電離放射線の単位
グレイ(Gy):吸収線量
・放射線がある物質を通過する時に物質が吸収したエネルギーを表し、単位は [Gy(J/kg] を用いる
・ある放射線が1 kgの物質に1 J(ジュール)のエネルギーを与えた場合、吸収線量D = 1 [Gy] となります。
シーベルト(Sv):
・シーベルト(Sv)とは、放射線が人体に当たったときに、どのような健康影響があるのかを評価するための単位です。
・放射線の人体への影響を考える場合、受けた放射線の種類、放射線を受けた部位などを考慮する必要があり、グレイ(Gy)という値だけでは健康影響を評価することが困難です。
・そこで健康影響の評価を簡単に行えるよう、吸収線量(グレイ(Gy)の値)から計算式を使ってシーベルトの値を求めます。
・シーベルトの値は、まず人体の各部位(臓器等の組織)の吸収線量(グレイ(Gy))を求め、受けた放射線の放射線の種類による影響の強さの違いを補正するための係数(放射線加重係数)(や体の部位ごと(組織加重係数)に係数をかけて求めます。
※「放射線加重係数」β線、γ線、X線は1。α線は20。
吸収線量、等価線量、実効線量
放射線に関する量
物理量
・直接計測できる量
・放射能の強さ( Bq)、吸収線量 (Gy)など
・吸収線量とは、電離放射線の照射により、単位質量の物質に付与されたエネルギーをいい、
物理的な概念である。単位としては㏉(グレイ)が用いられる。
防護量
・人体の被ばく線量であり、直接計測できない。放射線健康リスクに関する量
・実効線量 (Sv)、等価線量( Sv)、臓器吸収線量( Gy)など
・等価線量とは、放射線の種類ごとに人体が影響を受ける程度を表す
・実効線量とは、さらに人体の臓器ごとの影響を考慮したもを表す
等価線量 = 吸収線量 × 放射線加重係数
実効線量 = ∑ 吸収線量 × 放射線加重係数 × 組織加重係数
実用量
・防護量と同様な考え方だが、物理量から定義される
・1cm線量当量、周辺線量当量 (Sv)、方向性線量当量( Sv)、個人線量当量 (Sv)
・「1cm線量当量」とは、個人線量当量では、人体表面上の1cmの深さにおけるICRU人体等価物質中の線量当量である。
※ 「線量当量」とは、人体が放射線を受けたとき、その影響の度合いを表す目安となる放射線量のことで、単位はシーベルト(Sv)を用います。
カーマ(Kerma:kinetic energy released per unit mass)
・カーマ(Kerma:kinetic energy released per unit mass)とは、間接電離放射線(電荷を持たない放射線)によって単位質量の物質中で生成された2次荷電粒子の初期運動エネルギーの総和である。単位に㏉が用いられる。
吸収線量(Gy)
・吸収線量とは、電離放射線の照射により、単位質量の物質に付与されたエネルギーをいい、単位としてはGy(グレイ:Gy = J/Kg)が用いられる。
・吸収線量とは、物質に吸収された放射線のエネルギーの量のことであって、物理的な概念である。
等価線量(Sv)
・等価線量とは、放射線の種類ごとに人体が影響を受ける程度を表したものである。
・等価線量とは、人体の特定の組織・臓器が受けた吸収線量に、放射線の種類及びエネルギーに応じて定められた放射線加重係数を乗じたもので、単位としてはSv(シーベルト)が用いられる。
・吸収線量(Gy)が同じでも、放射線の種類や組織・臓器によって人体への影響(確率的影響)は違う。
・組織・臓器における吸収線量に対し、放射線の種類ごとに影響の大きさを重み付けしたものを「等価線量」といいう。
・「等価線量」は、吸収線量に放射線の種類による人体に対する影響の強さの違いを補正するための係数(放射線加重係数)を掛けて算出する。
・α 線の放射線加重係は20、対してX線は1
・皮膚の等価線量は、中性子線の場合を除き、70μm線量当量で算定される(等価線量を実際に求めることは困難なため、皮膚の表面からの距離が70µmの部位の線量当量を、皮膚の等価線量とみなすということ)。
放射線加重係数
・放射線の種類による人体に対する影響の強さの違いを補正するための係数
・α 線20に対してX線は1の値をとる
α線、重イオン :20
β線、γ線、X線 :1
(α→A級→β線、γ線、X線より強い)
実効線量(Sv)
・人体が被曝した際に生じる影響を定量的に評価するための指標である。
