産業医の職場巡視は「義務」
産業医の職場巡視は、労働安全衛生規則第15条第1項によって義務付けられています。
第15条(産業医の定期巡視)産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
そのため、職場巡視を行わない場合には罰則の対象です。
罰則の内容は、50万円以下の罰金以外に、実際に労災が発生した場合は企業側に責任が問われます
労働基準監督署の査察などが必要になるため、職場巡視を怠らないように規則を守りましょう。
具体的な巡視計画
・広大な敷地の事業場の場合は、1年間の計画の中で最低1回、または2回というように基準を決めて、年間の職場巡視計画の中で、産業医がすべての事業場を把握できるように実施することが必要
産業医の職場巡視を2月に1回に緩和するための条件
産業医の職場巡視を2月に1回に緩和するための条件:
・産業医の職場巡視を2月に1回に緩和するための条件としては、「衛生管理者が行う巡視の結果」や「労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であって、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの」の情報の提供を、事業者から毎月1回以上受けている場合であって、事業者の同意を得ている時である。
「事業者が産業医に提供することとしたもの」の情報
1 衛生管理者が少なくとも毎週1回行う作業場等の巡視の結果
・ 巡視を行った衛生管理者の氏名、巡視の日時、巡視した場所
・ 巡視を行った衛生管理者が「設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるとき」と判断した場合における有害事項及び講じた措置の内容
・ その他労働衛生対策の推進にとって参考となる事項
2 上記1に掲げるもののほか、衛生委員会等の調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの
【例】
・ 労働安全衛生法第66条の9に規定する健康への配慮が必要な労働者の氏名及びその労働時間数
・ 新規に使用される予定の化学物質・設備名、これらに係る作業条件・業務内容
・ 労働者の休業状況
3 休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が 1か月当たり100時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報
職場巡視の目的
① 主たる目的
・労働者の健康リスクを低減させるため、事業場を把握して職場の作業を改善する
・作業環境を実際に見て、安全衛生上の問題点を見出し改善する
② 副次的な作用
・職場・企業の文化が理解できる
・産業医の顔と名前を売る絶好のチャンス
・復職等の職務適性判断をする際の材料収集の機会
職場巡視の流れ(PDCAサイクルを回そう)
① 職場巡視計画の策定
② 職場巡視前の準備
③ 巡視職場との日程や同行者の調整
④ 職場巡視の実施
⑤ 職場巡視後の打ち合わせ
⑥ 職場巡視報告書の作成
⑦ 要改善事項についての改善計画や改善報告の提出
⑧ 安全衛生委員会での報告・審議
⑨ 残存リスク等の管理計画の策定
⑩ 次年度の職場巡視計画へのフィードバック
※ 職場巡視を「実施するだけ」にしない
※ PDCAサイクルの中で改善まで繋げられると理想的
職場巡視に関する準備
・服装:各職場で定められている服装(作業服など)
・腕章
・ヘルメット
・手袋
・安全靴
・防塵マスク
・保護メガネ
・耳栓
・安全帯
・作業環境測定機器(照度計、騒音計、スモークテスター、懐中電灯、巻尺、バス検知器、酸素濃度計など)
職場巡視で心掛けたいこと
・労働者が立ち入る場所は原則、すべて巡視対象とする(特に製造現場)
・労働者と同様の適切な作業服、必要な保護具を使用して安全に巡視する
・知らない単語や略語は、できるだけその場で尋ねる
・必ず質問する
・労働者とコミュニケーションをとる
・作業の説明者や管理監督者の日常努力を誉める
・これまでの改善努力を誉める
・作業環境や設備面の確認とともに、実際の労働者の動きを可能な限り観察する
・労働者の違反行為は衛生管理者や管理監督者を通じてその場で指摘する
・記録を残す
職場巡視報告書(例)
職場巡視後の活動
・意見交換の場を持つ
今回の巡視対応へのお礼
良かった点、課題の情報共有
職場巡視の記録に記載する内容に関して、衛生管理者や管理監督者と調整する
・報告書作成(産業医)と対応届(事業所)
・安全衛生委員会での報告
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