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高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン

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高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン

高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン

「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」の策定について

 

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「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」の策定について

・近年、労働災害による休業4日以上の死傷者数のうち、60歳以上の労働者の占める割合が増加傾向にあり、また、労働者千人当たりの労働災害件数(千人率)をみると、男女ともに最小となる25~29歳と比べ、65~69歳では男性で2.0倍、女性で4.9倍と相対的に高くなっている。

・こうした中、令和元年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019」においては「サービス業で増加している高齢者の労働災害を防止するための取組を推進する」ことが盛り込まれた。

・このような状況を踏まえ、高年齢労働者の労働災害防止を目的として、「人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」(以下「有識者会議」という。)を開催し、就業状況、労働災害発生状況、健康・体力の状況に関する調査分析を実施するとともに、事業者及び労働者に求められる事項や国、関係団体等による支援について検討を行った。

令和2年1月17日に公表された有識者会議の報告書を踏まえ、今般新たに、別添のとおり「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(通称:エイジフレンドリーガイドライン)を策定し、事業者及び労働者に求められる事項等をとりまとめた。

 

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高年齢労働者に発生する休業4日以上の労働災害の特徴

・災害の 発生率(千人率)では、若年層と高年齢労働者で高くなる傾向がみられる。

・60 歳以上の男女別の労働災害発生率(死傷年千人率)を 30 代と比較すると、男性は約2倍、女性は約5倍となっている。

・千人率は女性では65~69 歳で最大となり、男性では75~79 歳で最大となっている

・事故の型別では、転倒災害、墜落・転落災害の発生率が若年者より高い傾向があり、特に女性でその傾向が顕著である。

・年齢別の休業見込期間では、それぞれの年齢層の災害発生件数を100 として、その休業見込期間を比較すると、年齢が高くなるほど休業見込期間が長くなる傾向がみられる。

・労働者千人当たりの熱中症の発生率を年齢別にみると、特に男性で年齢が上がるとともに発生率が高くなっている。

「フレイル」、「 ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」、「サルコペニア」との相違点

フレイル

・「フレイル」とは、日本老年医学会が2014年に提唱した概念で、虚弱(Frailty)に由来する。健康な状態と介護が必要となる状態の中間である。

・要介護に移行するリスクが高い一方、適切なケアによって健常な状態へと戻ることが可能だといわれている。

・運動機能の低下だけではなく、加齢に伴い心身が衰え疲れやすくなり、家に閉じこもりがちになるなど、年齢を重ねたことで生じやすい衰え全般を指す。

改訂日本版フレイル基準(J-CHS基準)

以下の5項目の内3項目以上が該当する場合をフレイルとし、1又は2項目が該当する場合をプレフレイル(フレイルの前段階)とする。
● 体重減少(6か月で、2㎏以上の(意図しない)体重減少)
● 筋力(握力)の低下(男性<28㎏、女性<18㎏)
● 主観的疲労感((ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする)
● 身体能力(歩行速度)の低下(通常歩行速度<1.0m/秒)
● 日常生活の身体活動量の減少(週に1度も①軽い運動・体操、②定期的な運動・スポーツをしていない。)

ロコモティブシンドローム

・ロコモティブシンドロームとは、2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、加齢による筋力の低下や、関節や脊椎などの病気の発症により、運動器の機能が低下した状態である。進行すると日常生活にも支障が生じてくる。

 

サルコペニア

・サルコペニア(sarcopenia)とは加齢性の筋肉量および筋力の低下であり、その語源はギリシャ語 sarx(flesh:肉)と penia(loss:失う)からなる。

・ヒトでは、30 歳を過ぎると 10 年毎に約 5%前後の割合で筋量が減少し、60 歳を超えるとその減少率は加速することが報告されている

・サルコペニアとは、加齢による筋肉量の減少および筋力の低下のことを指す。

 

加齢に伴う身体・精神機能の状況

1.視覚

・加齢に伴う主な視覚機能の変化として挙げられるのが遠視(老眼)、いわゆる近くのものが見えにくくなる状態(近方視困難)である。これは水晶体の硬化と水晶体を支える毛様体筋の収縮力低下によって生じる眼調整力の低下である。この状態は40歳台以降からはじまるとされる。

