長時間労働と関連する健康問題
長時間労働と関連する健康問題
・長時間労働と関連する健康問題には、「脳・心臓疾患(過労死)」と「精神障害・自殺」、「その他の過労性の健康障害」(胃十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎、腰痛、月経障害)や、「事故・ケガ」等があげられます。
・長時間労働は、労働の負荷を大きくするだけでなく、睡眠・休養時間、家族生活・余暇時間の不足を引き起こし、疲労を蓄積させます。
・一方、長時間労働の背景には、仕事の成果の高い要求(業務量が多い、質的に高度な仕事)があり、精神的負担、仕事密度の増加をもたらして、疲労の蓄積の原因になります。その疲労が健康に影響します。
・長時間労働による健康問題のうちで、最も致命的なものは「脳・心臓疾患」です。長時間労働等の過重な労働負荷は、脳・心臓疾患を発症させる場合があり、そのような経過をたどり発症した脳・心臓疾患は労働災害として取り扱われています。
・精神障害には適応障害、うつ病、急性ストレス反応等がある(問題集)
「過労死等」とは
・「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳・心臓疾患を原因とする死亡、業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳・心臓疾患、精神障害をいいます。
参照:「労働災害」とは
労働災害(労災)とは:
・労働災害とは、労働者が業務遂行中に業務に起因して負傷・疾病または死亡に至る事故のことを意味します。労働基準法の姉妹法である労働安全衛生法では、労働災害を「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡すること」と定義付けています(労働安全衛生法第2条第1項第1号)。
・ただし、業務上の疾病であっても、遅発性のもの(疾病の発生が、事故、災害などの突発的なものによるものでなく、緩慢に進行して発生した疾病をいう。例えば、じん肺、鉛中毒症、振動障害
などがある。)、食中毒及び伝染病は除きます。
・また、通勤途上の負傷・疾病または死亡(通勤災害)は該当しません。
脳・心臓疾患の労災認定
脳・心臓疾患の労災認定基準の改正の概要
厚生労働省は、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」として、本日9月14日付で厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知しました。
脳・心臓疾患の労災認定基準については、改正から約20年が経過する中で、働き方の多様化や職場環境の変化が生じていることから、最新の医学的知見を踏まえて、厚生労働省の「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」において検証などを行い、令和3年7月16日に報告書が取りまとめられました。
厚生労働省は、この報告書を踏まえて、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正したものであり、今後、この基準に基づいて、迅速・適正な労災補償を行っていきます。
脳・心臓疾患の労災認定基準改正のポイント
① 長期間の過重業務の評価にあたり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化しました
・「発症前1か月間に100時間または2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働」の基準には至らなくても、上記の時間に至らなかった場合も、これに近い時間外労働を行った場合には、「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮し、業務と発症との関係が強いと評価できることが明確にされました。
② 長長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直しました
・労働時間以外の負荷要因の見直しを行い、「休日のない連続勤続」、「勤務間インターバル(終業から始業までの時間)が短い勤務」、「心理的負荷を伴う業務」、「身体的負荷を伴う業務」などの項目が新たに追加されました。
労働時間以外の負荷要因の見直しを行い、赤字の項目を新たに追加しました。
③ 短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化しました
・業務と発症との関連性が強いと判断できる場合として、「発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合(短期間の過重業務)」、「業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合(異常な出来事)」などの例が示されました。
④ 対象疾病に「重篤な心不全」を新たに追加しました
※ なお、以下の点はこれまでの基準と変更がありません。
・「長期間の過重業務」、「短期間の過重業務」、「異常な出来事」により業務の過重性を評価すること
・「長期間の過重業務」について、発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること
労災補償の対象となる脳・心臓疾患
脳血管疾患
・脳内出血(脳出血)
・くも膜下出血
・脳梗塞
・高血圧性脳症
虚血性心疾患等
・心筋梗塞
・狭心症
・心停止(心臓性突然死を含む。)
・重篤な心不全
・大動脈解離
業務による明らかな過重負荷
以下のいずれかの「業務による明らかな過重負荷」を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、業務上の疾病として取り扱われます。
認定要件1 長期間の過重業務
発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと
労働時間
発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること
労働時間以外の負荷要因
勤務時間の不規則性
拘束時間の長い勤務
休日のない連続勤務
勤務間インターバルが短い勤務
不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務
事業場外における移動を伴う業務
出張の多い業務
その他事業場外における移動を伴う業務
心理的負荷を伴う業務
身体的負荷を伴う業務
作業環境
温度環境
騒音
認定要件2 短期間の過重業務
発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと
① 発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合
➁ 発症前おおむね1週間継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合 等
認定要件3「異常な出来事 」
発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと
異常な出来事
精神的負荷:極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす事態
考えられる例:
① 業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合
② 事故の発生に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処理に
携わった場合
③ 生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合
身体的負荷:急激で著しい身体的負荷を強いられる事態
考えられる例:
上記①、②のほか、
④ 著しい身体的負荷を伴う消火作業、人力での除雪作業、身体訓練、走行等を
行った場合
作業環境の変化 :急激で著しい作業環境の変化
考えられる例:
⑤ 著しく暑熱な作業環境下で水分補給が阻害される状態や著しく寒冷な作業環境下での作業、温度差のある場所への頻回な出入りを行った場合
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