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ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre Syndrome,;GBS)

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疾患

・明らかな原因は不明

・上気道、腸管に由来する感染症、外科的処置、ワクチン接種などに伴って起こる自己免疫性の多発根神経炎

・約60%の症例で血清中に末梢神経細胞膜表面の構成成分である糖脂質(ガングリオシド)に対する抗体(抗ガングリオシド抗体)が検出される

・末梢神経のうち軸索が障害されるタイプ(軸索型)と髄鞘が障害されるタイプ(脱髄型)に分類される(本邦では軸索型が多い)

・約70%の症例で先行感染が4週間前に認められる(6割が上気道感染、2割が消化器感染)

・ワクチン接種から5日~3週間後に始まる場合もある

・同定可能であった病原体はCampylobacter jejuniが最多

・それ以外ではCMV、EBV、マイコプラズマ、COVID-19など

・免疫チェックポイント阻害薬の有害作用として,ギラン-バレー症候群に類似する症候群がある。

・末梢神経の

・治療をしなくても徐々に改善し始めて約半年ほどで多くは改善するが、1年後も歩行に介助を要する方が16%存在する。

ギラン-バレー症候群が疑われる場合は入院させ,電気診断検査(神経伝導検査および筋電図検査),髄液検査,ならびに6~8時間毎の努力肺活量測定によるモニタリングを行うべきである。

 

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症状

・典型例では上気道感染や腸炎などの先行感染があり、その数日~数週間後に手掌や足底のびりびり感で始まり、同時または少し遅れて脱力を認める

・比較的左右対称性で進行性の弛緩性運動麻痺、深部腱反射低下ないし消失、やや軽い感覚障害を認める

・筋力低下は近位からも遠位からも発症するが、2週間後には遠位筋でより顕著となる

・重症になるほど脳神経麻痺(顔面神経麻痺(最多)、球麻痺(嚥下障害)、構音障害、外眼筋麻痺(複視))を伴うことがある

・神経症状が出てから2週から4週で症状はピークになる単相性経過をたどることが多い

・重症例では四肢麻痺が進んで歩行に介助を要し、10数%の患者で呼吸筋にも麻痺が及んで人工呼吸器を装着することがある。

・死亡例も数%認める

・頻脈、徐脈、起立性低血圧、膀胱直腸障害といった自律神経障害を伴うこともある(65%)。

 

ギランバレー症候群の亜型

1)Fisher症候群

・急性の経過で「外眼筋麻痺、運動失調、腱反射消失」を認める

 

2)ビッカースタッフ型脳幹脳炎

・意識障害、外眼筋麻痺、運動失調、顔面神経麻痺、構音障害、筋力低下

 

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検査・診断

抗ガングリオシド抗体(抗糖脂質抗体)

・約60%で陽性

・末梢神経の細胞膜表面の構成成分である糖脂質(ガングリオシド)に対する抗体

 

電気診断検査

・神経伝導速度の遅延および節性脱髄を示す所見が検出される。

 

髄液検査

蛋白細胞解離

・蛋白が増加するにもかかわらず白血球数は正常を認めること

・この所見は最初の1週間はみられないこともあり,また10%の患者では出現しない。

 

画像検査

・まれに頸髄圧迫、特に多発神経障害(反射低下の原因または寄与因子となる)が共存する場合および延髄障害が著明でない場合―がギラン-バレー症候群に類似することがあり,そのような症例では,MRIを施行すべきである。

 

 

診断基準National Institute of Neurological Disorders and Stroke(NINDS)

必要条件

1)進行性の運動麻痺が四肢のうち二肢以上に存在し、程度は軽度から完全麻痺まで、体幹筋、球部筋、顔面筋、外眼筋が侵されることもある。

2)深部腱反射の消失。全身性が原則である。

診断を支持する所見

1)臨床所見 重要度順に

進行性(単相性)

比較的対称性

軽度な知覚症状

脳神経障害:顔面神経が約50%。舌・嚥下・外眼筋支配神経も障害される

改善は進行停止後2~4週間以内に始まる

自律神経症候

神経症候発現のときは発熱がない

 

2)脳脊髄液

蛋白細胞解離

・蛋白量:発病1週間後から上昇
・細胞数:10/mm3以下、単核細胞

 

3)電気生理学的所見

・80%以上の症例が神経伝達を障害され、神経伝導速度の遅延または伝導ブロックを示す。

・伝導速度は正常の60%以下となるが病変は散在性ですべての神経が侵されるわけではない

 

診断を疑わせる所見

・高度かつ持続性の非対称性麻痺

・持続性の直腸膀胱障害

・発症時の直腸膀胱障害

・50/mm3以上の髄液中の単核細胞数

・髄液中の多核白血球

・明瞭な感覚障害レベル

 

