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不整脈原性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy:ARVC)

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疾患

・不整脈原性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy:ARVC)は、病理学的に右室主体の心筋の脂肪浸潤と線維化を認め、右室の拡大と機能低下および右室起源の心室性不整脈を特徴とする疾患である。進行すれば,左室への脂肪浸潤も認める。

・ARVCの30~50%程度は家族性に発症(常染色体優性遺伝)し、心筋細胞間の接着に関与するデスモゾーム関連遺伝子や筋小胞体でのカルシウムハンドリングを調整するリアノジン受容体遺伝子の異常などがの異常などが知られている。

若年者における突然死の原因としても知られる

・発症頻度は1,000人~ 5,000人に1人と言われており、けっして稀な疾患ではない。

・病初期には無症状で経過し、心陰影の拡大などの前兆なく、心室頻拍や心室細動を起こすことにより発見されることが多い。

・本邦における持続性心室頻拍をきたす原疾患の約10%を占める。

・ブルガダ症候群(参照)が夜間の突然死の原因となるのに対して、ARVCでは運動中に重症不整脈が発生することが多く、若年者やアスリートが心臓突然死を起こす原因の1つとされる。

・左心室の心筋症と比べて難儀なのは、病初期には病変が左心室に及ばず心機能が保たれているので、この疾患に気づかず運動を続けて初発症状が突然死ということもあり得ることである。

・ARVCを日常の心電図検査(健康診断など)で発見することは、若年者の突然死の予防につながると考えられる。

 

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心電図所見

・ARVCの50 ~ 90%において、12誘導心電図に何らかの異常所見を示すと言われている。

・ARVCは右心室に病変があるので、12誘導心電図では右心室側の誘導に異常所見が出現する。

具体的な所見

V1~ V3誘導における
ε(イプシロン)波(QRSの後ろに現れるノッチで、右心室内の伝導遅延を反映)

・Delayed S-wave upstroke

・陰性T波(右脚ブロックなし)

・QRS幅>110ms

・完全または不完全右脚ブロック

 

 

参照(このサイトより引用):http://www.mochida.co.jp/dis/guidance/electrocardiogram/a86.html

 

 

・特徴的なのはイプシロン波である。イプシロン波はQRSの後ろに現れるノッチ
で、右心室内の伝導遅延を反映している(約30%に検出)

・また断片化したイプシロン波もあり、その場合は細波のような細かいノッチ(ギザギザ)がQRSの後に続く。

・ARVCにより誘発された心室期外収縮は右心室起源であるため、左脚ブロック型の心室頻拍になる。

参照(このサイトより引用):https://litfl.com/arrhythmogenic-right-ventricular-dysplasia-arvd/

 

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診断

・ARVC疑いに行う精密検査としては、心エコーでは見逃しやすく、心臓MRIまたは右室造影の方が適切であると言われている。

・心エコーにて右室の拡張、瘤形成、運動低下

・病理組織で右室心筋の線維化、脂肪細胞浸潤を認める

 

治療

・右心不全に対する利尿薬を中心とした薬物治療

・VTに対する薬物治療(アミオダロンなどのⅢ群抗不整脈薬が中心)および非薬物治療(カテーテルアブレーションやICD植え込み)

・心肺蘇生例や血行動態が不安定なVT、失神の既往例などでは、年間不整脈リスクが8~10%と高く、ICD植え込みが必須と考えられている。

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