疾患
・1964年にSweetによって初めて独立疾患として報告されたもので,いまだ原因不明の急性炎症性疾患である。
・病因は不明だが、「特発性」の症例、骨髄異形成症候群を代表とする「造血器悪性腫瘍に合併する症例」、「薬剤誘発性の症例」に分けられる
・急性熱性好中球性皮膚症(acute febrile neutrophilic dermatosis)のひとつ(他にベーチェット病、壊疽性膿皮症、角層下嚢胞症など)
・発熱,末梢血好中球増多,顔面・頸部・四肢に好発する有痛性隆起性紅斑、結節、境界明瞭な浮腫性紅斑を示す
・病理組織学的に真皮に密な好中球浸潤を認める疾患と定義される。
・中年者に好発し、前駆症状として発熱、咽頭痛、筋痛、関節痛などを認め、その後に皮疹が出現することが多い
・項頚部、前腕、手背などに、径10~25mm大、境界明瞭、有痛性、鮮紅色~暗紅色の小紅斑が多発する。時に無菌性小膿疱を伴う
・病態から,特発性のほか,感染症や炎症性腸疾患,妊娠に伴う「古典型」,血液系あるいは固型悪性腫瘍に伴う「悪性腫瘍随伴型」,G-CSFやボルテゾミブなどの薬剤使用に伴う「薬剤誘発型」にわけられる。
・好中球が皮膚以外の臓器にも浸潤し、多彩な症状を呈することがある
診断
・定まった診断基準はない
・病理所見として、真皮上層から中層の血管周囲を中心に、好中球が稠密に浸潤する。壊死性血管炎は伴わない
・血液検査では好中球を中心とした著明な白血球増多と炎症所見の亢進がみられるが、特異的なものはない
・わが国では,①発熱,②先行する上気道感染症または基礎疾患の存在,③好中球を主体とする末梢血白血球増多,④CRP陽性または血沈亢進,のうち2つ以上陽性で診断する溝口の基準が広く知られている。
・皮膚に好中球浸潤を認める疾患として持久性隆起性紅斑,壊疽性膿皮症,蕁麻疹様血管炎,結節性紅斑,ベーチェット病,さらに多型紅斑や皮膚エリテマトーデスなどを鑑別する必要がある。
・Sweet病では,ベーチェット病にみられる血管炎や血栓を伴う皮膚症状や典型的なぶどう膜炎はみられず、強膜炎、結膜炎が多い
・ベーチェット病のHLA-B51は陰性、Cw1またはHLA-B54陽性であることも鑑別の一助となる。
・脳炎や髄膜炎を伴うことがある
・臨床的にSweet病を疑えば,皮膚生検にて真皮の好中球浸潤を確認し,血液検査にて炎症所見を確認するとともに,薬剤歴や基礎疾患,合併症を検索し,類縁疾患を鑑別する。必要に応じて血液内科,消化器内科,婦人科や眼科などに精査を依頼する。関連ありそうな薬剤は中止し,見出された疾患によってはその治療を優先するが,並行して必要な抗炎症療法を行う。通常,中等量の副腎皮質ステロイド内服を行うが,基礎疾患や経過によってヨウ化カリウムやジアフェニルスルホン,コルヒチンの内服も考慮する。また,いったん軽快しても再燃を繰り返す例が多く,再発予防のための維持療法も考慮する。
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