疑うべき症状、所見
・抗菌薬使用の経過で起こる下痢、腹痛、発熱が典型的である。このような場合は本症を考える。
・典型的症状(1日3回以上の水様便、腹痛、右下腹部の圧痛(回盲部および上行結腸が侵されやすい)、発熱、原因不明の白血球増多など)がある場合はワークアップを開始する。
・下痢や腹痛が前面に出ない場合も多いので注意が必要である。腹部膨満のみみられることや、原因不明の白血球上昇の原因となることもある。
・抗菌薬使用数日(5~10日)後に発症するが、早いと抗菌薬開始1日目から、遅いと10週後に発症する場合もある。
症状
・1日3回以上の水様便
・発熱
・腹痛
・原因不明のWBC増多
・偽膜性大腸炎の原因菌としてよく知られているが、クロストリジオイデス・ディフィシルによる下痢症や腸炎のすべての症例で消化管に偽膜形成が認められるわけではない。
・症状は軽度の下痢症状から腸閉塞や中毒性巨大結腸、さらに死に至るような重篤な腸管壊死まで幅が広いと認識する。
危険因子
・抗菌薬使用
抗菌薬治療中から使用後3か月にリスク(特に1か月以内)
・年齢(65歳以上)
・長期入院患者
・開腹術や内視鏡などの腸管操作を伴う治療、検査を受けた患者
・PPI投与
・経管栄養
・化学療法中の患者
血液検査
・白血球上昇
入院患者で原因がはっきりしない白血球上昇を認めた時は、CDIを鑑別に入れる
診断検査
・診断方法のゴールドスタンダードは便からのC.difficileの培養だが、感度が培養方法に左右され、しかも結果が出るまでに時間が掛かるため、下記の「2段階法」が推奨される
・消化器症状に加えて「酵素抗体法(トキシンAとトキシンBの同時検出キット)」で確定診断となる。
・酵素抗体法の感度が不十分(60~70%程度)なため、疑いが高い場合は治療を検討する。
① toxinA/B検査(EIA:酵素免疫測定法)
・感度63~94%、特異度75~100%と、感度が低目でかつ感度や特異度に幅があるため、毒素単独での検査は推奨されない
・感度が不十分(60~70%程度)なため、疑いが高い場合は治療を検討する。
② C.difficile共通抗原検査(glutamate dehydrogenase;GDH)
・即時スクリーニング検査法
・感度85~95%、特異度89~99%。
・陰性的中率が高い(検査結果が陰性と出た人のうち、真に疾患を有していない人の割合:真陰性)ため、即時スクリーニングとして有効(GDHが陰性なら除外可能)
・GDHが陽性であっても、これだけでは毒素産生株かの判断はできない
・抗原のみ陽性の場合にはトキシン産生株かは不明であり、確定診断とは至らない。しかし疑いが高い場合は治療を検討する。
GDH陽性、CDトキシン陰性の場合
・GDHが陽性であっても、これだけでは毒素産生株かの判断はできない
・GDH陽性のものから、さらに「EIAによるtoxinA/B検査」を加え、毒素産生株かの判断する「2段階法」が推奨されている
・「GDH陽性でも、CDトキシン陰性」であれば、CDIの判定は保留となる。
・「CDIガイドライン」では、PCRによるトキシン遺伝子評価が(NAAT検査(Nucleic acid amplification test:毒素遺伝子検査)で確定診断をしてもよいが、疑いが高い場合はNAAT検査を行わず治療開始してもよい。
治療
薬剤
軽症~中等症
・メトロニダゾール 1回500㎎ 1日3回経口 10日間(腎機能で調整)
重症
・バンコマイシン 1回125㎎ 1日4回 経口 10日間(腎機能によらず)
治療判定
・治療期間は10日とする。
・下痢の消失で治療成功と判断する
(CDトキシン検査の陰性化を指標とはしてはいけない)
・治療経過の確認や治療判定は臨床症状とし、GDHやトキシン検査を用いてはいけない
(治療後も陰性化しないことがあるため)
・水様便改善後、少なくとも48時間は接触予防策を継続することが推奨される
・転院、施設への入居基準にCDトキシン検査の陰性を求めてはいけない。
感染予防
・接触感染で伝播するため、手袋、ガウンを用いた接触予防策を行う
・芽胞を形成するため、アルコール消毒は無効であり、石鹸や流水での手洗いが重要
・水様便改善後、少なくとも48時間は接触予防策を継続することが推奨される
medicina 2022年 6月号 特集 抗菌薬の使い方-敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る
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