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浮腫(鑑別、検査、治療)

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機序による分類

「毛細血管の静水圧上昇」
「血漿膠質浸透圧低下」
「血管透過性亢進」
「その他(リンパ管閉塞、粘液水腫)」
の4つに大別される
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「全身性浮腫」と「局所性浮腫」に分類

・局所性(片側性)なら、まずはDVTの除外(下肢静脈エコー、Dダイマー)
・両側性(全身性)なら「心・腎・肝・甲・薬」の鑑別
※ 高齢者では複合的な要因による浮腫が多く、両側性でも静脈弁不全が最多
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「圧痕性浮腫(pitting edema)」と「非圧痕性浮腫(non-pitting edema)」に分類

① pitting edema(圧痕性浮腫)

・心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、深部静脈血栓症、薬剤性など

・圧痕性浮腫の場合、脛骨前面を3本指(示、中、環指)で10秒間、5㎜の深さで押した後の回復時間(pit recovery time:PRT)により、

「fast edema」(40秒以内に回復)

「 slow edema」(回復に40秒以上かかる)

に分ける。

 

① Fast edema:回復時間が40秒未満:

・一般に低アルブミン血症(2.5g/dL以下)によるもの

(肝硬変・低栄養・蛋白漏出・ネフローゼ症候群、悪性腫瘍、慢性炎症など)

・理由:間質のアルブミンが低いため、水分を保持できないため

・CRP上昇があれば、リウマチ性多発筋痛(→ステロイド)、感染性心内膜炎(結膜、口腔内、手足の点状出血、心雑音→血培)を考慮

・悪性腫瘍についてはCT検査

・多発性骨髄腫(血清アルブミン低下、蛋白アルブミン差)

 

 

② Slow edema:回復時間が40秒以上:

・心不全、腎不全、DVT、静脈不全

・理由:静水圧上昇のため

 

non-pitting edema(非圧痕性浮腫)

・甲状腺機能低下症による粘液水腫、リンパ浮腫、好酸球性血管性浮腫、脂肪浮腫など。

 

 

 

一般検査

・心不全(BNP、胸部X線)、肝不全、ネフローゼ、甲状腺機能検査を提出。

尿蛋白のチェックを忘れないこと(ネフローゼの鑑別)

・スポット尿蛋白(mg/dL) / Cr(mg/dL)値測定(24時間排泄量(g/日)と相関)

 

局所性と全身性による鑑別

① 局所性(片側性)浮腫

急性(3日以内)

1)急性限局性

DVT(腫脹が主体)、外傷、血管浮腫(1~2時間の経過)、血腫、感染(発赤、熱感が主体:蜂窩織炎など)、結晶性関節炎、Baker嚢胞破裂

2)急性両側性

薬剤、急性右心不全、腎不全、ネフローゼ症候群(急速進行性)

 

慢性

1)慢性限局性

静脈不全(柔らかい、圧痕性)、リンパ浮腫(硬い)

 

2)慢性両側性

・全身性:心不全、腎不全、肝不全、ネフローゼ、甲状腺

・非全身性:静脈不全、就下性浮腫、リンパ浮腫、薬剤性

各論

深部静脈血栓症

参照:肺血栓塞栓症

・多くは急性発症(<72時間)

・modified Wells criteria(検査前予測スコア)で評価し、Dダイマーと合わせて判断

 

蜂窩織炎

・多くは急性発症(<72時間)

・発赤、熱感、疼痛、発熱

・D-ダイマーは基本陰性

 

静脈還流不全、静脈弁不全(うっ滞性皮膚炎)

・片側下腿浮腫、多くは徐々に浮腫が出現(慢性限局性:≧72時間)

・静脈弁機能不全による血液逆流から静脈高血圧を来す疾患。

・まずはエコーでDVTと鑑別をする

・夜寝た後に改善する傾向

静脈瘤(立位で観察)、色素沈着、静脈うっ滞性皮膚炎、脂肪皮膚硬化症、皮膚潰瘍など

・皮膚の色素沈着、掻痒感を訴える

・治療は夜間の下肢挙上、昼間は弾性ストッキング

 

 

リンパ浮腫

・外科手術(乳がん、骨盤内手術)、悪性腫瘍の浸潤、放射線療法後、関節リウマチフィラリア症、猫ひっかき病、後腹膜線維症、外傷、熱傷など

・早期はpitting edemaだが、慢性になり炎症を繰り返し皮膚が肥厚し、組織間質内に蛋白が沈着し、線維化組織が増殖してnon-pittingとなる

・軟部組織感染症(蜂窩織炎)を繰り返しやすい

・皮膚が硬い、非圧痕性(第2趾の付け根の皮膚がつまめなくなる(Stemmer徴候))

 

 

② 全身性浮腫(心・腎・肝・甲・薬)

全身性浮腫の機序:

①循環血漿量増加(心不全、腎不全、薬剤(NSAIDs、甘草、Ca拮抗薬、βブロッカー、ステロイド))

