疾患
・ヘルパンギーナは、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎であり、乳幼児を中心に夏季に流行する。いわゆる「夏かぜ」の代表的疾患である。
・その大多数はエンテロウイルス属に属するウイルスに起因し、主にコクサッキーウイルスA群である場合が多いが、コクサッキーウイルスB群やエコーウイルスで発症する場合もある。
・感染経路は接触感染を含む糞口感染と飛沫感染である
疫学
・我が国では毎年5 月頃より増加し始め、7月頃にかけてピーク を形成し、8月頃から減少を始め、9~10月にかけてほとんど見られなくなる。
・国内での流行は例年西から東へと推移する。その流行規模はほぼ毎年同様の傾向がある。
・患者の年齢は5歳以下が全体の90%以上を占め、1歳代がもっとも多く、ついで2、3、4歳代の順で、0歳と5歳はほぼ同程度の症例が報告されている。
病原体
・ヘルパンギーナはコクサッキーウイルスA群(CA)が主な病因であり、2、3、4、5、6、10型などの血清型が分離される。またコクサッキーウイルスB群 、エコーウイルスなどが関係することもある。
・感染経路は接触感染を含む糞口感染と飛沫感染 である。急性期にもっともウイルスが排泄され感染力が強いが、エンテロウイルス感染としての性格上、回復後にも2 ~4週間の長期にわたり便からウイルスが検出されることがある。
臨床症状
・2~4 日の潜伏期を経過し、突然の発熱に続いて咽頭痛が出現し、咽頭粘膜の発赤が顕著となり、口腔内、主として軟口蓋から口蓋弓にかけての部位に直径1~2mm 、場合により大きいものでは5mmほどの紅暈(こううん、皮膚が部分的に充血して赤く見えること)で囲まれた小水疱が出現する。
・小水疱はやがて破れ、浅い潰瘍を形成し、疼痛を伴う。
参照(このサイトより引用):https://daini-hattoriiin.jp/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%91%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%83%BC%E3%83%8A
・発熱については2 ~4 日間程度で解熱し、それにやや遅れて粘膜疹も消失する。発熱時に熱性けいれんを伴うことや、口腔内の疼痛のため不機嫌、拒食、哺乳障害、それによる脱水症などを呈することがあるが、ほとんどは予後良好である。
・エンテロウイルス感染は多彩な病状を示す疾患であり、ヘルパンギーナの場合にもまれには無菌性髄膜炎、急性心筋炎などを合併することがある。前者の場合には発熱以外に頭痛、嘔吐などに注意すべきであるが、項部硬直は見られないことも多い。後者に関しては、心不全徴候の出現に十分注意することが必要である。
・鑑別診断として、単純ヘルペスウイルス1型による歯肉口内炎(口腔病変は歯齦・舌に顕著)、手足口病(ヘルパンギーナの場合よりも口腔内前方に水疱疹が見られ、手や足にも水疱疹がある)、アフタ性口内炎(発熱を伴わず、口腔内所見は舌および頬部粘膜に多い)などがあげられる。
病原診断
・確定診断には、患者の口腔内拭い液、特に水疱内容を含んだ材料、糞便、髄膜炎を合併した例では髄液などを検査材料としてウイルス分離を行うか、あるいはウイルス抗原を検出する。
・遺伝子診断(PCR‐シークエンス法等)も可能である。
・確定診断にはウイルスを分離することが原則であるが、乳のみマウス以外では分離率が低いためVP1領域の塩基配列決定による分子型別が用いられている。
・血清学的診断は、急性期と回復期のペア血清を用い、中和反応(NT)、補体結合反応(CF)などで4倍以上の抗体の有意な上昇を確認することで行われる。
・実際には臨床症状による診断で十分なことがほとんどである。
治療・予防
・特異的な治療法はなく通常は対症療法のみであり、発熱や頭痛などに対してはアセトアミノフェンなどを用いることもある。
・時には脱水に対する治療が必要なこともある。
・無菌性髄膜炎や心筋炎の合併例では入院治療が必要であるが、後者の場合には特に循環器専門医による治療が望まれる。
・特異的な予防法はないが、感染者との密接な接触を避けること、流行時にうがいや手指の消毒を励行することなどである。
感染症法における取り扱い(2014年7月23日現在)
・ヘルパンギーナは「5類感染症定点把握疾患」に定められており、指定届出機関(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)より毎週報告がなされている。
学校保健法における取り扱い(2014年7月23日現在)
・ヘルパンギーナは学校において予防すべき伝染病の中には明確に規定されてはなく、一律に 「学校長の判断によって出席停止の扱いをするもの」とはならない。したがって、欠席者が多くなり、授業などに支障をきたしそうな場合、流行の大きさ、あるいは合併症の発生などから保護者の間で不安が多い場合など、「学校長が学校医と相談をして第3 種学校伝染病としての扱いをすることがあり得る病気」と解釈される。
本症では、主症状から回復した後も、ウイルスは長期にわたって便から排泄されることがあるので、急性期のみの登校登園停止による学校・幼稚園・保育園などでの厳密な流行阻止効果は期待ができない。本症の大部分は軽症疾患であり、登校登園については手足口病と同様、流行阻止の目的というよりも患者本人の状態によって判断すべきであると考えられる。
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