リスクの見積り
リスクの見積り
・過去に実際に発生した負傷又は疾病の重篤度ではなく、「最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又は疾病の重篤度を見積もること」とされている。
・リスクの見積りは、必ずしも数値化する必要はなく、相対的な分類でも差し支えない。
リスクの見積り方法
・リスクの見積りの方法として、化学物質等への労働者の「ばく露濃度」を測定し、測定結果を当該化学物質についての日本産業衛生学会の「許容濃度」と比較する方法がある。
・発生可能性及び重篤度を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを加算又は乗算等してリスクを見積もる(数値化法)
リスク低減措置の検討及び実施
・「個人ばく露濃度」を「ばく露限界」と比較する手法によりリスクを見積もった結果、「個人ばく露濃度」が「ばく露限界」を相当程度下回る場合は、リスク低減措置を検討する必要はない。
化学物質の「ばく露限界」
「ばく露限界」とは?
・「ばく露限界」とは、作業する労働者の健康状態に与える影響の視点から、各種実験データ等を基に設定される数値で、代表的なものは以下の2つです。
① 日本産業衛生学会の「許容濃度」
【定義】
許容濃度とは,労働者が1日8時間,週間 40 時間程度,肉体的に激しくない労働強度で有害物質に曝露される場合に,当該有害物質の平均曝露濃度がこの数値以下であれば,ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度である.
曝露時間が短い,あるいは労働強度が弱い場合でも,許容濃度を越える曝露は避けるべきである.
なお,曝露濃度とは,呼吸保護具を装着していない状態で,労働者が作業中に吸入するであろう空気中の当該物質の濃度である.労働時間が,作業内容,作業場所,あるいは曝露の程度に従って,いくつかの部分に分割され,それぞれの部分における平均曝露濃度あるいはその推定値がわかっている場合には,それらに時間の重みをかけた平均値をもって,全体の平均曝露濃度あるいはその推定値とすることができる.
※ 日本産業衛生学会「許容濃度等の勧告(2023年度)(産衛誌 2023年 Vol.65)
最大許容濃度とは
最大許容濃度とは,作業中のどの時間をとっても曝露濃度がこの数値以下であれば,ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度である.
一部の物質の許容濃度を最大許容濃度として勧告する理由は,その物質の毒性が,短時間で発現する刺激,中枢神経抑制等の生体影響を主とするためである.
最大許容濃度を超える瞬間的な曝露があるかどうかを判断するための測定は,厳密には非常に困難である.実際には最大曝露濃度を含むと考えられる5分程度までの短時間の測定によって得られる最大の値を考えればよい.
※ 日本産業衛生学会「許容濃度等の勧告(2023年度)(産衛誌 2023年 Vol.65)
② 米国・ACGIH(the American Conference of Governmental Industrial Hygienists:米国産業衛生専門家会議)のTLV(Threshold Limit Value:許容限界値):
ACGIHの「TLVs(許容限界値)」、日本産業衛生学会の「許容濃度」の算出
経皮吸収のリスクの表示
・ACGIH(米国産業衛生専門家会議)は、皮膚への侵入のある物質をNotationsとして「Skin」と表示し、産業衛生学会は許容濃度等の勧告において経皮吸収の蘭に「皮」と表示している。
混合物に対するばく露限界値
・混合有機溶剤など,同じ標的臓器や器官に対する類似の毒性影響を持つ化学物質が複数存在する場合には,それらを合わせた影響を考慮する必要がある.
・この場合,次の式により,各化学物質の濃度とばく露限界値との比を加算した値(C)
を混合物の濃度とし,ばく露限界値を「1.0」としてこれを基準に結果の評価を行う
C=C1/T1+C2/T2+C3/T3…
Ci: 化学物質 iの濃度
Ti: 化学物質 iのばく露限界値
C: 混合物の濃度(無単位)
混合物に対するばく露限界値=1.0
この式でCが 1.0 を超えていなければ、許容濃度に相当する値を超えていないといえる。
負傷又は疾病の重篤度
・負傷又は疾病の重篤度は、傷害や疾病等の種類にかかわらず、共通の尺度を使うことが望ましいことから、基本的に、負傷又は疾病による休業日数等を尺度として使用する。
化学防護手袋の選択
・化学防護手袋の選択に当たっては、取扱説明書等に記載された試験化学物質に対する「耐透過性クラス」を参考として、作業で使用する化学物質の種類及び当該化学物質の使用時間に応じた耐透過性を有し、作業性の良いものを選ぶ。
・化学防護手袋の使用に当たっては、次の事項に留意する。
① 化学防護手袋を着用する前は、その都度、着用者に傷、孔あき、亀裂等の問題がないことを外観の目視チェックと内側に空気を送り込む等により確認させる。
② 取扱説明書等に掲載されている耐透過性クラス、その他の科学的根拠を参考として、使用可能時間をあらかじめ設定し、その設定時間を限度に使用させる。これは二重装着した場合も同じ時間を限度とする。
③ 化学防護手袋を脱ぐときは、付着している化学物質が、身体に付着しないよう、化学物質の付着面が内側になるように外し、法令等の基準に従って廃棄させること。
コメント