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伝染性単核球症(伝染性単核球症様症候)

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概要

・伝染性単核症(infectious mononucleosis)は思春期から若年青年層に好発し、大部分がEpstein‐Barr ウイルス(EBV)の初感染によっておこる

・扁桃腫大と白苔、前頚部より後頚部のリンパ節腫脹が目立つ場合に想起する

全身倦怠感食欲不振が目立つ

 

 

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病原体

・ほとんどがEBV の初感染による。

・その他、サイトメガロウイルス(CMV)やHIVウイルス、トキソプラズマによっておこりうる。

 

① EBV

・30歳未満に多い

・主な感染経路はEBV を含む唾液を介した感染(一部、輸血による感染も報告されている)であり、乳幼児期に初感染をうけた場合は不顕性感染であることが多いが、思春期以降に感染した場合に伝染性単核球症 を発症することが多く、kissing disease とも呼ばれている。

・発症機序はEBV に対する細胞性免疫反応の過剰反応であると考えられており、細胞性免疫が発達した思春期以降の方が乳幼児期よりも発症頻度が高いのは、このことによる。

・EBV の既感染者の約15〜20%は唾液中にウイルスを排泄しており、感染源となりうる 。

・5歳未満の50%の小児が感染する。成人は90%以上がEBVに対して血清反応陽性を示す。

・EBVはヒトヘルペスウイルス科に属するウイルスで、ヘルペスウイルスの性質上、ひとたび宿主に感染すると一生その宿主に潜伏感染し、免疫抑制状態下で再活性化する性質を有する。

・EBV はまず咽頭上皮細胞に感染し、そこで増えたウイルスが、主にEBV の標的細胞であるBリンパ球(一部、Tリンパ球やnatural killer (NK)細胞)に感染する。

・その後ウイルスはendocytosis により細胞内に取り込まれるが、この状態ではウイルスは産生されず、潜伏感染状態に入る。

・後頚部リンパ節腫脹、全身リンパ節腫脹、軟口蓋点状出血、扁桃腫大、脾腫など

・扁桃に付着した白苔が「べたーっ」とした感じになる

(↔CMVでは咽頭炎症状は目立たない)

・抗VCA-IgM抗体(初感染で上昇)、抗VCA-IgG抗体(IgMに続いて上昇。終生持続)、抗EBNA抗体(最も遅れて上昇。終生持続)

 

② CMV

・成人ではサイトメガロウイルス(CMV)の方が頻度が多い

・EBVによる場合に比して、咽頭扁桃炎やリンパ節腫脹が目立たず、肝炎として発症することがある。

・頚部リンパ節腫大はmild

・抗CMV-IgM抗体を検出

 

③ HIV

・感染後2~4週間で生じる急性HIV感染症の症状として発症

・潰瘍を伴うような咽頭炎で初発することが多い

・最大2週間症状持続

・口腔粘膜、陰茎、肛門の疼痛を伴う潰瘍

・皮疹

 

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症状

・三徴:「発熱」「咽頭炎」「リンパ節腫脹」

・ほとんどの幼児において,EBVの初感染は無症状に経過する。伝染性単核球症の症状は,より年長の小児および成人で発生することが最も多い。

・ 4 〜6週間の長い潜伏期を経て「発熱」「咽頭扁桃炎」「リンパ節腫脹」「発疹」「末梢リンパ球増加」「異型リンパ球増加」「肝機能異常」「肝脾腫」などを示す。

・発熱は高頻度に認められる。通常、午後または夕方早くに39.5℃付近でピークとなるが,40.5℃まで達することもある。発熱は多くの場合38 ℃以上の高熱で1〜2週間持続する場合が多い。

眼瞼浮腫(リンパ流阻害による)

・扁桃には偽膜形成を認め、口蓋は発赤が著明で出血斑を認めることもあり、咽頭痛を伴う。

・リンパ節の腫脹は1〜2週頃をピークとして全身に認められるものの

・リンパ節腫脹は通常は対称的で、どのリンパ節群にも起こりうるが、特に「耳介後部」および「後頸部」リンパ節腫脹は特異性が高い。

・リンパ節腫脹が唯一の症候である場合がある。

・発疹は主に体幹、上肢に出現し、斑状、丘疹状の麻疹様あるいは風疹様紅斑であり、その形態は多彩である。

脾腫(特異度99%→確定診断)

・アンピシリン(ABPC、ビクシリン®)、アモキシシリン(AMPC、サワシリン®)を 内服すると薬疹を生じて、鮮明な浸出性紅斑様皮疹や丘疹などを呈す。

・疲労は数週間から数カ月間続くことがある。

・気道閉塞、脾破裂、および神経症候群などの重症合併症がときに起こる。

 

細菌性咽頭炎との鑑別

・細菌性の白苔はぽつぽつと付着、単核球症の場合はベターっとっ扁桃全体を覆う

・単核球症では「口蓋の点状出血」「眼瞼浮腫」「後頚部、耳介後部リンパ節腫脹」「脾腫」を認めることが多い

・細菌性では「前頚部」リンパ節腫脹が多い

・EBVでは、後頚部を含めた全身のリンパ節腫脹、肝脾腫、血液検査でリンパ球優位の白血球増多と肝障害を認める

 

検査所見

「リンパ球増加」は診断基準にも含まれており、特徴的な所見であるが、一部に白血球減少を認める場合もある。

・「異型リンパ球」は、Bリンパ球増殖に対しておこった CD4 陽性細胞や、NK 細胞から産生されたサイトカインにより、CD8 陽性cytotoxic T lymphocyte (CTL)が活性化したものであるといわれている。

「肝機能異常」はほとんどの症例で認められるが、AST/ALT の増加は第2週頃をピークとして300〜500IU/L 程度のことが多い。黄疸を伴うことはまれである。なかにはAST/ALT が数千IU/L と著明な肝機能異常を伴うことがあり、注意を要する。

「肝脾腫」では肝腫大の方が頻度が高い。肝臓は肋骨弓下1〜2 横指触知されることが多い。脾腫に関しては、時に巨大脾腫から脾破裂に至ることもあるため、注意を要する。

 

血清学的検査

提出項目

抗VCA-IgM抗体、抗VCA-IgG抗体、抗EBNA抗体

CMV-IgM抗体、CMV-IgG抗体

 

※ いすれもIgMが陽性であれば、確定診断となる

 

各抗体の意味

EBウイルス

抗VCA-IgM抗体:(VCA; viral capsid antigen)

初感染の急性期に出現し、比較的早期に低下、消失する一過性の抗体

・4~8週間で消失

抗VCA-IgG抗体:

・IgMに続いて、約3週で上昇。終生持続。

抗EBNA抗体:(Epstein-Barr Nuclear antigen)

・初感染の後、最も遅れて6~8週で陽性となる。終生持続

 

※既感染では抗VCA-IgM抗体(-)、抗VCA-IgG抗体(+)、抗EBNA抗体(+)

CMV

・CMV-IgM抗体

・CMV-IgG抗体

 

治療・予防

・特異的な治療法は現時点では存在しないことと、一般的にはself‐limiting な疾患であるため、対症療法で治療することがほとんどである。

・ほとんどは1~2か月で軽快

・肝機能の数値を病勢の指標とし、落ち着くまでは安静を要する

・IM の診断が得られる前に抗菌薬を使う例も見られるが、ABPC を内服すると薬疹を認めることがあるため、この薬剤の使用は避けるべきである。

・また、重症例や致死的IM が疑われる場合には、抗ウイルス剤を併用したウイルス特異的な治療法が必要になると考えられる。

 

 

 

 

 

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