②浸透圧異常(低アルブミン血症、間質膠質浸透圧増加(甲状腺機能低下症))

③血管透過性更新(炎症、好酸球増多、薬剤、VEGF)

 

心不全

・頚部静脈怒張

・静脈圧上昇による

・下腿浮腫は左側から(左腸骨静脈は大動脈の真下で下大静脈に流入するため)

 

肝不全、肝硬変

・腹水穿刺、SAAG測定(→参照

 

甲状腺機能低下症

・組織間にムコ多糖類が沈着し、水分と結合することで粘液水腫となる。

・non-pitting edema

・「全身がむくんだ感じ」

・hypothyroid face(顔面浮腫、眼瞼浮腫、無表情、眉毛外側1/3の脱毛、巨舌、薄い頭髪、皮膚乾燥)

 

 

薬剤性浮腫

・NSAIDs

甘草(内服数年後に初めて発症するケースもある)

・Ca拮抗薬

細動脈拡張、血流自動調節能変化

→減量、変更(非ジヒドロピリジン系:ジルチアゼム:ヘルベッサー®)

・ACE、ARB阻害薬

・チアゾリジン系(ピオグリタゾン:アクトス®)

βブロッカー

心拍出量低下に伴い、糸球体濾過率に比して腎血流量がより低下するため、filtration fractionが上昇する。さらにナトリウム再吸収増加に伴い、ナトリウム排泄低下により細胞外液量が増加する

・ステロイド

・エストロゲン

・ドパミンアゴニスト

・アマンタジン

・NSAIDs

プレガバリン

三環系抗うつ薬

 

蛋白漏出性胃腸症

「両下腿の浮腫+下痢」で疑う

・炎症性腸疾患による腸粘膜びらん、心不全によるリンパ管拡張による腸粘膜表面からの蛋白漏出が原因

・除外診断(低栄養、腎性漏出、肝疾患)

 

特発性浮腫

50歳未満の閉経前の女性に多い

基本的に除外診断

・朝夕の体重が1.4㎏以上の変動

・月経周期と無関係

・発症機序:女性ホルモンによる血管透過性亢進→循環血漿量低下→RAA系亢進→塩分貯留効果

・精神疾患の合併が86%、利尿薬乱用が41%

・夕方になると明らかになる下肢の浮腫や腹部膨満(日内変動が大きい

長時間立位、座位でいる仕事などでは、下腿に血液が貯留するため軽度の腎血流低下をきたし、抗利尿ホルモンやレニン、ノルエピネフリンなどの分泌が亢進し、体液貯留に働く。

・顔面、手の浮腫もあることがある

ループ利尿薬、下剤の乱用により、レニン-アルドステロン系が刺激されて体液貯留傾向になっていることが多い(利尿剤は循環血漿量が減少するため、さらに悪化してしまう)

・治療は「塩分制限」「炭水化物制限(90g/日程度):インスリンによる尿細管からのNa再吸収を減らすため」による食事療法

ループ尿薬を内服している場合は2~3週間かけて中止する

・利尿剤としてはスピロノラクトン(50~100㎎/日)の使用も有効とされる。

 

月経前症候群

・月経開始の5日以上前に起こる身体・精神症状(浮腫を含む)

・排卵後の黄体期に出現

・月経前の女性ホルモン低下、セロトニン動態などが原因とされる

・月経開始後4日以内に軽快

・過度の疲労感と腹部膨満感

・下腹部痛

・むくみ(65%)

・乳腺の張り

・頭痛

・精神症状(イライラ、落ち込み、食欲亢進、健忘、集中力低下など)

※ 社会生活に明らかに支障をきたしている場合に限る

 

脂肪浮腫

・女性の肥満患者に多い

・脂質代謝の異常に基づく脂質沈着による

・下肢の非圧痕性浮腫

・両側対称性の下腿浮腫だが、大腿から足関節に及ぶこともある

足背にはない

・圧痛を伴うことがある

 

RS3PE症候群(remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema)(→参照)

・高齢者、手足のpitting edema

・赤沈の亢進

 

就下性浮腫(dependent edema)

・静脈不全の一型。長期臥床など、長時間の寡動により生じる浮腫

・高齢者
・心臓より定位置にある部位にできる浮腫で、原因が特定されないもの
・下肢筋ポンプ減弱、長期間座位保持、静脈不全傾向、腎Na排泄能力低下、低栄養などが関与
・治療は塩分制限、弾性ストッキング、下肢挙上などの生活指導が中心

 

 

浮腫に対する非薬物療法

●塩分制限
・1日6g以下を目標参照:  https://www.jpnsh.jp/data/salt01.pdf

●下肢挙上(静脈不全)
・1日3~4回、1回あたり30分以上。
・夜間就寝時足の下にクッションを置く。
・日中長時間動かずに立っていたり座っていることをなるべく避ける。

●弾性ストッキング、運動の併用
・歩行、足関節を動かす運動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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