・実効線量は、臓器ごとの等価線量に、発がんの起こりやすさによって決められた係数(組織加重係数)を掛けて、すべての臓器を足し合わせて算出する。
・組織加重係数は合計すると1.0になる。
・実効線量は、電離放射線への被曝による確率的影響のリスクの大きさを表す指標である。
・単位としてはSv(シーベルト)が用いられる。
※ 実効線量=Σ(等価線量×組織加重係数)
内部被ばく
機序
・内部被ばくとは、体内に入った放射性物質からの放射線に被ばくすることである。
・放射性物質が体内に入る経路としては、経口摂取、吸入摂取、経皮吸収、創傷吸収、医療的な投与などがある。
・放射性物質の種類によって、ストロンチウムやセシウムのように体内で全身に分布して全身に被ばくする場合と、放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積するなどにより局所的に被ばくする場合とがある。
・体内に放射性物質を取り入れると、排泄又は放射能が減衰するまで被ばくは続く。このため、半減期の長い物質や、排泄されにくい物質は影響が大きくなる。
内部被ばく線量の測定法
・内部被ばく線量の計算に必要となる摂取量の推定には、吸入または経口摂取した放射性物質の放射能量を、体の外から測って評価する体外計測法(個人モニタリング)と、排泄する尿や便にある放射性物質の量を測る方法(バイオアッセイ法)がある。
・これらの方法で得られた結果から、放射性核種、体内挙動(残留率、排泄率)、摂取経路、経過日数などから、どのくらいの割合の放射性物質が体に残っているか、排泄物中にあるかを計算し、摂取量を求める。
・内部被ばく線量を測定する個人モニタリングは、大きく以下の2つに分かれる。
1)放射性セシウムや放射性ストロンチウムは全身に分布するため、ホールボディ・カウンタと呼ばれる装置で、全身から放射されるガンマ線を測定する。
2)放射性ヨウ素のように甲状腺に蓄積される放射性物質の場合は、甲状腺モニタと呼ばれる装置で、頸部の甲状腺から放射されるガンマ線を測する。
管理区域(放射線管理区域)
管理区域とは
・「管理区域(放射線管理区域)」とは、自然放射線レベルを超えて電離放射線にさらされる可能性があり、放射線障害防止のため、関係者以外の立ち入りを制限し、かつ作業者の被ばく管理を適正に行うことを目的とした区域のことを指す。
・原子力施設、放射性廃棄物の中間・最終貯蔵施設、電離放射線を発生させる施設(粒子加速器など)、エックス線施設、放射性同位元素等の取扱い施設(実験室や核医学)などは管理区域を設定しなければならない。
管理区域の基準
「管理区域」の基準
3月間につき1.3mSvを超えるおそれのある区域
② 放射性物質の表面密度が、表面汚染に関する限度※ の1/10を超えるおそれのある区域
※アルファ線を放出する放射性同位元素 :4Bq/cm2 、アルファ線を放出しない放射性同位元素 :40Bq/cm2
(三日月の ひみつ 1cmの 天パー→三日月:3か月、ひみつ:1.3、1cm→線量1cm、天パー:1/10)
電離放射線障害防止規則
定期自主検査
透過写真撮影用ガンマ線照射装置については、原則として、1か月以内ごとに1回、定期に、放射線源のホルダーの固定装置の異常の有無など所定の事項について自主検査を行わなければならない。
放射性物質取扱作業室内の汚染検査等
放射性物質取扱作業室内の天井、床、壁、設備等を1か月を超えない期間ごとに検査し、これらの物が所定の限度を超えて汚染されていると認められるときは、その限度以下になるまで汚染を除去しなければならない。
ろ過板
第11条 事業者は、特定エックス線装置を使用するときは、作業の性質上「軟線を利用しなければならない場合」又は「労働者が軟線を受けるおそれがない場合」を除いて、ろ過板を用いなければならない。
※ 特定エックス線装置
エックス線装置のうち定格管電圧が10キロボルト以上の装置
※ ろ過板
軟エックス線を除去し、硬エックス線にするために用いられる金属板で、被写体からの後方散乱線の低減に効果があります。
※ 軟線と硬線
X線は波長が短いほど物質を透過する力が大きいため、波長の短いX線を「硬線」、波長の長いX線を「軟線」と呼びます。
硬X線は透過力が高く、物質内部まで分析したり大気中での実験をしたりすることができます。一方、軟X線は透過力が低いため、主に物質表面を測定・観察することになり、高真空やヘリウム中での実験が必要になります
退避