・また、加齢によって、動体視力の低下、色視力・コンストラクト視力・夜間視力なども低下する

・高齢になるにしたがって、白内障、緑内障、黄斑部変性、網膜血管硬化症などの眼疾患により、さらに視力低下が進むことも多い。

・外眼部では加齢性流涙症(鼻涙管閉塞など)、角結膜乾燥症(涙腺分泌低下、ドライアイなど)、眼瞼皮膚弛緩(皮膚や皮下脂肪のたるみ)、眼瞼内反・外反(瞼板のめくれ込み)などがみられ、視覚に影響する。

聴力

・聴覚機能における生理的老化として、40 歳代以降から高音域の聴力低下がはじまり、年齢が進むと低音域の聴力低下も進行するが、高音域の聴力低下が加速的に進行する

・。難聴有病率は 60 ~ 64 歳台までは徐々に増加し、65 歳以上で急速に増加する。国立長寿医療センターの調査による難病有病率は、60 ~ 70 歳台では男性 43.7 %、女性 27.7 %、 80 歳以上では男性 84.3 %、女性 73.3 %であることが報告されている。

 

筋力

・サルコペニア(sarcopenia)とは加齢性の筋肉量および筋力の低下であり、その語源はギリシャ語 sarx(flesh:肉)と penia(loss:失う)からなる。ヒトでは、30 歳を過ぎると 10 年毎に約 5%前後の割合で筋量が減少し、60 歳を超えるとその減少率は加速することが報告されている

知的能力の加齢に伴う変化

・『情報処理のスピード』は、50歳中頃までは少し向上するのですが、その後は急激な低下を示しました。

・しかしながら、『知識力』は、40歳から70歳を過ぎる頃まで、ぐんぐん向上していきます。その後、緩やかな低下を示していますが、90歳を目の前にしても、40歳よりも高得点なのです。

・訓練によって得た知識・技能の維持は「結晶性知能」と呼ばれるものに含まれる。結晶性知能は 60 歳を超えると緩やかに低下するが、その低下は 80 歳代の前半まで非常に緩やかである。

 

身体・精神機能の個人差

・個々人の生理機能や体力には個人差がある。加齢にも個人差がある。しかし、個々人のデータを追っていくと、変動はしつつも緩やかに低下していることは明らかである.

・握力,垂直跳びなど5項目の体力から主成分分析により体力老化指数(FAS)を定め、7年間での FAS の低下の傾きを計算すると、FAS の傾きは高齢者ほど大きく、女性よりも男性に大きいことが指摘されている。また、FAS の傾きの大きなグループほど死亡率が増大することが報告されている。

・実行機能と関連する神経心理学的検査の所要時間において、加齢による個人差拡大が特に顕著にみられた。

・身体・精神機能は 30 歳代程度から低下する傾向があるが、個人差が大きく、かつ高齢化するほど個人差は広まってゆく。後期高齢者でも、機能の種類によっては若年齢者と同じようなレベルにある者もいれば、若年齢者でも老化が見られる者もいる。

・身体機能が低下している個人では、精神機能も低下している傾向がある。

 

高齢者の転倒災害防止

エイジアクション 100~ 生涯現役社会の実現につながる高年齢労働者の安全と健康確保のための職場改善に向けて ~

高齢者の転倒災害防止のためのチェック事項

・通路の十分な幅を確保し、整理・整頓により通路、階段、出入口には物を放置せず、足元の電気配線やケーブルはまとめている。

・床面の水たまり、氷、油、粉類等は放置せず、その都度取り除いている。

・階段・通路の移動が安全にできるように十分な明るさ(照度)を確保している。

・階段には手すりを設けるほか、通路の段差を解消し、滑りやすい箇所にはすべり止めを設ける等の設備改善を行っている。

・通路の段差を解消できない箇所や滑りやすい箇所が残る場合は、表示等により注意喚起を行っている。

・ヒヤリ・ハット情報を活用して、転倒しやすい箇所の危険マップ等を作成して周知している。

 

職場環境の改善

(1)身体機能の低下を補う設備・装置の導入(主としてハード面の対策)

身体機能が低下した高年齢労働者であっても安全に働き続けることができるよう、事業場の施設、設備、装置等の改善を検討し、必要な対策を講じること。

その際、以下に掲げる対策の例を参考に、高年齢労働者の特性やリスクの程度を勘案し、事業場の実情に応じた優先順位をつけて施設、設備、装置等の改善に取り組むこと。

<共通的な事項>

・ 視力や明暗の差への対応力が低下することを前提に、通路を含めた作業場所の照度を確保するとともに、照度が極端に変化する場所や作業の解消を図ること。
・ 階段には手すりを設け、可能な限り通路の段差を解消すること。
・ 床や通路の滑りやすい箇所に防滑素材(床材や階段用シート)を採用する
こと。また、滑りやすい箇所で作業する労働者に防滑靴を利用させること。
併せて、滑りの原因となる水分・油分を放置せずに、こまめに清掃すること。
・ 墜落制止用器具、保護具等の着用を徹底すること。
・ やむをえず、段差や滑りやすい箇所等の危険箇所を解消することができな
い場合には、安全標識等の掲示により注意喚起を行うこと。

