疾患
・ 全身性浮腫 / 胸水 / 腹水(Anasarca)
・ 発熱(Fever)
・ 骨髄細網線維化(Reticulin fibrosis)
・ 臓器腫大 / 肝腫大 / 脾腫/リンパ節腫大(Organomegaly)
を呈する原因不明の症候群で、各頭文字を取って「TAFRO症候群」といわれる。
概要
・TAFRO症候群は、明らかな原因なしに急性あるいは亜急性に、発熱、全身性浮腫(胸水・腹水貯留)、血小板減少を来し、腎障害、貧血、臓器腫大(肝脾腫、リンパ節腫大)などを伴う全身炎症性疾患である。
・既知の単一疾患に該当せず、2010 年高井らにより Thrombocytopenia(血小板減少症)、Anasarca(全身浮腫、胸腹水)、Fever(発熱、全身炎症),、Reticulin fibrosis(骨髄の細網線維化、骨髄巨核球増多)、 Organomegaly(臓器腫大;肝脾腫、リンパ節腫大)より 「TAFRO 症候群(仮称)」として報告され、その後に類似例の報告が相次いでいる。
・原因は不明。発症が比較的急性であるため、何らかの感染症が原因として推察されている。
・リンパ節生検の病理はCastleman病様の像を呈し、臨床像も一部は多中心性Castleman病に重なるが、本疾患特有の所見も多く、異同に関しては現時点で不明である。
・経過が非常に早く、より胸腹水貯留や全身浮腫が目立ち、進行性の腎障害が見られやすく、IgGは著増していないものの、血小板が著減していることが多い。
・ステロイドや cyclosporin A などの免疫抑制剤、tocilizumab, rituximab などの有効例が報告されるも、様々な治療に抵抗性の症例も存在し、全身症状の悪化が急速なため、迅速かつ的確な診断と治療が必要な疾患である。
疫学
・全国で 150〜200 人程度の有病者数と推計。
・今までの後方視登録のデータより TAFRO 症候群は、多中心性 Castleman 病に比べかなり稀である事が推測され、多中心性 Castleman 病の患者数が 1,500〜1,600 人程度と推測されている事より、150〜200 人程度と推測している。
症状
・発熱(原因不明の37.5℃以上の発熱)
・全身性浮腫(胸水・腹水貯留)
・血小板減少(<10万/uL)
・腎障害
・貧血
・臓器腫大(肝脾腫、リンパ節腫大)
・腹痛
・腎不全、肝胆道系炎症など
※ 早期に診断・治療しなければ、血小板減少や胸腹水貯留が急激に進行して死に至ることもある、
※ 急速に増悪する全身性浮腫、血小板減少、腎機能障害、リンパ節腫脹、炎症所見をみつけたらTAFRO症候群を鑑別に入れる
血液検査
・血小板減少(10万以下)
・ALP上昇(アイソザイムは肝臓)
↔ 血清 LDHが増加することは稀である。
・腎機能障害
・炎症反応上昇(CRP 2mg/dL以上)
画像検査
・軽度の肝脾腫、リンパ節腫大
肝牌腫はCT画像で評価できる程度のものが多く、巨 大なものは悪性リンパ腫などを疑う所見である。
リンパ節腫大は直径 1.5cm未満程度のものが多く,大きなリンパ節病変は悪性リンパ腫などを疑う所見である。
・胸腹水貯留
診断基準
2015年TAFRO症候群診断基準と重症度分類 (平成27年度厚生労働科学研究 難治性疾患政策研究事業新規疾患 TAFRO症候群の確立のための研究)
「必須項目3項目+小項目2項目以上」を満たす場合TAFRO症候群と診断する。
ただし、悪性リンパ腫などの悪性疾患を除外する必要があり、生検可能なリンパ節がある場合は生検するべきである。
1.必須項目
①体液貯留(胸・腹水、全身性浮腫)
②血小板減少(治療開始前最低値<10万/uL)
③原因不明の発熱(37.5度以上)または 炎症反応陽性(CRP 2 mg/dL 以上)
2.小項目
①リンパ節生検でCastleman病様所見
②骨髄線維化(細網線維化または骨髄巨核球増多)
③軽度の臓器腫大(肝・脾腫、リンパ節腫大)
④進行性の腎障害
3.除外すべき疾患
①悪性腫瘍:悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、中皮腫など
②自己免疫性疾患:全身性エリテマトーデス、ANCA関連血管炎など
③感染症:抗酸菌感染、リケッチア感染、ライム病、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)など
④POEMS症候群
⑤IgG4関連疾患
⑥肝硬変
⑦血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)/溶血性尿毒症症候群(HUS)
参考事項
・TAFRO症候群では、多クローン性高ガンマグロブリン血症は稀である
(IgGが 3,000mg/dlを超えることは稀である)。
・明らかなMタンパクは認めない。
・血清LDHが増加する事は稀である。
・血清ALPは高値を呈する例が多い。
・肝脾腫は通常は軽度でCT画像でわかる程度のものが多く、巨大なものは悪性リンパ腫などを疑う所見である。
・リンパ節腫大は直径1.5cm未満程度のものが多く、大きなリンパ節病変は悪性リンパ腫などを疑う所見である。
・現時点ではキャッスルマン病や免疫性血小板減少症(ITP)は「除外すべき疾患」としない。
治療
・ステロイド大量療法(1mg/kg/日)
・末ロイドパルス療法
・Tocilizumab(IL-6阻害薬)
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