化学品の分類および表示に関する世界調和システム (Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals:GHS)
化学物質のGHSラベルを活用した職場の安全衛生教育のための資料
GHSとは?
・「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:GHS)は、2003年7月に国連勧告として採択されたものです。
・GHSは、化学品の危険有害性を世界的に統一された一定の基準に従って分類し、絵表示等を用いて分かりやすく表示し、その結果をラベルやSDS(Safety Data Sheet:安全データシート)に反映させ、災害防止及び人の健康や環境の保護に役立てようとするものです。
・GHSは、化学品の危険有害性に関する情報を、それを扱う全ての人々に正確に伝えることによって、人の安全・健康及び環境の保護を行うことを目的としています。
GHSの内容
・GHSでは、国際的に統一された方法で化学品の危険有害性を分類する。
・分類基準に従って分類した結果を調和された方法で情報伝達するための手段として、ラベルや安全データシート(SDS)がある。
・「区分」(1~5 )は数字が小さい程、危険・有害性が高い
1(危険)⇔5(比較的安全)
・レベル分けは、有害性をAからEの5段階に分けた例に基づき行う。「タイプ」はAに近いほど重大性が大きい
・「危険有害性」には「物理化学的危険性」「健康に対する有害性」「環境に対する有害性」の3つがある。
・GHSには9種類の絵表示が決められており、危険有害性の区分に応じて表示することになっている
注意喚起語
・「注意喚起語」とは、危険有害性の重大性の程度を表し、「危険」または「警告」の文言が使用されます。
・「危険」の方が「警告」よりも危険有害性レベルが高いと考えてよい。
・GHS 分類により危険有害性クラス及び危険有害性区分が決定されない場合は、注意喚起語を記載しなくてもよい。
危険有害性情報
各危険有害性クラスおよび区分に割り当てられた文言をいいます。例えば「飲み込むと危険」など。
「危険有害性クラス」と「危険有害性区分」
「危険有害性クラス」とは
・「危険有害性クラス」とは、GHS分類の対象となる危険有害性の種類を表す項目のこと。
・「危険有害性クラス」は「①物理化学的危険性」「②健康に対する有害性」「③環境に対する有害性」 の3つに分類される。
・「物理化学的危険性」には「引火性液体」等の17項目、「健康に対する有害性」には「発がん性」等の10項目、「環境に対する有害性」には「水生環境有害性」等の2項目が設定されている。
・それぞれの危険有害性クラスについて「危険有害性区分」(区分1~5)の分類基準が定められている。区分の数字が小さい方が危険有害性の程度が大きい(区分1;危険、区分4:比較的安全)
「危険有害性区分」とは
・各「危険有害性クラス」内の判定基準の区分をいう。 例えば、経口急性毒性には5つの有害性区分(区分1~5)があり、引火性液体には4つの危険性区分(区分1~4)がある。
・それぞれの危険有害性クラスについて「危険有害性区分」(区分1~5)の分類基準が定められている。
・区分の数字が小さい方が危険有害性の程度が大きい(区分1;危険、区分4:比較的安全)
「危険有害性クラス」の詳細
① 物理化学的危険性(17項目)
爆発物
可燃性ガス
エアゾール
酸化性ガス
高圧ガス
引火性液体
可燃性固体
自己反応性化学品
自然発火性液体
自然発火性固体
自己発熱性化学品
水反応性可燃性化学品
酸化性液体
酸化性固体
有機過酸化物
金属腐食性化学品
鈍性化爆発物
② 健康に対する有害性(10項目)
急性毒性
皮膚腐食性/刺激性
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性
呼吸器感作性または皮膚感作性
生殖細胞変異原性
発がん性
生殖毒性
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
誤えん有害性
③ 環境に対する有害性(3項目)
水生環境有害性(急性/短期)
水生環境有害性(慢性/長期)
オゾン層への有害性
※ 国連GHS文書では全てHazard classと表記されていますが、日本語訳やJIS Z 7252/JIS Z 7253では物理化学的危険性の項目を「危険性クラス」、健康に対する有害性及び環境に対する有害性の項目を「有害性クラス」と示すことがあります。
危険有害性を示す絵表示
・危険有害性を示すための標章(絵表示)が9種類定められている。
どくろ【急性毒性】
・急性毒性(区分1~3)
毒性が強い
感嘆符【急性毒性、刺激性】
:急性毒性(区分4):毒性
「どくろ」よりは毒性が弱い
比較的危険有害性(又は証拠の確からしさ)の低いもの
健康有害性
・発がん性、生殖毒性、STOT等の慢性毒性等呼吸器感作性(区分1~2)
炎【可燃性】
・火災が発生するおそれ
可燃性ガス
引火性液体
可燃性固体
自己反応性化学品
など
GHS「危険有害性」の種類
GHSラベルとは
