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低脂血症:D2判定

低脂血症の定義

・TC<120mg/dL

・LDL-C<70mg/dL

・TG<30mg/dL

・HDL-C<40mg/d

 

疾患

・低脂血症は、他の疾患の続発性(二次性)低脂血症を示す場合と原発性低脂血症に分類される。

・原発性低脂血症は、遺伝子の変化が原因となって発症する遺伝疾患である

・健診で脂質低値を認めた場合、まず

① 本当に低値なのかの確認

② 二次性の原因を検索

③ 原発性の脂質代謝異常を疑う所見がないかを判断する

という流れで対応します。

・重要なのは、低脂血症そのものを治療するというよりも、背景にある甲状腺機能亢進症、低栄養、肝疾患、吸収不良などを見逃さないことです。

 

健診で異常を低脂質血症を認めた場合の流れ

1. まず、どの脂質が低いかを確認する

・健診では、総コレステロール(TC)、LDL-C、HDL-C、中性脂肪(TG)が測定されます。項目ごとに考え方が異なります。

項目と低値の目安 臨床的な考え方:
総コレステロール(TC): 低栄養、肝疾患、甲状腺機能亢進症などを検討
LDL-C ::二次性の原因、体質、脂質低下薬の影響などを検討
HDL-C :低HDL-C単独は、一般的な低脂血症とは分けて評価
TG: 低栄養、低摂取、甲状腺機能亢進症、体質などを検討

2. 問診・診察で二次性の原因を探す

・低値が持続している場合や、以前より明らかに低下した場合は、以下を確認します。特に急に脂質が低下した場合は、体質と決めつけず原因検索を優先します。

原因と確認するポイント
甲状腺機能亢進症・甲状腺中毒症:体重減少、動悸、頻脈、発汗、手指振戦
低栄養・摂取不足 :体重減少、食欲低下、食事制限、フレイル
吸収不良・消化器疾患 :慢性下痢、脂肪便、腹痛、消化管手術歴
肝疾患 :黄疸、肝機能異常、慢性肝疾患の既往
慢性感染症・悪性疾患など: 発熱、寝汗、原因不明の体重減少、倦怠感
薬剤・サプリメント :スタチン、エゼチミブ、その他の脂質低下薬、甲状腺ホルモン製剤など

※なお、ネフローゼ症候群や甲状腺機能低下症は一般に脂質を上昇させる方向に働くため、低脂血症の典型的な原因とはいえません。ただし、併存疾患の評価では病歴に応じて考慮します。

3. 初期検査は何を行うか

基本検査セット
① 脂質プロファイルの再確認

TC、LDL-C、HDL-C、TG。過去の健診結果と比較し、必要に応じて再検します。

② 甲状腺機能

TSH、FT4。甲状腺機能亢進症が疑われる場合は、必要に応じてFT3、TRAbなどを追加します。コレステロール低値はバセドウ病の診断を考えるきっかけになります。

③ 肝機能・栄養状態

AST、ALT、ALP、γ-GTP、総ビリルビン、アルブミン、血算など。体重減少や食事摂取不良があれば、腎機能、炎症反応なども病歴に応じて追加します。

④ 症状に応じた追加検査

慢性下痢があれば吸収不良や消化器疾患、原因不明の体重減少があれば感染症・悪性疾患などを検討します。全例に腫瘍マーカーやCTを行う必要はありません。

 

4. 検査結果に応じた対応

A. 軽度の低値で、無症状・体重安定:

過去から同程度の値で、他の検査にも異常がなければ、体質や食事内容による可能性があります。経過観察を基本とし、低値だけを理由に薬物治療や過剰な精査を行う必要はありません。

B. 低値に加え、動悸・体重減少・発汗などがある:

甲状腺中毒症を優先して評価します。TSH低値、FT4またはFT3高値であれば、バセドウ病、無痛性甲状腺炎などの鑑別に進みます。頻脈が強い場合や全身状態が悪い場合は、迅速な診療が必要です。

C. 著明な低値、急激な低下、原因不明の体重減少:

肝疾患、低栄養、吸収不良、慢性疾患などを評価します。十分な食事摂取があるのにLDL-Cが極端に低い場合や、若年時から著しい低値が持続している場合には、原発性の脂質代謝異常も考慮します。

5. 二次性の原因がない場合(原発性低脂血症を疑う場合)→専門医へ紹介

・二次性の原因がなく、著明な低値が持続する場合には、まれであるが遺伝性疾患を検討します。

・この場合は専門医への紹介を検討します。一般的な健診で軽度の低値を認めただけで、遺伝学的検査まで行う必要はありません。

疾患例

– 家族性低βリポ蛋白血症:LDL-CやアポBが著しく低い。家族にも同様の低値がある場合に疑います。
– 無βリポ蛋白血症:非常に低いLDL-C・アポBに加え、脂肪吸収不良、脂溶性ビタミン欠乏、神経症状などを伴うことがあります。
– 家族性低トリグリセリド血症など:TG低値が著明で、他の原因が明らかでない場合に検討します。

