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脂肪性肝疾患(Seatotic Liver Disease:SLD)、肝線維化診断

脂肪性肝疾患(Seatotic Liver Disease:SLD)

脂肪性肝疾患という概念

・脂肪性肝疾患(Steatotic liver disease : SLD)とは、肝臓の細胞に脂肪が過剰に蓄積した状態を指す総称である。以前は「脂肪肝」としてひとくくりにされることが多かったが、近年、その原因や背景にある代謝異常をより精密に分類するため、世界的に新しい疾患概念である「SLD」という名称が使われるようになった。

・SLDの多くは、肥満や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病と深く関わっており、放置すると肝臓の炎症から肝硬変、さらには肝臓がんへと進行する可能性がある。

 

脂肪性肝疾患の病型分類

・2023年6月に、欧州肝臓学会(EASL)が提唱した新しい分類では、SLDは原因や背景となる代謝異常の有無に基づいて5つのカテゴリーに分けられています。

 

 

1. 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)

・飲酒量が少なく、かつ「心代謝系リスク因子(肥満、高血糖、高血圧、脂質異常など)」を少なくとも1つ以上持つ人の脂肪肝です。以前の「NAFLD」の大部分がここに該当します。

・生活習慣病との関わりが非常に強く、肝臓だけでなく心筋梗塞などの心血管疾患にも注意が必要。

MSALDは単純性脂肪肝(simple steatosis)と代謝機能障害関連脂肪肝(MASH)に分類される

・「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」は、肝細胞が壊されて機能しなくなり、脂肪肝から炎症や線維化を伴い肝硬変や肝がんなどに進行するリスクのあるがある。元々は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と呼ばれていたが、MASLDと同様スティグマを取り除くために名称が変更された。

MASLD患者のうち20~30%がMASHであると推定されている。

 

2. 代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)

・MASLDの条件を満たしつつ、中程度の飲酒習慣(週に男性210gから420g、女性140gから350gのエタノール摂取)がある場合の病型

・代謝異常とアルコールの「ダブルパンチ」で肝臓に負担がかかっている状態で、近年注目されているカテゴリーである。

 

3.アルコール関連肝疾患(ALD)

多量の飲酒を主な原因とする脂肪肝。

・アルコールの分解過程で生じる有害物質が肝細胞を傷つけ、炎症を引き起こします。禁酒を基本とした治療が必要となります。

 

4. 特定成因脂肪性肝疾患(Specific aetiology SLD)

・薬剤の副作用、ウイルス感染、特定の遺伝性疾患、極度の低栄養など、脂肪肝を引き起こす明確な原因が他にある場合を指す。

 

5. 成因不明脂肪性肝疾患(Cryptogenic SLD)

代謝異常の項目に該当せず、飲酒習慣もなく、他の原因も特定できない脂肪肝です。肝臓以外の要因を一つずつ「否定(特定の病気ではないと判断すること)」していく精密な診察が必要となります。

また、炎症を伴う進行性の状態は、MASH(代謝機能障害関連脂肪性肝炎)と呼ばれ、より厳重な管理が求められます。肝臓の状態(予後-将来的な病気の見通し)を予測するためには、単なる脂肪の蓄積だけでなく、炎症や線維化の程度を評価することが大切です。

 

 

MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)

MASH(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis:代謝機能障害関連脂肪肝炎)について:

・肥満や糖尿病などのメタボリックシンドロームが原因で肝臓に脂肪が蓄積し、さらに肝臓に炎症や損傷が起きている状態を指す。

・以前は「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と呼ばれていたが、近年「MASH」に名称が変更された。

・進行すると肝硬変や肝臓がんへ進むリスクがあり、健康診断での肝機能検査や腹部超音波検査などで早期発見することが重要です。

・MASHには遺伝子異常が関与しています。特に、転写因子Egr2が単球から線維化マクロファージへの分化を促進することでMASHの肝線維化進展に重要な役割を果たしていることが分かっています。また、PNPLA3遺伝子多型などの遺伝的要因も、MASHの発症や肝線維化進展、肝疾患関連イベントに関与していることが示されており、日本人ではPNPLA3リスクアレルが比較的多く、病態や予後に強く影響しています。つまり、MASHの病態形成や進展には複数の遺伝子異常が関連しており、これらの遺伝子多型の研究が今後の治療やリスク評価に重要な意義を持っています。

肝線維化を評価する血液バイオマーカーとして、M2BPGi、FIB-4、M2BPGiなどがある。

・肝生検の代替としてFibroScanなどの非侵襲的検査がある。

 

肝線維化診断に用いられる検査

侵襲的検査

肝生検(ゴールドスタンダード)

 

非侵襲的検査

FIB-4 index

MASHLD fibrosis csore(MFS)

ヒアルロン酸(HA)

IV型コラーゲン

Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)

超音波エラストグラフィ

MRエラストグラフィ

 

 

ヒアルロン酸(HA)
ヒアルロン酸は、体内のさまざまな組織に広く存在する成分で、肝臓での炎症や繊維化が進むとその産生が増加し、血中濃度が上昇します。

肝線維化が進行すると、肝臓内でヒアルロン酸の産生が増加し、肝臓での分解能力が低下するため、血中濃度が上昇します。
ヒアルロン酸の血中濃度の上昇は、肝硬変や非肝硬変の鑑別に有用であり、炎症性疾患では炎症の修復過程でヒアルロン酸の産生が活性化されることもあります。

IV型コラーゲン
IV型コラーゲンは、肝臓の血管や胆管を構成する主要なタンパク質で、肝臓の損傷に応じて産生され、修復に寄与します。血中濃度の上昇は、肝線維化の進行を示します。

IV型コラーゲン7Sは、IV型コラーゲンの亜種であり、その血中濃度の上昇も肝線維化の指標とされます。

III型プロコラーゲンN末端ペプチド(P-III-P)
III型プロコラーゲンN末端ペプチド(P-III-P)は、コラーゲンの生成過程で産生される物質で、肝線維化の進行度を示す指標として用いられます。

この数値の上昇は、コラーゲンの過剰な生成を反映し、肝臓だけでなく腎臓の疾患などでも見られます。

M2BPGi
他のマーカーと異なり、M2BPGiは肝線維化に特異的な変化を示す新たなマーカーで、高い精度で肝線維化を評価できます。また、将来の肝細胞癌のリスクも予測可能です。

肝繊維化マーカーの参考基準値
・肝胆膵 70巻増刊号、2015
・久野 敦;医学のあゆみ、249(8)、2014

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