診断を除外する条件、鑑別診断

・n-ヘキサン、メチルn-ブチルケトンなどの揮発性有機溶剤

・急性間欠性ポルフィリン症

・ジフテリアの感染症

・鉛ニューロパチーの臨床所見

・ポリオ

・ボツリヌス中毒

・中毒性ニューロパチー(例:ニトロフラントイン、ダプソン、有機リン化合物)

などとの鑑別。

 

予後予測スケール:EGOS(Erasmus GBS outcome score)

・入院2週間後の状態から6ヶ月後の機能予後を推定するために提唱

・年齢、下痢を4週間以内に認める、2週間後の時点のGBS disability scoreからスコアリングを行う。

・EGOSではGBS disability scoreの評価が入院2週間後であり、来院直後の状態ではないため注意が必要。

・このため受診直後の状態で予後評価が出来ない難点があったため、2011年にmEGOSが提唱された。

・ mEGOS は年齢、先行する下痢、Medical Research Council(MRC)sum score(四肢 12 筋の筋力を 0(筋収縮なし)~5(正常)で評価して合計点を出す)を用いて、

入院時(9 点満点)と入院 7 日目(12 点満点)に評価を行い,4 週間後・3 ヶ月後・6 ヶ月後に独歩不能の可能性を割合で示す(Table 2)

・入院時の mEGOS が 7 点以上の場合 、6 ヶ月後に独歩不能の割合は30%以上。

入院7日目のmEGOS が10点以上の場合は40%以上と予測できる.

 

Modified Erasmus GBS Outcome Score (mEGOS)

① 発症年齢(歳)

≤ 40   0
41~60  1
60<   2

② 4週以内の先行する下痢

無 0
有 1

 

③ Medical Research Council(MRC)sum score

入院時  入院 7 日目
51~60    0    0
41~50    2    3
31~40    4    6
0  ~30    6    9

左右 6 筋、計12筋毎の筋力(0~5)の合計(60点満点)
肩関節外転 肘関節屈曲 手関節背屈 股関節屈曲 膝関節伸展 足関節背屈

 

治療

・集中的な支持療法

・免疫グロブリン静注療法(IVIG)または血漿交換

・ギラン-バレー症候群は医学的な緊急事態であり,生命機能の継続的なモニタリングとサポートが必要で,これらは典型的には集中治療室で行われる。

・必要に応じて呼吸補助が行えるよう,努力肺活量を頻回に測定すべきである

肺活量が15mL/kg未満であれば,気管挿管が適応となる。首を曲げて枕から頭を起こすことができないというのは,もう1つの危険徴候である;これは,横隔神経(横隔膜)の減弱と同時にしばしば生じる。

・経口水分補給が困難であれば,輸液を行い,少なくとも1~1.5L/日の尿量を維持できるようにする。

・外傷および床上安静による圧力から四肢を保護すべきである。

・低分子ヘパリン(LMWH)は,寝たきりの患者の深部静脈血栓症を予防するのに役立つ。いくつかのランダム化試験およびメタアナリシスでは,LMWHは低用量の未分画ヘパリン(典型的には5000単位を1日2回投与)より効果的であり,出血リスクは同等であると報告されている。

・早期から免疫グロブリン2g/kgを1~2日かけて静注するか,あるいはより速度を落として400mg/kg,静注,1日1回で5日間投与するのが選択すべき治療法であり,発症から最長1カ月間にわたって,いくらかの効果が得られる。

・血漿交換は早期に行えば有用であり,IVIGが無効の場合に用いられる。血漿交換は比較的安全であり,疾患の経過および入院期間を短縮し,死亡リスクおよび永続的な麻痺の発生率を低減する。血漿交換は以前に投与されたあらゆるIVIGを除去し,その効果を打ち消すため,IVIG投与中または投与直後に血漿交換を行うべきではない。IVIG投与中止後少なくとも2~3日待つことが推奨される。

 

リハビリテーション

・温熱療法は疼痛の軽減に役立ち,理学療法の早期開始を可能にする。

・不動状態は強直および拘縮の原因となりうるため,回避すべきである。

全可動域にわたる関節の他動運動を速やかに開始し,急性症状が治まったところで自動運動を開始すべきである

急性期

※筋力増強訓練は避けること

・体位変換

・良肢位(機能肢位)保持

・関節可動域訓練

・胸郭ストレッチ

・排痰訓練

 

回復期

※症状の進行が止まったら、筋力増強訓練を開始する

※オーバーユースにならないように注意する

・低負荷、多数回反復訓練

 

 

 

 

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