まとめ

・健診で低脂血症を認めた際、見逃したくないのは甲状腺機能亢進症・甲状腺中毒症。

・一方、軽度の低値で無症状、体重も安定し、他の検査に異常がなければ、必ずしも精査や治療が必要なわけではありません。

・低HDL-C単独は、TCやLDL-Cが低い場合とは分けて評価してください。

 

 

発見時の対応

・健康診断でLDL-C低値が指摘された場合は、まずは続発性低LDL-C血症の原因となる疾病の可能性がないか調べる

・腹部超音波で脂肪肝の有無、血液検査で肝機能障害がないかを確認する

・該当がなければ原発性低LDL-C血症を疑って近縁の血縁の方にLDL-C低値の方がいないかを確認する

 

 

疾患各論

1)原発性低LDL-C血症

・体調不良や症状がなく、極端なダイエット・偏食もなくLDL-Cが低値の場合は原発性低LDL-C血症が疑われれる

原発性低LDL-C血症を示す疾患

・無βリポ蛋白血症

・家族性低βリポ蛋白血症

・カイロミクロン停滞病

・Smith-Lemli-Opitz症候群

※ 家族性低βリポ蛋白血症以外は本邦では非常に稀で、発育障害や奇形の合併などを伴い、乳幼児期に発症する。成人で症状がなく、健康診断でたまたまLDL-C低値が指摘される場合は、ほとんど家族性低βリポ蛋白血症である

 

2)続発性低LDL-C血症

疾患

・原疾患がある程度進行した状態であり、それに伴う症状や検査異常がある場合がほとんどである

 

原因疾患

・肝硬変など重症肝疾患

・バセドウ病など甲状腺機能亢進症

・アジソン病など副腎不全

・吸収不良

・栄養不良

・悪性腫瘍

・慢性感染症

・慢性炎症性疾患

・Gaucher病

・薬剤(ニコチン酸誘導体)

 

 

 

低TG血症

疾患

・TGは食事の影響を最も受けやすい脂質で、低TG血症はまず栄養障害や吸収不良を考える。

・続発性のことが多く、甲状腺機能亢進症、肝硬変ではコレステロールと共にTGの低下が起こる。

 

対応

・低TG血症に対しては、原疾患の治療を行い、TGを上げるための治療は不要。

・低糖質ダイエットを行なっている人でTG低値になることがある。糖質制限により体のエネルギーが足りなくなるとTGをエネルギー源として消費するため低TGとなる。過度なダイエットに注意する。

 

低HDLコレステロール血症(低HDL-C血症)<40mg/dL

疾患

・HDLは小腸や肝臓で作られ、全身の余剰なコレステロールの回収を行う。HDLが回収したコレステロールは肝臓で回収、再利用される。

・したがってHDLが低下すると全身で余ったコレステロールが回収できなくなり、動脈硬化の原因となる。

・HDL-Cの低下は狭心症・心筋梗塞などの冠動脈疾患、脳梗塞の発症のリスクを高めることが判明している

 

原因

・低HDL-C血症には、遺伝性のものとしてTanigier病、LCAT欠損症、魚眼病、アポ蛋白A-Ⅰ欠損症、アポ蛋白A-Ⅰ/C-Ⅲ欠損症、アポ蛋白A-Ⅰ/C-Ⅲ/A-Ⅳ欠損症、家族性低HDL-C血症があるが、非常に稀。続発性低HDL-C血症がほとんど。

・続発性低HDL-C血症の原因は、喫煙、肥満、食事、運動不足などの生活習慣によるものが主である

・その他、2型糖尿病、慢性腎不全、Gaucher病、薬剤(蛋白同化ステロイド、β遮断薬、利尿剤、プロブコール)がある。

 

対応

・高LDL-C血症や高TG血症に対しての内服薬が低HDL-C血症もわずかに改善させる効果もあるが、低HDL-C血症の改善が主目的の内服薬はない。

・低HDL-C血症の改善には、「適正体重への是正」「有酸素運動」「食物繊維の摂取」「禁煙」「高TG血症の是正」が有効と言われている。

・

 

食事

・食事ではトランス脂肪酸の摂取を控える。

・トランス脂肪酸の代表はマーガリン。植物油の高温長時間調理やマイクロ波加熱(電子レンジ加熱)でもトランス脂肪酸が増加

・マーガリンやショートニング(精製した動物油脂、植物油脂などが主原料で、これに窒素ガスや炭酸ガスなどを吹き込みながら練り合わせてつくった無味無臭の食用油脂)、スナック菓子、菓子パン、業務用の揚げ油など

 

運動

・有酸素運動がHDL-Cを増加させる

・中等度(通常の速さのウォーキング相当)を一日合計30分以上、週3回以上が目標

筋肉量が低下している高齢者の方では、レジスタンス運動の併用も勧められてる

 

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