サイロキシン(T4)、トリヨードサイロニン(T3)
・甲状腺で産生されるホルモンには「サイロキシン(T4)」と「トリヨードサイロニン(T3)」の2種類がある。
・甲状腺で分泌される甲状腺ホルモンの93%はT4である。T4は肝臓や腎臓で4個のヨードのうち1個が外されることによりT3に変換される。
・血中の甲状腺ホルモンのほとんどはT4であり、T3は血液中の甲状腺ホルモンの2パーセントに過ぎない。
・血中ではT4、T3ともに99%以上(T3は約99.7%)がサイロキシン結合グロブリン(TBG)、アルブミンなどと結合して不活性型となっており、0.5%にも満たない遊離型がホルモン活性を発揮する。
・体内での必要に応じ、T3、T4が結合蛋白から離れてホルモン活性を持つ遊離T4(FT4)や遊離T3(FT3)になる。
・FT4とFT3を比較すると、FT3の方がFT4よりも遥かに生物学的活性が高く(FT3の生物学的活性はFT4の3〜5倍)、したがって実際にホルモンとして働いているのはFT3である。
甲状腺機能検査の実際
・真のホルモンレベルを示すのが遊離サイロキシン(FT4)であるため、スクリーニングではTSHとFT4の2項目を検査する。
・通常、FT4測定で十分だが、放射性ヨード甲状腺摂取率の測定ができない場合、FT3とFT4の比は無痛性甲状腺炎の除外診断の参考となるため、FT3を同時に測定する。
TRAb(TSH receptor antibody:TSHレセプター抗体):バセドウ病
・甲状腺細胞膜上にあるTSHレセプターあるいはその近縁部位と反応する自己抗体で、IgG抗体に属している。
・バセドウ病は自己免疫異常により、このTSH受容体に対する自己抗体であるTRAbが出現し、甲状腺ホルモンを過剰に分泌させて甲状腺機能が亢進する。このとき体内には過剰に甲状腺ホルモンが存在していますので、TSHは抑制されて低値を示す。
TSAb(thyroid stimulating antibody)
・活動性の指標として最もよく用いられるのは,TSH受容体抗体(TRAb)値である。TRAb値の測定法には,TSHがTSH受容体に結合するのを患者血清中の抗体がどれだけ阻害するかで求める方法と,甲状腺細胞に患者血清を添加し細胞がどれだけ活性化するかで測定する方法(thyroid stim-ulating antibody:TSAb)がある。通常,前者の結合阻害によって求めるものをTRAbとしている。
・理論的にはTSAbのほうが実際の刺激活性を求めていることになるが,bioassay(生物検定)のため感度,再現性などでTRAbに劣っている。ただ,現行のTRAb測定法は,刺激抗体だけでなく,活性を阻害する抗体,あるいは刺激も阻害もしないニュートラルな抗体も含めて測定するため,刺激抗体以外のこれらの抗体が多く存在する患者の場合は,TRAb値が必ずしもバセドウ病の活動性を反映しない結果となる。
TPO(thyroid peroxidase:甲状腺ペルオキシダーゼ)抗体→橋本病
甲状腺ホルモン合成に関わる酵素であるペルオキシダーゼに対する自己抗体。
甲状腺細胞傷害性が認められており、自己免疫性甲状腺疾患の病態に関与する。
抗サイログロブリン抗体(抗Tg抗体)→橋本病
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