放射性物質が多量にもれ、こぼれ、又は逸散した場合などの事故が発生したときは、その事故によって受ける実効線量が15ミリシーベルトを超えるおそれがない区域を除き、直ちに、労働者を退避させなければならない。
緊急作業時における被ばく限度
電離則第7条第2項(第1号)(及び同規則第42条第1項)
・放射性物質が多量にもれる事故が発生し、その事故によって受ける実効線量が15ミリシーベルトを超えるおそれのある区域が生じた場合における緊急作業を行うときは、男性の放射線業務従事者が当該緊急作業に従事する間に受ける実効線量については、100ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
放射線源の取出し等
第18条の3 事業者は、透過写真撮影用ガンマ線照射装置を使用するときは、放射線源送出し装置(操作器(ワイヤレリーズを繰り出し、及び巻き取る装置をいう。)、操作管(ワイヤレリーズを誘導する管をいう。)及び伝送管(放射線源及びワイヤレリーズを誘導する管をいう。以下同じ。)により構成され、放射線源を線源容器から繰り出し、及び線源容器に収納する装置をいう。以下同じ。)を用いなければ線源容器から放射線源を取り出してはならない。
2 事業者は、前項の規定にかかわらず、放射線装置室内で透過写真撮影用ガンマ線照射装置を使用するときは、放射線源送出し装置以外の遠隔操作装置を用いて線源容器から放射線源を取り出すことができる。
管理区域内で受けるガンマ線による外部被ばく線量の測定
電離則第8条第3項
管理区域内で受けるガンマ線による外部被ばく線量を測定する場合に、放射線業務従事者に放射線測
定器を装着させなければならない部位
男性(又は妊娠する可能性がないと診断された女性)
・原則は「男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性」にあつては胸部、「その他の女性」にあつては腹部。
・頭・頸けい部、胸・上腕部及び腹・大腿たい部のうち、最も多く放射線にさらされるおそれのある部位(これらの部位のうち最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性にあつては胸部・上腕部である場合を除く。)
・最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が頭・頸けい部、胸・上腕部及び腹・大腿たい部以外の部位であるときは、当該最も多く放射線にさらされるおそれのある部位(中性子線の場合を除く。)
女性
・原則は「男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性」にあつては胸部、「その他の女性」にあつては腹部。
・頭・頸けい部、胸・上腕部及び腹・大腿たい部のうち、最も多く放射線にさらされるおそれのある部位(これらの部位のうち最も多く放射線にさらされるおそれのある部位がその他の女性にあつては腹・大腿たい部である場合を除く。)
・最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が頭・頸けい部、胸・上腕部及び腹・大腿たい部以外の部位であるときは、当該最も多く放射線にさらされるおそれのある部位(中性子線の場合を除く。)
電離放射線従事者の被ばく限度
男性、妊娠の可能性がない女性
【電離放射線障害防止規則】
(放射線業務従事者の被ばく限度)
第4条 事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が5年間につき100ミリシーベルトを超えず、かつ、1年間につき50ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
緊急時:100mSv
(恋多きikko、 kinkiは100点
→こ;5年、いおお;100mSv、いっ;1年、こう;50mSv、kinki;緊急、100点;100mSv)
妊娠可能女性、妊娠中の女性
妊娠可能女性
実効線量を3か月5mSv以下とする
2 事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第六条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、3月間につき5ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
(巫女さん)
(三日月にごめんで日妊娠可能→三日月:3か月、ごめん:5mSv、妊娠可能)
