好酸球性肺炎とは
・好酸球性肺炎の定義は,血中の好酸球増加を伴う肺 浸潤影をきたし,気管支肺胞洗浄液や組織検にて肺への好酸球浸潤増加が証明されることであり,本病態 によってひきおこされる咳,発熱,呼吸困難などの臨 床症状の原因となる.
・本病態を来す疾患は多岐に渡るため,診断に難渋するケースに遭遇することもしばし ばあるが,原因と病変の分布から分類した疾患群 を想定した鑑別診断を行っていくのが診療の一助 になる.
・臨床的には前述のような呼吸器症状を呈した患者が,血液検査にて好酸球増加を,画像検査にて肺浸潤 影を来していた場合,次のステップへ進む必要がある.
・即ち悪性腫瘍や感染症などの他の呼吸器疾患との鑑別 のため気管支鏡検査にての確定診断が必要となる.
・同 検査における気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage;BAL)では,炎症細胞の細胞分画にて 25% から 40% 以上の好酸球を認めることが必要とされるが, BAL にて好酸球比率が少ない場合もしばしば経験する.その際には肺生検による組織への好酸球浸潤の証 明が有効となる .
・臨床所見や気管支鏡検査にて好酸球性肺炎と確定診断されれば,
・原因のある,即ち 2 次性好酸球性 肺炎のうち,全身性疾患として寄生虫関連,肺局所に 限局する疾患としてアレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis;ABPM),薬 剤 や 放射線などの医原性関連があり,各々寄生虫抗体検査, 中枢性の気管支拡張,粘液栓,アスペルギルス IgE,IgG 抗体検査,先行する治療歴の有無などにより診断し, 原因に基づいた治療を行う.
・一方原因のない,即ち特発性好酸球性肺炎のうち,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Eosinophilic granulomatosis with polyangiitis; EGPA)や 好酸球増加症(Hypereosinophilic syndrome;HES)に伴うものは全身性疾患として捉えられ,原疾患に対する特異的な治療を要することが多い.
急性好酸球性肺炎(Acute eosinophilic pneumonia: AEP)
・AEP は,1)男性 2)20 歳前後の発症 3)喘息の既 往なし 4)重度の呼吸不全) 5)先行する症状の数日から 数週程度で発症する 6)煙草などの煙の吸引との関係 が示唆される,といった特徴をもつ.
・特にアメリカ同 時多発テロ事件にて世界貿易センタービルが破壊され たときに生じた煙を吸引した消防士に AEP が生じた ことは,本疾患と煙の関係の存在を確証する結果と なった .
・また診断基準として,1)先行する症状の 1 カ月以内に発症するというのが CEP との違いであり, 画像所見では胸部 Xp,CT では,びまん性にすりガラ ス陰影を認め,胸水を呈することもある
慢性好酸球性肺炎(Chronic eosinophilic pneumonia;CEP)
・本疾患は,女性、 30~40 歳代の発症 、アトピー素因 (アトピーや気管支喘息の既往)、2 週~4 カ月程度の症状の先行 、非喫煙者といっ た特徴をもつ.
・咳嗽、発熱、呼吸困難、体重減少、寝汗などの症状が、数日から数カ月かけて徐々に進行することが多い。
・約25%の症例では、胸部単純X線写真において、両肺末梢側または胸膜下に非区域性の浸潤影がみられる。
・診断基準として,
1)先行する症状 の 2 週~数カ月後に発症する
2)胸部 CT にて肺浸潤影を認める
3)BAL にて 25% 以上の好酸球の証明,血中好酸球上昇,気管支鏡や外科的肺生検による好酸球 性肺炎が証明できる。
4)EGPA,HES,ABPM といった 特異的な好酸球性肺炎を除外するといった項目を満た す
・画像的には,胸部 Xp では上,中肺野, 外側優位な浸潤影を呈しており,胸部 CT では,胸膜側 優位な consolidation を呈する
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