<危険を知らせるための視聴覚に関する対応>

・ 警報音等は、年齢によらず聞き取りやすい中低音域の音を採用する、音源の向きを適切に設定する、指向性スピーカーを用いる等の工夫をすること。
・ 作業場内で定常的に発生する騒音(背景騒音)の低減に努めること。

・ 有効視野を考慮した警告・注意機器(パトライト等)を採用すること。

 

<暑熱な環境への対応>

・ 涼しい休憩場所を整備すること。
・ 保熱しやすい服装は避け、通気性の良い服装を準備すること。
・ 熱中症の初期症状を把握できるウェアラブルデバイス等の IoT 機器を利用すること。

 

<重量物取扱いへの対応>

・ 補助機器等の導入により、人力取扱重量を抑制すること。

・ 不自然な作業姿勢を解消するために、作業台の高さや作業対象物の配置を
改善すること。

・ 身体機能を補助する機器(パワーアシストスーツ等)を導入すること。

 

<介護作業等への対応>

・ リフト、スライディングシート等の導入により、抱え上げ作業を抑制すること。

・ 労働者の腰部負担を軽減するための移乗支援機器等を活用すること。

 

<情報機器作業への対応>

・ パソコン等を用いた情報機器作業では、「情報機器作業における労働衛生管
理のためのガイドライン」(令和元年7月 12 日付け基発 0712 第3号厚生労働
省労働基準局長通知)に基づき、照明、画面における文字サイズの調整、必
要な眼鏡の使用等によって適切な視環境や作業方法を確保すること。

 

(2)高年齢労働者の特性を考慮した作業管理(主としてソフト面の対策)

敏捷性や持久性、筋力といった体力の低下等の高年齢労働者の特性を考慮し
て、作業内容等の見直しを検討し、実施すること。
その際、以下に掲げる対策の例を参考に、高年齢労働者の特性やリスクの程
度を勘案し、事業場の実情に応じた優先順位をつけて対策に取り組むこと。

<共通的な事項>
・ 事業場の状況に応じて、勤務形態や勤務時間を工夫することで高年齢労働
者が就労しやすくすること(短時間勤務、隔日勤務、交替制勤務等)。
・ 高年齢労働者の特性を踏まえ、ゆとりのある作業スピード、無理のない作
業姿勢等に配慮した作業マニュアルを策定し、又は改定すること。
・ 注意力や集中力を必要とする作業について作業時間を考慮すること。
・ 注意力や判断力の低下による災害を避けるため、複数の作業を同時進行さ
せる場合の負担や優先順位の判断を伴うような作業に係る負担を考慮するこ
と。
・ 腰部に過度の負担がかかる作業に係る作業方法については、重量物の小口
化、取扱回数の減少等の改善を図ること。
・ 身体的な負担の大きな作業では、定期的な休憩の導入や作業休止時間の運
用を図ること。
<暑熱作業への対応>
・ 一般に、年齢とともに暑い環境に対処しにくくなることを考慮し、脱水症
状を生じさせないよう意識的な水分補給を推奨すること。
・ 健康診断結果を踏まえた対応はもとより、管理者を通じて始業時の体調確
認を行い、体調不良時に速やかに申し出るよう日常的に指導すること。
・ 熱中症の初期対応が遅れ重篤化につながることがないよう、病院への搬送
や救急隊の要請を的確に行う体制を整備すること。

<情報機器作業への対応>

・ 情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないようにし、作業休止時間を適切に設けること。
・ データ入力作業等相当程度拘束性がある作業においては、個々の労働者の特性に配慮した無理のない業務量とすること。

 

高年齢労働者の労働災害防止対策に関して、事業者が活用できる国や公的機関による支援策

高年齢労働者の安全衛生対策に関する各種事業

・エイジフレンドリー補助金事業

 

高年齢労働者の労働災害防止対策を含む個別の相談などの支援策

・産業保健総合支援センター及び地域産業保健センター

・中小規模事業場安全衛生サポート事業

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