職場における受動喫煙防止のためのガイドライン
「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(令和元年7月1日 基発 0701 第1号)
健康増進法の改正
・改正された健康増進法が2020年4月1日に全面施行され、多くの人が利用する施設等は、原則として屋内禁煙となりました。
タバコの有害性
タバコに含まれる有害物質
・ニコチン、タール、一酸化炭素、窒素酸化物(NOx)、ベンゾピレン、ニトロソアミン、カドミウム、ホルムアルデヒド等
加熱式たばこの有害性
日本呼吸器学会:加熱式タバコや電子タバコに関する日本呼吸器学会の見解と提言(改定 2019-12-11)
・加熱式たばこは、専用の道具を使って、たばこの葉やその加工品を電気で加熱し、発生する煙(エアロゾル)を喫煙するもの。
・加熱式タバコの中身は、紙巻タバコと同じタバコの葉であり、加熱式タバコのエアロゾルには
ニコチンや発がん物質などの有害成分が含まれている。
・加熱式タバコや電子タバコが紙巻タバコよりも健康リスクが低いという証拠はなく、いかなる目的であってもその喫煙や使用は推奨されない。
・加熱式タバコの喫煙や電子タバコの使用の際には紙巻タバコと同様な二次曝露対策が必要である。
電子タバコ
・電子タバコは、グリセリンやプロピレングリコール、香料などが入った「リキッド」と呼ばれる液体を、「アトマイザー」という装置で加熱してベイパーを発生させます。基本的に、リキッドにはニコチンは含まれておらず、ニコチンを含むリキッドは日本国内での販売が禁止されています。
・電子タバコと加熱式タバコの大きな違いは、“タバコ葉の有無”です。タバコ葉を使っていないのが電子タバコ、タバコ葉を使っているのが加熱式タバコと区別されています。
・リキッドには様々な添加物や香料が加えられており、原材料は無害であっても加熱されることにより、発がん性のある有害物質が生じることが報告されています
・プロピレングリコールを加熱すると、国際がん研究機関(IARC)によって発がん性が指摘されている、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドが生成されます。
・ニコチンを含む・含まないにかかわらず健康への影響が懸念されることから、電子タバコの使用は推奨できません。
・加熱式タバコや電子タバコが紙巻タバコよりも健康リスクが低いという証拠はなく、いかなる目的であってもその喫煙や使用は推奨されない。
・加熱式タバコの喫煙や電子タバコの使用の際には紙巻タバコと同様な二次曝露対策が必要である。
喫煙率(令和5年)
現在習慣的に喫煙している者の割合は 15.7%であり、男性 25.6%、女性 6.9%である。
この 10 年間でみると、男女とも有意に減少している。
年齢階級別にみると、40~50 歳代男性ではその割合が高く、3割を超えている。
職場の喫煙所内の空気環境の基準
(1)浮遊粉じん濃度:測定点全体の算術平均が0.15 mg/㎥以下であること。
(2)揮発性有機化合物の除去率が 95%以上であること。
喫煙所と非喫煙所の境界に係る空気環境の基準
(1)喫煙室内に向かう気流:全ての測定点で0.2 m/s以上であること。
(2)喫煙ブースから排出された気体が室外(建物等の内部に限る。)に排気されるものであること。
受動喫煙防止に関する施設規制
第一種施設
・健康増進法では、「多数の者が利用する施設のうち、学校、病院、児童福祉施設その他の受動喫煙により健康を損なうおそれが高い者が主として利用する施設、並びに行政機関の庁舎」を第一種施設と定めています。
・第一種施設は「原則敷地内禁煙」です。
・屋外での喫煙は、法令で定める「特定屋外喫煙場所」を設置した場合のみ可能
第二種施設
・「第二種施設とは、多数の者が利用する施設のうち、第一種施設及び喫煙目的施設以外の施設をいうものであること。なお、「多数の者が利用する」とは、2人以上の者が同
時に、又は入れ替わり利用する施設を意味するものであること。
・飲食店や事業所の事務所、ホテル、旅館、旅客運送事業船舶・鉄道などが該当します。
・第二種施設では、原則として屋内での喫煙が禁止。
・喫煙専用室や加熱式たばこ専用喫煙室を設置することができます。
・二種施設における喫煙に関するルールは次のとおりです。
喫煙専用室を設置する場合は、法で定める技術的基準や標識の掲示、20歳未満の方の立入を禁止するなどの対応が必要になります。
喫煙場所の出入口や施設の主たる出入口の見やすい箇所に必要な事項を記載した標識を掲示する必要があります。
屋外に喫煙場所を設置するときは出入り口や通路の近くを避けるなど、受動喫煙が生じないよう配慮しなければなりません。
受動喫煙防止対策の組織的な進め方
職場における受動喫煙防止対策の実施に当たり、事業者は、事業場の実情に応じ、次のような取組を組織的に進めることが必要であること。
ア 推進計画の策定
事業者は、事業場の実情を把握した上で、受動喫煙防止対策を推進するための計画(中長期的なものを含む。以下「推進計画」という。)を策定すること。
この場合、安全衛生に係る計画、衛生教育の実施計画、健康保持増進を図るため必要な措置の実施計画等に、職場の受動喫煙防止対策に係る項目を盛り込む方法もあること。
推進計画には、例えば、受動喫煙防止対策に関し将来達成する目標と達成時期、当該目標達成のために講じる措置や活動等があること。
