遺伝性大腸がんについて:
・遺伝性大腸がんの中で最も頻度が高い疾患はリンチ症候群です。リンチ症候群は全大腸がんの約2〜5%(日本人では約0.7%報告もあり)、遺伝性大腸がんの中では最も頻度が高いとされています。原因はMLH1, MSH2, MSH6, PMS2などのミスマッチ修復遺伝子の変異で、常染色体優性遺伝疾患です。特徴としては、40〜50歳代の若年発症、右側結腸に好発、多発性の腫瘍発症が挙げられます。次いで家族性大腸腺腫症(FAP)がありますが、頻度としてはリンチ症候群より少ないです.
・リンチ症候群の女性に多いがんは子宮体がん(子宮内膜がん)と卵巣がんです。子宮体がんについては生涯発症リスクが約40〜60%、卵巣がんのリスクは約10〜12%とされています
・大腸内視鏡検査で100個以上の腺腫性ポリープが確認されれば、家族歴の有無にかかわらず家族性大腸腺腫症(FAP)と診断されます。
・家族性大腸腺腫症(FAP)の遺伝形式は常染色体顕性(優性)遺伝です。これは、親のどちらか(男女問わず)がもつ原因遺伝子(APC遺伝子)の病的バリアント(変異)を、子供が50%の確率で受け継ぐことを意味します。
・家族性大腸腺腫症(FAP)に対しては、大腸がんの発症を予防する目的で予防的大腸切除が一般的に適応されます。通常は20歳代前半までに手術をすすめられ、特に密生型FAPではがん化の若年化があるため10歳代での切除も検討されます。手術は大腸全摘および回腸嚢肛門吻合術が標準で、術後も残存粘膜に対する内視鏡サーベイランスが必要です。
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