・GHSとは世界に統一されたルールに沿って、化学品を危険有害性の種類と程度により分類し、労働者や取扱者が一目でわかるように、「ラベル表示」や「SDS(安全データシート)」を提供したりするシステムです。
・要は「安全に化学品を扱えるようにラベルを統一しましょう!」ということです。
GHSラベルの記載項目(6項目)
・化学品の名称
・注意喚起語
「危険(danger)」と「警告(warning)」の2種類があり、重大な危険有害性がある場合には「危険」を用い、それよりは重大性の低い危険有害性がある場合には「警告」を用います。
・絵表示
・危険有害性情報
・注意書き
・供給者を特定する情報
化学品の供給者名、住所及び電話番号(必須)。
ファクシミリ番号及び電子メールアドレスを追加記載してもよい。
GHSの「危険有害性クラス」「危険有害性区分」
・GHSでは化学品の危険有害性を ①物理化学的危険性、②健康に対する有害性、③環境に対する有害性 という3つの「危険有害性クラス」に分類している。
・それぞれの危険有害性クラスについて「危険有害性区分」(区分1~5)の分類基準が定められている。
・危険有害性クラス及び危険有害性区分の注意喚起語として、「危険」又は「警告」がある(危険の方が警告よりも危険有害性レベルが高い)。
・危険有害性を示すための標章(絵表示)が9種類定められている。
・GHS 分類により危険有害性クラス及び危険有害性区分が決定されない場合は、注意喚起語を記載しなくてもよい(GHSの制度では、「危険有害性がない」場合と「危険有害性の情報がない」場合が等価に扱われると言われるゆえん)。
① 物理化学的危険性 (17項目)
爆発物
可燃性ガス
エアゾール
酸化性ガス
高圧ガス
引火性液体
可燃性固体
自己反応性化学品
自然発火性液体
自然発火性固体
自己発熱性化学品
水反応性可燃性化学品
酸化性液体
酸化性固体
有機過酸化物
金属腐食性化学品
鈍性化爆発物
② 健康に対する有害性( 10項目)
1.急性毒性
急性毒性は、物質の経口または経皮からの単回投与、あるいは24時間以内に与えられる複数回投与ないしは4時間の吸入ばく露によって起こる有害な影響をいう。
2.皮膚腐食性/刺激性
皮膚腐食性:
試験物質の4時間以内の皮膚接触で、皮膚に不可逆的な損傷を生じさせる性質。
不可逆的な損傷:皮膚組織の破壊(表皮から真皮に至る視認可能な壊死)として認識される。
皮膚刺激性:
試験物質の4時間以内の皮膚接触で、皮膚に可逆的な損傷を生じさせる性質。
3.眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性
重篤な損傷性:
眼に対する重篤な損傷性とは、眼の表面に試験物質を付着させることによる、眼の組織損傷の生成、あるいは重篤な視力低下で、付着後21 日以内に完全には治癒しないものをいう
眼刺激性:
眼の表面に化学品をばく露した後に生じた眼の変化で、ばく露から21日以内に完全に治癒するものを生じさせる性質。
4.呼吸器感作性または皮膚感作性
呼吸器感作性:
化学物質の吸入によって気道過敏症を引き起こす性質。
皮膚感作性:
化学物質の皮膚接触によってアレルギー反応を引き起こす性質。
皮膚感作性は、接触感作性ともいう。
5.生殖細胞変異原性
次世代に受け継がれる可能性のある突然変異を誘発する性質。
in vitro での変異原性/遺伝毒性試験、およびin vivoでの哺乳類体細胞を用いた試験も、この有害性クラスの中で分類する際に考慮される。
6.発がん性
がんを誘発し、またはその発生頻度を増大させる性質。
7.生殖毒性
雌雄の成体の生殖機能及び受精能力に対し悪影響を及ぼす性質および子の発生に対し悪影響を及ぼす性質。
8.特定標的臓器毒性(単回ばく露)
9.特定標的臓器毒性(反復ばく露)
反復ばく露によって起こる特定臓器に対する特異的な非致死性の毒性
10.誤えん有害性
誤嚥の後、化学肺炎若しくは種々の程度の肺損傷を引き起こす性質、又は死亡のような重篤な急性の作用を引き起こす性質。
③ 環境に対する有害性 (3項目)
水生環境有害性(急性/短期)、(慢性/長期)
オゾン層への有害性
曝露レベルの推定
危険性・有害性に関する情報伝達の手段「ラベルとSDS」
・化学物質の危険性・有害性は五感では感知できない場合が多く、これが化学物質による災害の大きな原因の一つになっている。化学物質を取扱う人に直接的にその危険性・有害性を知らせることが災害防止対策に重要であるが、その情報伝達手段としてラベルや安全データシート(Safety Data Sheet: SDS)が開発されてきた。
・ラベルは直接的に労働者等にわかりやすく危険性・有害性を伝えるために、また SDS は事業者間でのさらに詳しい情報伝達のための手段と位置付けられている。
・現在、化学物質の危険性・有害性に関する情報伝達は国連文書である「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」によって国際的に調和されており、日本もこれを日本産業規格に導入し、GHS に従った情報伝達が浸透している。
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