なお、推進計画の策定の際は、事業者が参画し、労働者の積極的な協力を得て、衛生委員会等で十分に検討すること。
イ 担当部署の指定
事業者は、企業全体又は事業場の規模等に応じ、受動喫煙防止対策の担当部署やその担当者を指定し、受動喫煙防止対策に係る相談対応等を実施させるとともに、各事業場における受動喫煙防止対策の状況について定期的に把握、分析、評価等を行い、問題がある職場について改善の
ための指導を行わせるなど、受動喫煙防止対策全般についての事務を所掌させること。
また、評価結果等については、経営幹部や衛生委員会等に適宜報告し、事業者及び事業場の実情に応じた適切な措置の決定に資するようにすること。
ウ 労働者の健康管理等
事業者は、事業場における受動喫煙防止対策の状況を衛生委員会等における調査審議事項とすること。また、産業医の職場巡視に当たり、受動喫煙防止対策の実施状況に留意すること。
エ 標識の設置・維持管理
事業者は、施設内に喫煙専用室、指定たばこ専用喫煙室など喫煙することができる場所を定めようとするときは、当該場所の出入口及び施設の主たる出入口の見やすい箇所に必要な事項を記載した標識を掲示しなければならないこと。
なお、ピクトグラムを用いた標識例については、「『健康増進法の一部を改正する法律』の施行について」(平成 31 年健発 0222 第1号)の別添3や「なくそう!望まない受動喫煙」ホームページを参照すること。
オ 意識の高揚及び情報の収集・提供
事業者は、労働者に対して、受動喫煙による健康への影響、受動喫煙の防止のために講じた措置の内容、健康増進法の趣旨等に関する教育や相談対応を行うことで、受動喫煙防止対策に対する意識の高揚を図ること。
さらに、各事業場における受動喫煙防止対策の担当部署等は、他の事業場の対策の事例、受動喫煙による健康への影響等に関する調査研究等の情報を収集し、これらの情報を衛生委員会等に適宜提供すること。
カ 労働者の募集及び求人の申込み時の受動喫煙防止対策の明示
事業者は、労働者の募集及び求人の申込みに当たっては、就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項を明示すること。
明示する内容としては、例えば以下のような事項が考えられること。
・施設の敷地内又は屋内を全面禁煙としていること。
・施設の敷地内又は屋内を原則禁煙とし、特定屋外喫煙場所や喫煙専用
室等を設けていること。
・施設の屋内で喫煙が可能であること。
受動喫煙防止対策の事業者支援
[財政支援] 受動喫煙防止対策助成金
職場での受動喫煙防止対策に取り組む中小企業事業主の皆さまへ
「受動喫煙防止対策助成金」のご案内[令和6年度版]
健康増進法が改正され、2020年4月から原則屋内禁煙が義務化されています。
職場での受動喫煙防止対策を行うにあたっては、既存特定飲食提供施設において費用の一部を
支援する「受動喫煙防止対策助成金」が適用になるため、ぜひご活用ください。
対象となる事業主
次の(1)~(4)すべてに該当する事業主が対象です。
(1) 健康増進法で定める既存特定飲食提供施設(※)を営む
※健康増進法に規定する第二種施設のうち、飲食店、喫茶店その他設備を設けて客に飲食をさせる営業が行われる施設で以下の3つの要件を満たすもの。
①2020 年4月 1 日時点で現に存する飲食店/②資本金 5,000 万円以下/③客席面積 100 ㎡以下
(2) 労働者災害補償保険の適用を受ける
(3)次のいずれかに該当する
(4) 事業場内において、措置を講じた区域以外を禁煙とする
助成の対象となる措置
健康増進法で定める既存特定飲食提供施設に限ります。
① 喫煙専用室の設置・改修(既存特定飲食提供施設)
・入口における風速が0.2 m/秒以上
・煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井などによって区画されていること
・煙を屋外または外部の場所に排気すること
喫煙外の使用×
② 指定たばこ専用喫煙室の設置・改修(既存特定飲食提供施設)
・入口における風速が0.2 m/秒以上
・煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井などによって区画されていること
・煙を屋外または外部の場所に排気すること
喫煙外の使用○
助成内容
助成対象経費 :上記①~②の措置にかかる工費、設備費、備品費、機械装置費など
助成率:主たる産業分類が飲食店の事業者は2/3、それ以外は1/2
上限額:100万円
申請先
所轄の都道府県労働局(労働基準部健康課または健康安全課)
受動喫煙防止対策に係る相談支援
(1)職場で受動喫煙防止対策を行うにあたって発生する悩みについて、専門家が相談に応じる(希望により、事業場に訪問可能)
(2)全国で職場の受動喫煙防止対策に関する説明会を開催する。
(3)企業の研修や団体の会合に専門家を派遣して、出前講座を行う。
3 受動喫煙防止対策に関する測定機器貸出
(1)職場環境の実態把握を行うため、デジタル粉じん計と風速計を無料で貸し出す。
(2)希望に応じ、事業場に訪問して機器の使用方法の説明を行う。
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