妊娠と診断された女性
・内部被ばく(実効線量):実効線量は妊娠期間中に1mSv以下
・腹部表面に受ける外部被ばく(等価線量):等価線量は妊娠期間中に2mSv以下
(赤ちゃんは姫→赤ちゃん:妊婦、姫;1mSvまで)
線量の測定結果の確認、記録等
・事業者は、一日における外部被ばくによる線量1センチメートル線量当量について1ミリシーベルトを超えるおそれある労働者については、外部被ばくによる線量の測定の結果を毎日確認しなければならない
放射線業務従事者の受ける等価線量(眼の水晶体、皮膚)
放射線業務従事者の受ける等価線量
・眼の水晶体に受けるものについては5年間につき100ミリシーベルト及び1年間につき50ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
・皮膚に受けるものについては1年間につき500ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
電磁波の波長
・ガンマ線<エックス線<紫外線<可視光線<赤外線<マイクロ波<電波
「星がみえる赤マイク」
→ほ:放射線、し;紫外線、見える:可視光線、赤;赤外線、マイク:マイクロ波)
・波長が短いほど、エネルギーが大きい(γ線、X線といった電磁波は波長が短く、エネルギーは大きい)
放射線従事者の眼に生じる恐れがある健康障害
疾患
・放射線白内障
・放射線網膜症
放射線業務従事者の健康障害予防
健康障害を予防するための等価線量の限度
【電離放射線障害防止規則】
第五条 事業者は、放射線業務従事者の受ける等価線量が、眼の水晶体に受けるものについては5年間につき100ミリシーベルト及び1年間につき50ミリシーベルトを、皮膚に受けるものについては1年間につき500ミリシーベルトを、それぞれ超えないようにしなければならない。
放射線業務における眼の水晶体の被ばくに係る放射線障害防止対策
放射線業務における眼の水晶体の被ばくに係る放射線障害防止対策について
【健康障害を予防するための措置】
・眼を放射線から守るための遮蔽物の使用
・放射線源を遠ざける
・眼の個人用保護具の使用
・電離放射線健康診断の実施
・放射線業務従事者に対する研修・教育の実施
ALARA(As Low As Reasonably Achievable)の原則(アララの原則)
・放射線防護の基本原則のひとつ
・個人の被ばく線量や人数を、経済的及び社会的要因を考慮に入れたうえ、合理的に達成できるかぎり低く保つことである。
・必ずしも被ばくを最小化するというのではなく、社会・経済的なバランスを考慮しつつ、
可能な限り被ばくを少なくするよう努力するということである。
医療現場における放射線防護
① 照射条件の工夫
・医療現場において、放射線照射を最小限に抑えつつ、診療可能な最低限な画質となるように、出力、パルスレートや撮影枚数、照射範囲を調整すること、画像検出器と患者を可能な限り近づけること、が挙げられる。
② 散乱線の遮蔽
・患者に照射されたX線は、そのほとんどが患者の体内に吸収されてしまうが、吸収されなかった一部の放射線が受像機に到達して画像を結ぶ。しかし、一部は、患者の体内で散乱を繰り返した後に患者の体外に放出される。これが「散乱線」で、医療スタッフの被ばくの原因となる。
・散乱線は、被曝線量を増加させる原因となるため、医療現場では散乱線を遮蔽することが求められる。
・「散乱線」を遮蔽へいする方法としては、散乱線を遮蔽するシールドやカーテン、防護板の設置、遮蔽部分の隙間から散乱線が入射しないようにする、散乱線源から距離をとる、などが行われる。
③ 放射線業務従事者の行動に関する留意点
・被ばく防止対策の基本は、遮蔽する、時間を短くする、距離を離すの3点である。
時間:放射線照射時間んを最小限にとどめる
距離:放射線源、散乱線源を意識し、可能な限り距離をとること
遮蔽:適切な遮蔽を用いること
個人線量計を着用:放射線被曝量をモニタリングする
放射線業務従事者特殊健康診断
④ 個人用保護具
放射線を防護するため、必要に応じて以下の個人用防護具を使用する。
・防護めがね(軽量タイプから重量タイプのものがあり、鉛当量が異なる。)
・防護手袋
・防護衣(防護エプロン(背面が開いており腰への負担が少ない。)、防護コートなど)
・防護クロス
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