総論
・DNAジャイレース(トポイソメラーゼ)に作用して殺菌的に効果を発揮する
・第1世代のナリジクス酸を「オールドキノロン」(第1世代キノロン)とし、第2世代(シプロフロキサシン)以降をニューキノロンと称す。
・世代が新しいほど、グラム陽性菌へスペクトラムが拡大する
・第2世代までは、主に尿路感染症や消化管感染症などのスペクトラムであったが、第3世代(レボフロキサシン)以降は肺炎球菌をカバーできるようになり、呼吸器感染症にも使用可能となったため、「レスピラトリーキノロン」とも呼ばれる。
・ニューキノロン系は緑膿菌をカバーできる唯一の経口薬であり、慎重かつ大切に使う必要がある。
・多数のニューキノロン系抗菌薬があるものの、実際にはレボフロキサシンがあれば十分に診療できる
適応とおさえるべき薬剤3種
第一選択として使用するのは「レジオネラ肺炎に対するレボフロキサシン」くらい。
シプロフロキサシン(CPFX)
レボフロキサシン(LVFX)
モキシフロキサシン(MFLX);アベロックス®
特徴
・DNAジャイレースやトポイソメラーゼに作用して殺菌的に効果を発揮する
・抗緑膿菌、抗結核菌作用あり
・前立腺移行性が良い(前立腺炎)
・主にグラム陰性桿菌のカバーが可能であり、特に腸内細菌(E.coli、 Klebsiella、 Proteus)、緑膿菌を含む医療関連感染症や免疫不全患者で問題となるSPACE(Serratia、 Pseudomonas、 Acinetobacter、 Citrobacter、 Enterobacter)をカバーする。
・レボフロキサシンなどのレスピラトリーキノロンでは、上記以外に「グラム陽性球菌(連鎖球菌、腸球菌、肺炎球菌、MSSA)」、マイコプラズマ、レジオネラ、クラミジアなどにもスペクトラムを有する。
・モキシフロキサシン(アベロックス®:第4世代)はB.fragilisのカバーあり
・抗結核作用を有しており、結核の関与を想定する場合には、単剤治療による耐性化や、中途半端な効果による診断の遅れが問題となるため、慎重に適応を考える必要がある。
・小児、妊婦には禁忌
・金属(Mg、Al、Fe、Zn、Ca)とキレートを形成しbioavailabilityが低下するため、制酸薬、下剤等と併用時には前後2時間開けて内服する必要あり。
理解しておくべきは下記の3剤:
シプロフロキサシン(第2世代)
レボフロキサシン(第3世代)
モキシフロキサシン(アベロックス®)(第4世代)
副作用
・中枢神経症状
頭痛、めまい、不眠、抑うつ、いらつき
・痙攣
NSAIDとの併用で痙攣閾値を低下させるため
・光過敏
・腱炎(特にアキレス腱断裂)
・QT延長→Torsades de pointes
カリウムチャンネル阻害により心筋の再分極を阻害するため
① シプロフロキサシン(CPFX):第2世代
・シプロキサン®(100㎎錠、200mg錠)
・1回200~300㎎を12時間毎に1日2回
・主にグラム陰性菌カバー
・緑膿菌を含むSPACE(Serratia、 Pseudomonas、 Acinetobacter、 Citrobacter、 Enterobacter)をカバー
・キノロン系の中で抗緑膿菌作用が最も強い
→本気で緑膿菌を叩かなければならない状況下で使用
・グラム陽性菌(肺炎球菌、MSSA、MRSA、腸球菌)には効かない
・肺炎球菌、嫌気性菌に効かない
② レボフロキサシン(LVFX):第3世代
スペクトラム
+HMPEK(インフルエンザ桿菌(ヘモフィルス)、モラキセラ、プロテウス、大腸菌、クレブシエラ)
+SPACE
適応
問題点
・薬物相互作用
ワーファリン(効果増強)、酸化マグネシウム(吸収阻害される)
・薬剤性QT延長症候群
・結合組織障害(大動脈瘤、弁膜症、アキレス腱断裂)
・結核の診断を遅らせてしまう
④ 第4世代:
・嫌気性菌に対するカバーもあり。
・「どうしても外来治療しなくてはならない、医療曝露のある誤嚥性肺炎、肺膿瘍、軽症~中等症の腹腔内感染症」に限定
・基本的にライマリ・ケア医が使う機会はなし
・第4世代:
モキシフロキサシン(MFLX;アベロックス®)
ラスクフロキサシン(LSFX:ラスビック®)
シタフロキサシン(STFX:グレースビット®)
ガレノキサシン(GRNX,:ジェニナック®)
モキシフロキサシン(MFLX;アベロックス®)第4世代
・嫌気性菌のカバーがあることが特徴
・1回400㎎、1日1回(内服のみ);腎機能で聴性の必要なし
・緑膿菌、嫌気性菌(B.fragilis)のカバーあり
・肝代謝
→どうしても腎機能障害がある高齢者や、在宅診療などで使わざるを得ない場合に使用
・また肝代謝のため、尿路感染症には効果なし
ラスクフロキサシン(LSFX:ラスビック®):第4世代
※ 適応は呼吸器・耳鼻咽喉科感染症のみ。それ以外の領域(泌尿器・皮膚科領域など)の感染症には適応を有していません)
※ 腎機能障害患者でも使用可
Rp)ラスクフロキサシン(LSFX:ラスビック®)(75mg)1日1回 1錠
※ 慢性期病院方式、関連施設入所者などで次善策として処方
シタフロキサシン(グレースビット®):第4世代;T病院採用あり
Rp)
シタフロキサシン(グレースビット®)(50)2T 1×M
30≦Ccr<50:1日1回50mg
10≦Ccr<30:1回50mg、48時間以上毎
ガレノキサシン(GRNX:ジェニナック®)第4世代
Rp)ジェニナック(200)
・1回2錠(400㎎) 1日1回
・体重<40kgかつ透析を受けていない重度腎機能障害(CCr<30)は1日1回 1錠(200㎎)
ラスクフロキサシン(LSFX:ラスビック®):第4世代
※ 適応は気道感染症のみ
※ 腎機能障害患者でも使用可
Rp)ラスクフロキサシン(LSFX,ラスビック®)(75mg)1日1回 1錠
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