応、有効で適切な保護具の着用・管理の徹底等を行う。

2 作業環境測定の実施

6か月を超えない期間ごとに定期に作業環境測定を実施し、結果の評価を行い、その結果に基づき施設、設備、作業工程及び作業方法等の点検を行うこと。また、これらの点検結果に基づき、必要に応じて使用条件等の変更、作業工程の改善、作業方法の改善その他作業環境改善のための措置を講ずるとともに、呼吸用保護具の着用その他労働者の健康障害を予防するため必要な措置を講ずるその結果に応じて適切な措置を取ること。また、その結果は30年以上保存すること。

3 労働衛生教育の実施等

化学物質の性状・有害性、使用する業務、化学物質による健康障害・予防方法・応急措置、局所排気装置等の使用方法、作業環境状態の把握、保護具の適切な着用・管理の方法、関係法令等について集合教育によって周知する。また、作業標準書を作成し、適切な作業を行わせる。

4 労働者の把握

労働者の氏名、従事した業務の概要・期間、対象物質によって汚染された場合はその概要と講じた措置の概要を記録し、30年以上保存する。

5 有害性の周知

GHS表示、SDSの活用により有害性を周知すること。また、関係のない労働者をばく露するおそれのある場所に立ち入らせないこと。

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