低血糖時:70㎎/dL以下
※ 低血糖患者の約3%で片麻痺が出ることがあり、脳卒中と誤診しないこと!(麻痺がある場合もまずは血糖測定!)
意識清明で経口摂取ができる時:
・ブドウ糖粉末10g服用
・30分後、60分後再検(2回は検査必要)場合によっては15分後再検
意識レベル低下または経口摂取不能の場合:
・50%ブドウ糖(20mL/ブドウ糖10g/40Kcal/A)
20~40mL(ブドウ糖10~20g)静注
・ライン確保が困難な場合、グルカゴン1A(1㎎/1ml)筋注
※2回目の再検でも低血糖の場合は、安全な状態ではないと認識する(敗血症や副腎不全、持効型インスリン過投与など)
高血糖による緊急症
※基本的にはICU管理
・糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis;DKA)
・高浸透圧高血糖症候群(hyperosmolar hyperglycemic syndrome:HHS)
参照(このサイトよ引用):DKAとHHSの比較・特徴
糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis; DKA)
・インスリンの極度欠乏、または作用不足により、脂肪酸がエネルギー源として使われ血糖が高値のままとなって発症する(遊離脂肪酸の多くは肝臓に運ばれ分解され、それによりケトン体が産生される)
・原因:感染症、インスリン中断、急性膵炎、心筋梗塞、外傷、脳血管障害、妊娠、アルコール多飲、ステロイド投与など
・糖尿病の既往がなくても除外できない(急性発症1型糖尿病、ペットボトル症候群など)
・アシドーシスによる消化管蠕動運動低下による嘔気嘔吐、腹痛といった消化器症状で発症することもあるため、しばしば「急性胃腸炎」と誤診断される(↔HHSでは腹痛はない)
・意識障害や片麻痺、痙攣を生じて脳卒中と誤診断されることがる
・早くて非常に深い呼吸(クスマウル(Kussmaul)
呼吸)を認める
・呼気臭はアセトン臭(リンゴ臭)
・頻脈、血圧低下、皮膚緊張低下
検査所見
・血ガスは静脈血でOK
(pH、HCO3-は動脈血と同等に考えてよい。ただしPO2、PCO2、乳酸値、は静脈血で代替できない)
・検査所見:
高血糖:300~600㎎/dL
AG増加性代謝性アシドーシス:HCO3-<18
体内ケトン体増加
尿ケトン体陽性
高浸透圧高血糖症候群(hyperosmolar hyperglycemic syndrome; HHS)
・2型糖尿病が背景にある患者に感染症などを契機に発症する病態
・致死率12-46%と非常に重篤な状態と認識すること
・意識障害を認めることが多い
・発症の誘因
薬剤(利尿薬、ステロイド薬、フェニトイン、β遮断薬、シメチジン)
感染
高カロリー輸液
経管栄養など
・片麻痺、痙攣やミオクローヌス、髄膜刺激症状、精神症状などを呈し、脳卒中との鑑別が問題になる。
・インスリン欠乏は相対的な欠乏に留まるため、脂肪分解は抑制される
そのため、脳卒中が疑われる患者であっても、HHSも鑑別に入れて必ず血糖値と血漿浸透圧をチェックする必要がある。
HHSにおける特徴的な血液検査所見
・著明な高血糖(600mg/dL以上)
・高浸透圧(350mOsm/L以上)
・高Na血症(>1509
・pH7.2以上、HCO3- 18mEq/L以下
典型例ではこれらを全て満たすが、厳密な判断基準ではない。
著明な高血糖でアシドーシスがない場合にはHHSと診断する。
DKA/HHSの治療
※ 基本的にはICU管理
※ いずれも「脱水補正」「高血糖補正」「電解質補正(カリウム)」の3つが重要
(1)脱水補正
診断が付いた時点で直ちに生理食塩水の点滴を開始する
1000mL/時で1時間(高齢者では500mL/時で1時間)
↓
500mL/時×で2時間(高齢者では250mL/時で2時間)
↓
250mL/時で4時間:(高齢者では125mL/時で2時間)
ここまで6時間で3000mL(高齢者では1500mL)
↓
以降は、200mL/時で維持する
※ 高齢者と小児の場合は急速な輸液により心不全を生じかねないため、
点滴速度は半分にする
・Na≧150の場合は0.45%生食を考慮(生食250mL+注射用蒸留水250mL、または注射用蒸留水500mL+10%ナトリウム20mL)
↓
・血糖値が250(DKA)~300(HHS)mg/dLまで低下したら、
ブドウ糖を含む細胞外液に変更
