【疾患概念】
・全身性毛細管漏出症候群(SCLS)は血液濃縮,低アルブミン血症を伴う可逆性の血漿の血管外漏出と血管虚脱を示すまれな疾患である。
・1960年にClarksonらにより初めて報告された疾患概念であり、「Clarkson症候群」とも呼ばれる。
・健康な中年の白人に多く、性差はないとされる。
・SCLSは血管壁の蛋白透過性亢進のため,血管内の膠質浸透圧が維持できないために,体液の血管内から間質へのシフトを引き起こし、全身の浮腫や胸腹水を生じる。
・また血管内容量の極度の減少によって血管内容量減少性ショックをきたす。
・内皮の収縮,アポトーシス,傷害,あるいはそれらの組み合わせによる一過性の内皮機能障害の一つの兆候であると信じられているが、疾患の原因は不明である。
・血管壁の蛋白透過性亢進のメカニズムは未だ不明であるが、パラプロテイン血症の合併が多く、サイトカインの急激な放出(サイトカインストーム)によっても同様の病態が観察される点から、何らかの循環液性因子の関与が示唆されている.
・約150症例のSCLSの症例が報告されているが、その非特異的な症状,兆候,高い死亡率のために,この状況はおそらく十分に認識されていない。
・しばしば,脱力,倦怠感,筋肉痛といった非特異的な前駆症状の後に,患者はショックと広汎性の浮腫を経験し,虚血性臓器不全,横紋筋融解症,コンパートメント症候群,静脈血栓塞栓症の危険にさらされる。
・ショックと浮腫はそれらが発症するのとほとんど同じくらい急速に快方に向かうが,その際患者は急速な体液の血管への再流動による急性肺浮腫による死亡の危険にさらされる。
【診断】
診断は臨床的に,そして同様の症状・兆候を引き起こす他の疾患、特に「敗血症」「アナフィラキシー」「血管浮腫」等の除外によってなされる。
【治療】
・急性発作は低灌流の後遺症を防ぐため,昇圧剤と注意深い補液置換,可能であれば浸透圧効果のための膠質溶液によって治療される。
・発作-発作間は,診療経験上,急性発作の重症度と頻度を減少させるかもしれないと示唆するテオフィリンとテルブタリンで患者は治療される。
・予後は不明であるが,初期の重篤なSCLS発作から回復した患者は10年生存率が70%以上と推定されている。
【まとめ】
・説明のつかない浮腫,進行する血液濃縮,低血圧の患者の診断に本疾患を考慮する。
参考:
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