産科救急疾患(速やかに産婦人科救急コール)
・異所性妊娠
・妊娠高血圧症候群
・子癇
・HELLP症候群
・常位胎盤早期剥離
・前置胎盤
腹痛妊婦の産科的異常の簡易問診事項
※下記4つの問診事項のうち、一つでも該当すれば産科コンサルトが必要
① 胎動が普段とかわりがないか
② 破水感はないか
③ 子宮収縮はないか
④ 性器出血はないか
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)
・収縮期血圧140以上、または拡張期血圧90以上をいう
・子癇、HELLP症候群、常位胎盤早期剥離を合併するリスクが高くなる
・収縮期血圧160以上、または拡張期血圧110以上となった場合は「重症」と診断され、原則入院管理が必要
・基本は内服(メチルドパ(α2作動薬:アルドメット®)、ヒドララジン(アプレゾリン®)
・高血圧緊急症の場合(180/120以上)は持続静脈注射薬(ニカルジピン(ペルジピン®)、ヒドララジン(アプレゾリン®)
・頭痛などの神経学的症状がある場合は、子癇発作予防に硫酸マグネシウム製剤を投与
子癇
・妊娠20週以降にはじめて起こるけいれん発作(てんかんや二次けいれんではないもの)のこと
・初産婦や若い妊婦、妊娠高血圧症候群の人に多いといわれている
・その症状から、てんかんと混同されることがあるが、子癇とてんかんは別疾患である。
・子癇発症の明確なメカニズムは解明されていない。
・子癇の発生時期は、妊娠期:17%、分娩期:40%、産褥期:43%(このうちのほとんどが産後1週間以内)に生じるというデータあり(2013年)。
・子癇発作の44.4%で妊娠高血圧症候群が先行し、26%でHELLP症候群を合併する
・大半が分娩中・産後に子癇を起こしたことを考えると、妊娠高血圧症候群と診断された方は産後しばらくの間は注意が必要。
・子癇の前兆となる症状として、頭痛、視覚異常(チカチカして見える)、心窩部痛、悪心、嘔吐
などがある
・治療は子癇の治療や予防にはマグネシウム製剤点滴が使用される(ジアゼパムやフェニトインより優れる)
マグネシウム(マグネゾール® 2g/20mL)2A 15分でiv
HELLP症候群
・Hemolysis(溶血)、Elevated Liver enzymes(肝酵素上昇)、Low Platelets(血小板減少)を3主徴とする症候群
・HELLP 症候群は,全妊娠の0.2~0.9%に発症する
・微小血管症性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia:MAHA)による溶血で,内皮が損傷された微小血管を赤血球が通過することで破壊されることが原因である.
・発症時期は妊娠28~30週以降、分娩前が7割,3割が分娩後48時間に発症する
・溶血の診断は,末梢血液像では,有棘赤血球(Burr cell)や分裂赤血球(schizocyte)の出現,貧血の進行と LDH の上昇が認められる.
・溶血によって間接ビリルビンの上昇やハプトグロビンの低下を認め判断の補助となる
・発症は急激で,大半の症例は高血圧かタンパク尿が先行し,半数以上で全身浮腫を認める.
・症状は,心窩部痛・右季肋部痛などの上腹部痛を訴え,消化器疾患との鑑別が必要。時間帯は夜間の頻度が高い.
・その他、肩の痛み、頭痛、視野障害など
・診断基準:Sibai の基準
LDH>600IU/L、AST>70IU/L、血小板数<10万/μLを認めるときにHELLP症候群と診断される(Sibaiの基準)
常位胎盤早期剥離
・分娩前に胎盤が剥離する疾患
・喫煙や妊娠高血圧症候群がリスク因子である
・打撲や交通外傷などを契機に起こることもある
・典型的な症状は「異常な子宮収縮」「腹痛」「性器出血」である(性器出血はきたさない場合もある)
・母児ともに重篤となり得る疾患である
コメント