例)ソリタT1 80~250mL/時
↓
・循環動態が落ち着いたらブドウ糖を含む維持輸液に変更
例)ソリタT3 80~200ml/時(2.5~6時間ペース、脱水の状態に応じて適宜調整)
・血漿浸透圧が正常化して意識状態が改善するまでは血糖値は250~300mg/dLに維持し、その後は150~200mg/dLを目標とします。
(2)インスリンの持続静注
・速効型インスリン 0.1単位/kg/時(3~6単位/時)の少量から、シリンジポンプで持続静注
・血糖値が50~70mg/dL/時で低下するよう調整
(急速に血糖値を改善させると、急激な浸透圧の変化によって脳浮腫を起こす危険があるため)
例)ヒューマリンR 50単位(0.5mL)+生食49.5mL(=1単位/mL)
50Kg の人:5mL/時で開始 (5単位/時、120単位/日のペースで開始)
※ 血糖値は50~70㎎/時のペースで低下させる
※ 十分低下しない場合はインスリン量を1.5~2倍に増やして経過を観察する。
※ 逆に100mg/dL/時以上の低下は脳浮腫の危険性があるため、インスリンを半量に減量する。
※ また血糖値が250(DKA)~300(HHS)mg/dLまで低下した場合も同様に、
インスリン量は半分に減量する。
※ 血漿浸透圧が正常化して意識状態が改善するまでは血糖値は250~300mg/dLに維持し、その後は150~200mg/dLを目標とする。
(3)電解質補正(カリウム)
・カリウム濃度も1~2時間ごとに測定する
・DKAではアシドーシスのため軽度~中等度の高カリウム血症を呈することがある
(アシドーシスがある時、細胞外液に増えたH+が細胞内に流入するため、細胞内からカリウムが流出し、高カリウムとなる)
・治療開始時に低K血症(K<3.3mEq/L)がある場合は、インスリン治療やアシドーシスの補正により血清Kがさらに低下するため、K補充を優先させる(K≧3.3mEq/Lとなるまで)
1)K<3.3:
・インスリンの投与は中止し、20~30mEq/L/時でKを補充(K≧3.3mEq/Lとなるまで)
・生食500mL+KCL(10mEq/10mL/A)20~30mEqを1時間ペース
2)3.3≦K≦5.0:
・補液のK濃度を20~30mEq/LでKを補充しK4.0~5.0mEq/Lを保つ
血糖値≧300の時:生食500mL+KCL(10mEq/10mL/A)20mEq
血糖値<300の時:ソリタT3(K20mEq/L) 250mL/時ペース
3)K>5.0:
・補充の必要なし、2時間毎にK値チェック
(4)状態安定後
・ソリタT3点滴に変更、インスリン減量考慮
・1日目は持続インスリン治療継続
↓
・意識回復、経口摂取可能ならをインスリン持続静注から皮下固定打ちへ切り替え
・インスリン持続注射と持効型インスリン皮下注射開始をかぶせる
・持効型インスリン開始後2~3時間後にインスリン持続注射を中止する
(つまり両者のかぶるのりしろ期間を設ける(”ブリッジング”とも表現する))。
・これはインスリン持続注射で使用しているインスリンは半減期が短いため(半減期は分単位)、中止するとすぐにインスリン枯渇になってしまい再度細胞内飢餓によるケトアシドーシスになってしまう可能性があるためである。
・1~2時間は持続静注と持効型皮下注をブリッジングする
※皮下注射インスリン投与量の決定
①1日必要量を持続インスリンから推定
②1日必要量の80%を皮下注射インスリン総量へ
③皮下注射インスリン総量を分配 (以下a, bいずれの方法あり)
(a): 均等に4等分する方法 :速攻型朝4-昼4-夕4/持効型眠前4単位
(b): 半分持効型、半分速効型にする方法 :速攻型朝3-昼3-夕3/持効型眠前10単位
参考;療養型病棟における高血糖緊急症の簡易的治療
①T方式
・メイン
① 生食500mL
② ソルデム1号 500mL
・インスリン
ヒューマリンR 20単位+生食50mL(0.4単位/mL)
・BS4検、スケール対応
~50:Dr.call
50~200:そのまま
200~500:インスリン1.5ml/時(6単位/時)
500~:インスリン2.0mL/時(8単位/時)
② S方式
メイン
①ソルデム1号500mL+ヒューマリンR6単位
②ソルデム1号500mL+ヒューマリンR6単位
インスリン
血糖値2検(朝夕)でスケール対応併用
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